■ 再開発予定地だったはずが……
第十三景で我が家の状況をご紹介したのが2002年8月。それから1年ちょっと経った2003年10月、我が家の郵便ポストにUSEN(有線ブロードネットワークス)のチラシが投函された。でも、このあたりが再開発予定地になってる関係で、線が引けるのがいつになるかわからないと言われたのは1年ちょっと前だったハズ。マンションの周りも駅周辺も、これといって再開発は進んでおらず、変わった様子は見られないが……。
まぁいいか、FTTHが引き込みできるんならそんなことは考えないことにしようと、申し込みをすることにした。
■ いざ申し込み!管理組合の承認はあっさりクリア
申し込みをするにしても、我が家はマンション。管理組合に話を通さなければいけないという問題がある。しかしラッキーだったのは、今のマンションでは1年ごとの当番制で理事会を運営していて、なんと2003年の10月末から私が管理組合理事長になったのだ。「ここで私に順番が回ってきたのも何かのお告げ?」とばかりに、理事会にFTTH引き込みを提案してみた。
ほかの理事の方々はパソコンを持っておらず、何のことやら……という顔だったが、マンション側の負担もなく、今や当たり前となりつつあるFTTH対応になって、資産価値も上がるのであればいいのではないかということになった。USENの規定により、まずは申し込みをしなければ調査も何もできないので、私がUSENにマンションタイプEを申し込んだのが2003年11月のことだ。
もちろん、すぐに住人へのFTTH引き込みのアンケートを実施。マンション内にも何人か申し込みたいという人がいたこともあり、アンケートでもすぐに承認が得られた。なにやら拍子抜けするほど、あっさりOKとなってしまった。12月にはUSENの現地調査が入りLANで引き込み可能と判断がされた。さてこれですぐにFTTH環境が手に入ると思っていたが……。
■ USENでも回線はNTT?
マンションへの光ファイバは、USENの自社回線ではなくNTTのダークファイバを借り受けての引き込みになると言われて、「ふ~ん」と思っていたが、ここに第一の落とし穴があった。
当時USENはホームページで「最短10日でFTTHを引き込み工事を完了する」と謳っていたので、早い時期に開通するだろうと踏んでいたが、「それは自社回線のことです」ときっぱり営業さんに言い切られてしまった。では、ウチの場合は? 「まずUSENからNTTへダークファイバーの申し込みをして、NTTの引き込み調査、工事が終了してからUSENの引き込み工事をします」……いったいいつ開通するんだろう。NTTの調査まで2カ月ほどかかり、その後USENの工事までさらに2カ月かかるという。
まぁしかたがない。従うしかないし、4カ月待てばいいんでしょ、ぐらいにしか考えていなかった。しかし2月になってもNTTから調査が来ない。USENに確認すると、どうやらNTTがなかなか動いてくれないらしい。USEN担当者によれば、Bフレッツ以外での動きはすごく遅いとのこと。困ったもんだ。
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USENの引き込み事前調査。ちゃんとリードを入れて確認しているのになぁ……
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自宅パソコン部屋からも調査したのにな……
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■ 伝送損失が大きいのは、なんとNTT局舎内が原因!
6月頃になってNTTが工事にやってきた。外の電柱からマンション引き込みパイプを通してマンション内MDFまで光ファイバが開通した。ここからはUSENの仕事になるので、早く済むのだろうと考えていた。
しかしここで第二の落とし穴があった。ちょうどその頃、個人的に仕事も忙しくなり自宅のFTTHに係われる時間がなかなか取れずそのままにしていたら、その間にUSENの事業所が引っ越しをして、担当者が退社していた。そして、なんと次の担当さんにウチのマンション工事の引き継ぎがされていなかったらしいのだ。仕事にかまけてUSENに電話しなかったのもまずかったかもしれないが、引き継ぎが行なわれていないとはどういうこと? 要するに、放ったらかし状態にあったわけだ。
やっと新担当者から連絡が来たと思ったら、今度はマンションMDFの位置が悪く、伝送損失が大きすぎるという。原因は光ファイバの融着が悪い(可能性があるため)らしく、MDFの工事をもう一度やり直すハメになってしまった。しかしやり直したものの、やっぱり伝送損失は変わらない。その日は夜遅くまで調査していたが、解決せず。後日また調査することになった。
再度調査に来てもらい、いろいろ調べたが問題になる箇所は見あたらない。マンション内に問題がなければ、マンションまでの回線に問題がある可能性が考えられる。USENがNTTに調査を依頼したところ、やっと原因が掴めた。なんと、NTT局舎内の光ファイバの融着が問題であった。しかもNTTが調査に動くまで1カ月ほど時間がかかっているのだ。
■ 配管がつながってない!?
