Broadband Watch logo
バックナンバー
第七十景:大家さんを口説くならNTTにおまかせ!?
[2003/12/26]
第六十九景:ダイヤルアップ→ISDN→ADSL→Bフレッツへの移行
[2003/12/18]
第六十八景:「自宅だったら1Mbpsで十分じゃん!」
[2003/12/11]
第六十七景:セキュリティシステム対応マンションの落とし穴
[2003/12/05]
第六十六景:瀬戸内海ブロードバンド物語
[2003/11/20]
第六十五景:ブロードバンドのインフラに期待するもの
[2003/10/30]
第六十四景:「ホームノマド」のための宅内快適ネットワーク構築
[2003/10/24]
第六十三景:引っ越し先はブロードバンドの敵だらけ!?
[2003/10/16]
第六十二景:IT砂漠地帯に残されたVDSLというライフライン
[2003/10/09]
第六十一景後編:新しいモノ好きの通信環境(木地本昌弥)
[2003/10/02]
第六十一景前編:新しいモノ好きの通信環境(木地本昌弥)
[2003/09/25]
第六十景:プロバン素人は開拓者の後を悠然と歩く(藤野竜介)
[2003/09/19]
第五十九景:電話をかけるとつながる回線の謎(寄添温守)
[2003/09/11]
第五十八景後編:やっと導入したFTTHは超庶民的配線(すずまり)
[2003/09/05]
第五十八景前編:やっと導入したFTTHは超庶民的配線(すずまり)
[2003/09/04]
第五十七景:空を見上げて待ち続けた光ファイバ接続(あひる)
[2003/08/28]
第五十六景:すべてはチャットから始まったインターネットライフ(山田正宏)
[2003/08/21]
第五十五景(3):マンションに3つのブロードバンド導入! さらば速度重視(かつみぱぱ)
[2003/08/12]
第五十五景(2):マンションに3つのブロードバンド導入! さらば速度重視(かつみぱぱ)
[2003/08/07]
第五十五景(1):マンションに3つのブロードバンド導入! さらば速度重視(かつみぱぱ)
[2003/07/31]
第五十四景:自宅Webサーバーには寂しい新潟ADSL事情(宮沢@新潟県新津市車場)
[2003/07/24]
第五十三景:光ファイバで重い画像も快適送信! ……までが長かった(河田一規)
[2003/07/17]
第五十ニ景:タイミングと営業力が運命を分けました(北原静香)
[2003/07/10]
第五十一景:ADSLよ! 早くおウチにも来ておくれ!(タケ)
[2003/07/03]
第五十景:常時接続はリモートコントロールのために!?(tan)
[2003/06/27]
第四十九景:自宅にWebサーバー【パート2】(芝藤和久)
[2003/06/19]
第四十八景:8Mサービス拒否!? 茨城のADSL奮戦記(ぷっぷくぷ~太郎)
[2003/06/12]
第四十七景:2カ月で手放したFTTH生活(ブロバン太郎)
[2003/06/05]
第四十六景:引っ越しとブロードバンド化の同時進行で四苦八苦(アルチザン 矢部雅一)
[2003/05/30]
第四十五景:OCNエコノミーから無料サービスジプシーへ変貌(江須田)
[2003/05/22]
第四十四景:Yahoo! BBで、快適! ブロードバンド・パラダイス(北口 宏)
[2003/05/15]
第四十三景:ノロノロ56kbpsからの脱出! メカ音痴な音楽家のADSL事情(仁乃 唯)
[2003/05/08]
第四十ニ景:『FUSION IP-Phone for BIGLOBE』でIP電話を体験(法林岳之)
[2003/05/01]
第四十一景:手間はかけても金はかけない。こだわりのブロードバンドライフ(赤坂 豊)
[2003/04/24]
第四十景:FTTHでアップロードも快速! でもイマイチな点も(西尾 淳)
[2003/04/17]
第三十九景:大阪なにわのブロードバンド事情(山口真弘)
[2003/04/10]
