■局に人が戻るまで……冷たい麦茶でもいかがですか?
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壁に穴を開けられないのでエアコンのホースを使って固定されたパネル
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エアコンダクトから通されたケーブルは一旦平たいパネルへつながれた。ここでまた賃貸部屋ゆえの問題が。「これをこのあたりに固定したいんですが、いいですかねぇ?」おじさんの一人が平べったいパネルを手に振り返る。「これ」とはパネルであり、「このあたり」とは壁である。古い建物ゆえに土壁っぽい作りなので、「壁に直接モノを固定=壁の一部粉砕」になってしまう。それは破壊行為であり、大家さんへの確認が必要になるので「壁には固定しない方法でなんとかお願いしたい」と頼むと、「こんなことになっちゃってもいいですかねぇ?」という。見るとエアコンのホースと壁の間にはさんであった(笑)。立派なオフィスなら適当な壁にかっこよく固定されるであろうパネルだが、うちでにはそうはいかない。逆さまにされた挙句、ホースと壁の間にはさまれることになった。
肝心のケーブルの方はしきりに何か調節されていた様子だが、担当の方はおかしいおかしいを連発。どうも局側の問題で回線自体接続できていないらしい。しかも担当者が移動中で、作業ができるようになるまで(再び局に戻るまで)に20分はかかるとのこと。そのまま20分間みなで黙って立っているわけにもいかないので、適当に(隙間で)くつろいでもらうことにした。椅子と冷えた麦茶を出し、テレビを見ながら雑談。するとディスプレイ上で開いていたチャット画面やWebカメラの映像に気づかれた! そのときは壁が映し出されていただけだったが、それでも無人の映像を見せるとしきりと感心されてしまった。「普段工事ばっかりしてて、肝心の自分はパソコンとか苦手なんですよねぇ」と1人の方が言う。自宅はブロードバンド化してないのかと聞くと、まったくしてないとのこと。案外そういうものかもしれない。
企業内工事で困ったエピソードなど披露してもらっているうちに20分が経過。しかしまったくつながる気配なし。外はもうかなりの雨。しかも暗くなっている。なんでも帰宅ラッシュの渋滞とこの雨の影響でまだ担当者が局についておらず、さらに小一時間くらい待たされるらしい。一般的にそこに人は常駐していないのだとか。機械があるだけ。一同顔を見合わせて諦めモード……。いずれにしても何もすることがないので、そのままテレビを見ながらひたすらまったりとしゃべり続けるしかない。ときおり高倉健似の方が携帯電話で話していた。金曜の夜だったので食事の約束があったらしい。察するにデート!! いいなぁデート。だって高倉健に似てるし! 映像見た友達も「高倉健に似てる」って書いてきてたし! でも気の毒にすでに20時であった。17時すぎに第1陣が到着したことを考えると、もう3時間も経過していたのであった。ながっ!