最初のUSENによるマンション調査時には、2箇所にハブを設置しなくてはいけないことがわかっていた。マンション内でFTTHの申し込みを行なっていたのは全部で4件。うち、2件は電話の配管を利用して宅内にFTTHを引き込み、残りの2件はTVアンテナ配管を利用する予定だった。もちろん調査報告書にもそう書かれており、電話配管とTV配管のMDFを繋げる工事もするはずだったのだ。
しかし、なんと電話配管とTV配管のMDFの間がつながっていないらしい。回線が来ているのは電話配管側なので、TV配管側はこのままでは回線を使えない。あげくに我が家はTV配管利用組で、当日はMDF間をつなぐ工事はできないと言われてしまった。できないものは仕方がないので、再度工事をしてもらうしかない。1週間ほど待ち、MDFを繋ぐ工事が完了。これでやっと開通だ。
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設置されたハブの1つ。でかいFANが付いており夜中などは結構音が気になるが、家の中までは聞こえないからいいかな
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電話配管とTVアンテナ配管を繋いだ様子
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■ まだまだ落とし穴
MDFもつながり、あとはTV配管で宅内引き込み工事はすぐ終わると思っていた。工事担当者がリードを入れて、TVアンテナを分岐している我が家の風呂の屋根裏(?)までLANを引き込んだ、までは良かった。
次に起きた問題は、風呂の屋根裏からパソコンを置いてある部屋へ引き込み時に起こった。なんとパソコンを置いてある部屋にだけ配管がなく、直にアンテナ線が通してあるだけなのだ。もちろん2003年12月の宅内調査時には、リード線を入れて調査していた。その上で我が家にOKが出ていたのは言うまでもない。ではどうやってLAN配線を引き込めばいいのか……。とりあえず工事担当者は、困った顔をしている。いったん今日は引き上げ、USENと相談して改めて工事に伺うとのこと。あ~、またおあずけを食らってしまった。
翌日USENのSさんから電話があり3つの方法を提案された。
(1)LANを引き込める部屋に回線を通してそこから無線LANで接続する
(2)手探りでパソコン部屋へ回線を通し、パソコン部屋の壁に穴をあけてLANのジャックを取り付ける。ただし、手探りで通せた場合に限る
(3)USENとの契約をキャンセルする
(1)については、ここまできてなぜ無線で開通しなくちゃならないのかという理由で却下。今回、我が家でも無線LANを入れようと思ってはいるが、自宅へのアクセス回線自体を無線にしたいとは思っていない。(2)に関しては問題なし。(3)では何のためにこれまで数々の問題を乗り越えて頑張ってきたのかわからないの。これも却下。結局、選択肢は(2)しか残っていないので、なんとか手探りで試してくれるようお願いした。
その後すぐにUSEN担当氏立ち会いの下、工事が再開された。パソコン部屋と風呂の間は廊下があるだけなので何とかなるのではないか、という工事担当者の話に期待しつつ見守っていると、廊下の電灯までLAN配線は引き込めることがわかり、そこから先は天井伝いにパソコン部屋まで通すことにした。部屋の天井近くなので見栄えは良くないが、そこは良しとするしかない。
いろいろな落とし穴に落ちながら、FTTHが開通した時は10月になっていた。開通後は、速度的には30MB~70MBの速度が出ており、気持ちよくFTTH生活を送っている。
■ 無料追加メールアドレスに惹かれてプロバイダーはSo-netに変更
当初はUSENを接続事業者兼プロバイダーにするつもりで申し込んでいたが、USENでは追加のメールアドレスが別料金になることもあって調べたところ、USENの回線を利用したSo-netという選択肢もあることが申し込み後にわかった。So-net(UCOM)という契約だとメールアドレスは2つ持てるので、カミさんの分も含めてちょうどいい。しかし逆に、USENだと固定IPがもらえるが、So-netは固定IPではない。いろいろ悩んだが、自宅にサーバーを置く予定がないことや、カミさんがポストペットを使っていてSo-netのポストペットパークの利用料が無料になるということもあって、USENへの申し込みはキャンセルしてSo-netに変更することにした。
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送られてきたAterm WR7610HVを自宅に設置。無線カードを差し込むだけで無線LAN環境が手に入る。IP電話も電話代節約に貢献してくれている