第三十八景:どこでも常時接続 ~ 空気のようなインターネット「Air H"」(時の渡り竜)
[2003/04/03]
第三十七景:ボイスチャットでネットゲーム開眼! Xbox Liveとブロードバンド(森田秀一)
[2003/03/26]
第三十六景:Yahoo! BB難民、漂流先はCATV(目黒廣道)
[2003/03/13]
第三十五景:無線LANあってこそのブロードバンド(カンターノ)
[2003/03/06]
第三十四景:高速回線への欲望は、ネットゲームから!(ぷち)
[2003/02/27]
第三十三景:速すぎて宝の持ち腐れ!? 有線ブロードネットワークス導入記(大坪知樹)
[2003/02/20]
第三十ニ景:家族の白い目に堪える時代から一家で常時接続へ(斉藤成樹)
[2003/02/13]
第三十一景:400K倶楽部から光ファイバへの苦難の道のり(平 雅彦)
[2003/02/06]
第三十景:自宅にWebサーバー!! そこには想像以上の利用価値があった!!(芝藤和久)
[2003/01/30]
第二十九景:なんちゃってADSLとAir H"のナローなブロードバンド!?(森永 みぐ)
[2003/01/23]
第二十八景:「My電柱」のお陰でラクラクFTTH開通(カネコ・トオル)
[2003/01/16]
第二十七景:帯域改善はダンナ改善から! 光共有マンションの落とし穴(みっち~★)
[2003/01/09]
第二十六景:ノイズ対策よりネズミ対策! ボロアパートのADSL(川村賢也)
[2002/12/19]
第二十五景:@niftyから離れられない理由と、会社のIPR光100M導入(大庭美広)
[2002/12/12]
第二十四景:一戸建てを契機にBフレッツへ。半年にわたる戦いの日々(藤田洋史)
[2002/11/28]
第二十三景:名古屋の快適ADSL事情(奥川浩彦)
[2002/11/21]
第二十ニ景:光の国へのワインディングロード(工藤ひろえ)
[2002/11/14]
第二十一景:引っ越しを機にCATVからADSLへ乗り換え(伊達浩二)
[2002/11/07]
第二十景:ハツモノ狙いは高リスク?(礒村浩一)
[2002/10/24]
第十九景:
インターネットマンションでVDSL!(杉山淳一)
[2002/10/03]
第十八景:
USENの固定IPとFreeBSDでアプリケーションゲートウェイ設置(関野史朗)
[2002/09/26]
第十七景:
華のOLブロードバンドライフ(サッキー)
[2002/09/19]
第十六景:
常時接続十五周年漂流記(法林浩之)
[2002/09/12]
第十五景:
縛り期間のあるサービスにご注意!(西尾 淳)
[2002/09/05]
第十四景:
地方農村のブロードバンド事情(福住 護)
[2002/08/29]
第十三景:
再開発予定地の落とし穴と8M化で発覚したINS干渉(川上卓也)
[2002/08/22]
第十二景:
恵まれた地域で最先端サービスを実体験(一ヶ谷兼乃)
[2002/08/08]
第十一景:
ADSL 8Mが10kbps!? ノイズ地獄の克服(こまんち)
[2002/08/01]
第十景:
加入電話ライトサービスの実施でADSL導入を決意(多和田新也)
[2002/07/25]
第九景:
ナローな専用線からの脱出目指し奮闘中(矢部雅一)
[2002/07/18]
第八景:
CATV、めっちゃいいっす(大柴 滋)
[2002/07/11]
第七景:
スピードネットで超速ブロードバンド(熊谷直樹)
[2002/07/04]
第六景:
光収容を乗り越えて Part2(法林岳之)
[2002/06/27]
第五景:
遅れてきた田舎の常時接続(中村繁利)
[2002/06/20]
第四景:
家族でブロードバンドは難しい!(荒田淳子)
[2002/06/12]
第三景:
マンションアダプタにご用心(すずまり)
[2002/06/05]
第ニ景:
回線トラブルとの格闘(清水理史)
[2002/05/30]
第一景:
光収容を乗り越えて(法林岳之)
[2002/05/24]