■超庶民的配線完了
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CDラックおよびミニ掃除機と同居せざるをえなくなった気の毒な終端装置。終端装置から伸びたLANケーブルはエアコンホースを経由して一路カーテンレールへ伸ばされる
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これ以上待たされるようなら人生相談でもしかけようかと思っていたとき、「あっ! 来ました!!」と接続状態の監視をしていた健さん(勝手に命名)が叫んだ。まったりモードになってからさらに30分くらい経過したころである。やっと局内の対応が済んだらしい。
あとは終端装置を設置してやっと工事完了だ。その際も終端装置の置き場所でしばし悩んだ。室内は光のケーブルを延ばすよりもLANケーブルで対応したほうが故障の危険性が減って無難だということで、引き込んだエアコンダクトのすぐ近くに置くことに決定。ルータの場所が部屋の反対側だったため、そこまでは用意していたきしめんケーブルを引っ張ることに。
「ここならひっかかけることもないと思うので、固定しておきますね!」というので見ると、ケーブルはカーテンレールの上でしばりつけられていた。ケーブルが薄っぺらいきしめんタイプだったので非常に柔軟性があり、カーテンレールの上でもスムーズに取り付けられたようだ。しかも銀色だったためレールと同化していたのである。すばらしい!(笑) そして担当のお2人は配線が完了したことを確認し、雨の中帰路についた。
普通ならてきぱきと工事を済ませ、状態の確認をしたらサインをもらってさっさと帰る工事と思われ、担当の方々もまさか2時間近くもかかろうとは夢にも思わなかっただろう。こちらとしては、工事担当者の人間的な一面を見ることもでき、滅多にないコミュニケーションの場となった。こんなハプニングも案外面白いものだ。
こうして工事担当のみなさまの創意工夫の結果、電柱からベランダの屋根を伝い、直接エアコンダクトから入ってきた光ケーブルは、いったんエアコンのホースの間にはさまれ、メディアコンバーターから再びホースを経由し、カーテンレールを伝ってルータへ。これが「祝! 光導入!!」の実態である。…なんだかすべてがリアルすぎて、全然テクノロジーの香りがしないんですが。
■気になる速度
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フレッツ接続ツールによるテスト接続
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ルータを使わずにフレッツ接続ツールで直接接続してみたところ、最初のテストで30Mbpsに。ISP経由では15Mbpsという結果になった(ISP経由時の計測はブロードバンドスピードテストを利用)。平均よりやや遅いらしい。週末の夜ということもあり、時間的にも速度低下は致し方ないことかもしれないが、遅いといわれるとまた対抗意識がムラムラと!! どうしたらいいものかとしばし考えていたところ思い出した。ADSLのとき、やはり速度が出ないので何かを調節したぞと。それはMTU(Max Transfer Unit)とRWIN(Receive Window Size)であった。
とりあえずeditMTUというツールでいったんデフォルトにリセット。念のため再度計測してみると、フレッツ・スクウェアのテストでは下り56Mbps、ISP経由では下り31Mbpsに改善されているではないか!? ……リセットしただけなんだけど……とりあえず速度が改善されたので納得。
いや、本当はもっと追求してゆきたいのだがきりがないというのが正直なところ。あれこれ調べていくうちにMTUとRWIN以外にも「ソケットバッファサイズ」なるものをチューニングすることでさらに改善することができるらしいとの情報も見かけたが、今の環境を考えるに速度を左右する要因はハードウェア面にも及ぶため、突き詰めていくにはいろんな意味で怖い世界に思える(苦笑)。何よりマシン自体少々古いというのがあるので、結局最後には「やっぱし手っ取り早く最新最速マシンがほっすぃ」という結論に達してしまうことは火を見るより明らかだ。
以前は600kbps前後をフラフラしていたんだから、下り15Mbpsでもいいじゃないか!>自分! だるまさんが転ぶには十分すぎるんじゃないか!!>自分! 贅沢いってんじゃねぇぞ>自分! と半ば強引に「自分」を納得させたのであった。
いつ計測するかによってデータに大きな開きがあるのも事実だ。平日の昼間ならルータ経由でもおおむね20Mbps前後。ひと気のなさそうな午前4時や5時なら30Mbpsくらい。もっとも最近の計測では、フレッツ接続ツールを使ったテスト接続で66.26Mbpsという結果もあるのだが、これも何度か試していると40Mbps台に落ち込んだりする(40Mbpsも出して"落ち込む"というのもなんだか妙だが)。