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回線が開通する前に、ルータは用意しておいた方がいいなぁと、NECの「Aterm WR6600H」のカードセットを購入してあった。流行のIP電話にも興味があったので、So-netフォンに追加申し込みしようとしたが、追加で申し込む場合は回線が開通してからでなければ申し込みできないという。仕方ないので、実際に開通してからSo-netフォンを申し込むと、すぐにIP電話対応のルータが送られてきた。これならルータを買わなくても良かったなぁ……。まぁ、無線LANの基地局にすればいいやと思っていたら送られて来たのは、購入したWR6600Hの上位機種にあたるNECの「Aterm WR7610HV」という機種だった。
IP電話なんて初めてのことで、どうやって設定したらいいんだろうと思っていたが、説明書通りに設定していくとすんなり繋がった。IP電話で電話をかけることは問題なくできた。それで問題はないと思っていたが、外からIP電話に電話をかけてみると話し中である。カミさんが電話してるのかなぁと思っていたが、カミさんは電話を使用していなかった……。えっ、なんで!?
自宅のマシンで設定画面を出したまま、So-netのサポートへ電話して確認をしたら、ナンバーディスプレイをNTTに申し込んでいないのにナンバーディスプレイ使用にチェックが入っている。そのチェックをはずしたら、問題なく通話できるではないか。あ~、なんて無知だったんだ……。
■ 無線LANの便利さ
送られてきたAterm 7610HVというのは本体に無線カードを差し込むだけで、無線LANが利用できる。しかし7610HVにもルータ機能があるため、せっかく購入したAterm 6600Hの使い道がなくなってしまった。しかしせっかく買ったものだし、もったいないので事務所で有効活用することにした。でも設定がよくわからないし、どうしようかと悩んでいたところ、ちょうど本連載第七十二景の中でも登場した、ネットワーク屋の知人から電話がかかってきた。ラッキー!
電話の内容は仕事の依頼で、ネットで販売する物の写真を撮ってほしいとのこと。予算は無いというので、メシを食わせてくれればいいよ(いつも世話になってるからこんなことでしか恩返しができない)ということになり、彼は撮影する物を持ってやってきた。その際に「無線LANの設定って簡単? 今時間ある?」とささやいたのは言うまでもない。さすがプロ、いとも簡単に設定をしてくれ、事務所の無線LANはすぐに利用できるようになった。どこをどう設定するかも教えてもらったので、自宅での設定も簡単にできた。これについては、同じNECのルータで設定画面が同じだったことも幸いした。
無線LANは、一度使ってしまえば手放せない便利さ。仕事の巨大なデータなどを扱う時はLANケーブルを繋げばいいわけで、ふだんWebを見たり、メールを受け取るなどの用途なら無線LANで十分な速度だ。
なんだかんだと落とし穴に落ちながら、1年近くかかって開通したFTTHは快適で、事務所のサーバーとデータのやりとりも速く快適だ。無線LANも便利で気に入っているし、実家などへの電話もSo-netフォンで安く通話できるのもありがたい。よい時代になったものだ。
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せっかく買ったAterm 6600Hは事務所に設置
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自宅リビングでも快適な無線LAN。何よりもLANケーブルが無くなったことで見た目もすっきりできる
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■ 参考データ
居住地区 | 神奈川県川崎市 |
接続事業者 | 有線ブロードネットワークス(USEN) |
回線の種類 | FTTH |
プロバイダー | So-net |
スループット | 下り30~70Mbps |
■ URL
USEN
http://www.usen.com/
So-net
http://www.so-net.ne.jp/
2004/12/16 11:14
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川上卓也 広告、雑誌、PR誌などで撮影をしているカメラマン。最近はデジタルな撮影が多い。有限会社メディアート所属。EOS-1D Mark2、EOS 10D、Macintoshなどがメイン機材。最近はDTPの仕事の割合が増えてきて、何でも屋となりつつある。 |
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