第六十六景:瀬戸内海ブロードバンド物語
田中達也

ここは風光明媚な香川県詫間町

「日本の夕日百選」に選ばれたほど風光明媚(=ド田舎)な詫間町。瀬戸内海に沈む美しい夕日をご覧あれ(撮影:佐藤大介氏)

 四国・香川県の西部に位置する瀬戸内海にちょこんと飛び出た半島部分、そこが小生の住むまち「詫間町」である。「日本の夕日百選」に選ばれたほどの風光明媚な地なのだが、裏を返せば超ド田舎ということだ。

 その割には、地元の商工会が主体となり「うらしまネット」という非営利プロバイダを立ち上げ、当時2,000~3,000円かかっていた月額料金を1,000円という格安料金で提供し、話題を呼んだこともある。小生も運営委員として企画段階から参加させていただき、地域情報化の基盤作りに力を注いだ。

 小生が自宅でインターネットを始めたのは平成8年4月。いきなり話題のISDN回線で始めるべく自宅回線を切り替えようとしたが、同番移行が不可能とのこと。我が家は自営業で電話番号が変わるのは困るため、施設設置負担金7万円を支払って新規契約した(当時ライトプランはなかった)。

 しかし当時、アクセスポイントが自宅から50km離れた高松市にしかななく、接続するたびに料金が気になり、回線をつなぐ→ホームページを表示→回線切る→読む→回線つなぐ→次のページを表示→回線切る→読む、この繰り返しだったことを思い出す。

 そのうちに筆者はパソコンサポート業を始めた。人を雇った関係上、複数台のPCをインターネットに接続することを余儀なくされ、ダイヤルアップルータを使い始めた。すでにその時にはアクセスポイントがエリア内にできていたため、利用時間の歯止めが利かなくなった。仕事時間中にガンガン使うものだからテレホーダイの効果もほとんどなく、電話料金は月額2、3万が当たり前の状態になってしまっていた。



「町」と「村」の差って?

 2001年春、世間では「フレッツ・ISDN」なる定額料金サービスが話題を呼び、当然小生もエリア内でのサービス開始を待ちわびていたクチだ。平均2万5千円はかかっていた通信料が、わずか3,000円程度になるのだから当然である。2001年8月、ついに詫間町にもフレッツ・ISDNサービス開始とのうわさが流れ、小生を含めヘビーユーザー共が小躍りして喜んだのだ。

 我が詫間町は詫間地区と荘内(しょうない)地区に分けられており、小生は詫間地区に住んでいる。簡単にいうと詫間は“町”で荘内は“村”といったバランスで、それぞれにNTTの収容局がある。しかし、なんと!よくよく調べてみると、サービス開始は荘内地区だけだという。なぜより田舎のほうが先にサービス開始になるんだ!と、田舎にこそ高速なネットワークインフラが必要なのだという持論も棚に上げ、NTTに当り散らした。

 散々文句を言い続けた成果か、2002年2月、今度は詫間地区にフレッツ「ADSL1.5M」が開通する運びとなった。実はこれほど早くADSLサービスが始まるとは思っていなかったため大喜びしていた。しかし実際には大変苦労することになった。とはいっても、他の方々が書かれているような“つながらない”という類のことではなかった。



モデムが手に入らない!

NTT-MEのMN7310(モデム内蔵ルータ)

 NTTマーケティングアクトの代理店をしている小生は、ここぞとばかりに契約を取りまくった。だがこの時期、全国的規模で急速にADSLが普及している時期でもあり、モデムの供給がまったく追いついておらず、工事ができないという事態が起こった。レンタル品は納期未定、購入品は早くとも2ヶ月待ちといった状態だった。そこでNTT西日本以外の製品を探しまくり、何とかまとまった数を確保できたのがNTT-MEのMN7310(モデム内蔵ルータ)である。NTTの純正モデムよりは高くつくが、セキュリティーが堅く接続がスムーズであることをお客様に必死で説明し、納得していただいた。