さらに言えば、接続するサイトによってはADSL時代と体感速度が変わらないなんてこともある。条件がそろった場合…ネットワークが混雑しない時間帯でサーバの反応がよいときに数MBのデータをダウンロードすると、エラー? と思うほど早いこともある。だから技術的な何かを追い求めるのでない限り、これ以上神経質になってもしょうがないのだ(あくまでも拙宅の場合)。
■いよいよ再チャレンジ
さて。とうとう機は熟した!! というのは大げさだが、忘れてはならない行事を迎えることとなった。WeBカメラ接続よーし! サイトアクセス完了! 不要なアプリケーションは終了させてメモリも確保だ。いざ進め! あたしの顔!! (顔だけリアル画像なので)と始めてみると、前よりもスイスイ前進するものの、やっぱりぶっとばされまくり。「あ~れ~!」といわんばかりにクルクルと何度も回転した。しかもスムーズに……。一重にヘタクソだったの一言に尽きるらしい。なんだよー!(怒)
■本のページをめくるがごとく
それにしても一般家庭で30Mbpsという速度! テキストだけのシンプルなサイトならストレスのスの字も感じない速度だ。スと発音するにも至らない。口をすぼめる前には終了! と言っても過言ではない。
この表示速度に関して、忘れられないエピソードが1つある。数年前、とあるISPに勤務していたときのこと。当時はまだダイヤルアップ接続で28.8kbpsが主流だっただろうか。ある日会員の方からサポートセンターに1本のクレーム電話が入った。「今日どこそこの会場でインターネットに接続してるというので自分のホームページを開いてみたら、まるで本のページをめくるみたいに一瞬で出たのに、お宅でアクセスするとそうならない。どういうことだ!お宅はサービスが悪いんじゃないか!!」というものだったらしい。
インターネットカフェ式で接続体験させてくれるという場所でアクセスしてみたらしい。当然会場はダイアルアップではない(はず)。どれくらいの回線を引いていたのかは定かではないが、イベントで使うくらいだから、利用者に好印象を与えるには十分な速度は確保していただろう(時期的に考えると64Kだった可能性もあるが……)そのインフラとダイヤルアップを比較して不満が募ったようだ。サポートスタッフが状況の違いを一生懸命説明しても、その方は小一時間は電話にくらいついて離れなかったらしい。インターネットへの接続というのは、いかなる場合でもそういうものに違いないと思ったのだろう。
その「本のページをめくるみたい」にアクセスしたかった方は、今ごろどうしているだろうかと思うのだ。今まさにご家庭でも本のページをめくるがごとくアクセスできる時代の到来! サクサクな日々を送っているだろうか。エピソードそのものが数年前のことなので、そんなクレームをつけたこと自体、すっかりさっぱり忘れているに違いないが。
■これから絶対ほしいもの
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ルータは当時販売されていた機種の中でスループット、価格、サイズ、割引率、ポイント還元率、設置場所とのデザインの相性などを総合的に考え、散々悩んだ末に「BUFFALO Air Station WHR-G54/P」を選択。あんまりいろいろあるので心底悩んだ! 最後の決め手は某通販サイトの週末限定特価セール
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それにしても速度に対してだんだん感覚が麻痺しているのがわかる。工事の際に見せていただいた極細の線を通って流れているものは仕事のデータだったりメールだったり。もともとゲーム関係が得意ではないので、光のケーブルを導入したからといってオンラインゲームにはまることもなく日々を過ごしている。ライフスタイルは驚くほど何も変わっていないのだ。ADSLを導入した時ほど劇的な感動は感じない。だから「次に自分が感動するのってどんなことだろう?」時々そんなことを考えていた。転送装置とかフードレプリケーターとか?(笑) そんな折、ニューヨーク大停電で大騒ぎ! のニュース。
ということは、これからは一家に1台、大容量のUPS(無停電電源装置)ですかね? だって電気がなけりゃどんなに太い回線でも無意味だから。電気がないと動かないものがほとんどなのに、UPSをおまけにつけます! しかも大容量! なんてキャンペーン見たことない。でもニューヨークの停電を受けて、これからはUPSブレイクのヨカーン!
と激しく脱線してきたところで今回の導入記はおしまい。
(2003/09/05)
■参考データ
居住地区 | 東京都渋谷区(自宅兼仕事場) |
接続事業者 | NTT東日本 Bフレッツ(ニューファミリータイプ) |
回線の種類 | FTTH |
プロバイダー | ASAHI-NET |
スループット | 20~30Mbps(フレッツ接続ツール測定で最高66Mbpsていど) |
□フレッツ公式ホームページ(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/flets/
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