 実を言うと、これがきっかけで小生自身もMN7310が気に入り、以後MNシリーズばかりを勧めていたのだが、これが後に大変良い結果につながった。ルータタイプのものはアドレス変換・ポートフィルタ等の機能が付いているため、小生のお客様のほとんどがBlasterウイルスの被害に遭わずに済んだのである。一部のどうしてもレンタルがいい、ルータは高いから嫌だと言い、なおかつウイルス対策ソフトを導入していないお客様だけは被害に遭われてしまったようだ。読者の皆様にも気をつけていただきたい。

MN7310のビットマップ



「詫間ブロードバンド研究会」を発足

「詫間ブロードバンド研究会」メンバー

 もうひとつ大きな問題があった。これも急速に普及しすぎた結果起こった弊害であるが、NTTの受付があまりにも無知だった。ほとんどすべてのお客様に対して「お客様のところではつながらないかもしれませんよ」とアナウンスしていたのである。実際小生に対しても同じアナウンスがあったが、開示情報(1,350m、36dB)での結果は上り512kbps、下り1,536kbpsのフルリンクである。

 頭に来た小生は、NTTの姿勢に対抗するため、知人に声をかけ「詫間ブロードバンド研究会」を発足した。サイト上に「地域別スループット調査」というページを構築し、メンバーやその周囲からリンク速度等のデータ提供を受け、またお客様宅に設定に伺った際に許可をいただいてデータを取るなどして、データを集めて掲載した。そして地図上に印をつけ、地点ごとのリンク速度・開示情報(線路距離長・伝送損失)・実測値を掲載し続け、かなり詳しい資料が出来上がった。

 以後、NTTが「つながらないかもしれませんよ」と言うたびこのデータを突きつけた。その結果、アクセスログには定期的にNTT高松のドメインが記録されるようになったのである。

 しばらくしてから8Mプランにも対応し、順調に進んでいるかと思いきや、今度はいつまでたっても12Mプランに対応しない。同じ郡内で1.5M、8Mの開始が詫間町よりも遅かった高瀬町でサービスが開始されているにもかかわらずである。

 どうやら局側設備であるDSLAMの型式が古く、12Mに対応していないのが原因らしい。高瀬町のものはファームウェアの更新だけで対応できたらしく、ここに来て初期のサービス開始時期の前後が影響してきたようだ。その勢いで現在高瀬町は24Mにも対応したが、詫間町は8Mのままである。また、荘内地区にいたってはいまだにフレッツ・ISDN止まりである(NTT以外の事業者はサービスを開始する気配すらない……)。

 これらの諸事情を受けて、小生はこう考えている。さまざまな設備や地理的要因に制約され、一定水準のサービスを提供できないADSLサービスの“最高”速度向上にはいい加減に見切りをつけ、回線事業者はFTTHの全域提供に全力を尽くすべきではないのか。少なからず“ブロードバンド”の恩恵を受けられない人々がいるのだから。

(2003/11/20)

参考データ

居住地区香川県三豊郡詫間町
回線の種類フレッツ・ADSL 8M
接続事業者NTT西日本
線路距離長1,350m
伝送損失36dB
プロバイダーOCN
スループット上り800kbps、下り6,560kbps

□詫間ブロードバンド研究会
http://www.add-in.co.jp/tbbs/
□FLET'S Broad Avenue(NTT西日本)
http://www.ntt-west.co.jp/flets/fba/index_f.html
□OCN
http://www.ocn.ne.jp/

田中達也
「詫間ブロードバンド研究会」言い出しっぺ。パソコン販売サポート・Web制作等さまざまな関連事業に手を出しつつ、ブロードバンド百景掲載を機にライターデビューという夢を見ている。1歳9カ月の娘のあげはには、早くもPCの英才教育中。
ホームページ: 『有限会社たなか』  http://www.add-in.co.jp/
Broadband Watch ホームページ
Copyright (c) 2003 impress corporation All rights reserved.