「ブロードバンド時代のWindows」として華々しいデビューをかざったWindows XP。PPPoE、ICF、Windows Messengerなど、確かに数々のブロードバンド機能が搭載されているが、これらは果たして実用に耐えうるものなのだろうか? 連載初回となる今回から、数回にわたってWindows XPの機能をチェックしていく。その後は、ルータ製品レビュー、通信事業者への取材などもお送りしていく予定だ。
■Windows XPのブロードバンド機能
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Microsoft Windows XP Professionalパッケージ。価格はオープンプライスだが、店頭予想価格はHome Editionが25,800円、Professionalが35,800円。11月16日発売 |
テレビCMも開始され、次第に認知度が上がってきたWindows XP。このOSの特徴は? と問われて、真っ先に思い浮かべるのは、やはりキャッチコピーにも利用されている「ブロードバンド」関連の機能だろう。テレビCMでもカップルがWindows Messengerを利用してビデオチャットをするシーンが描かれており、常時接続環境、そして高速な回線での楽しみ方が提案されている。
では、具体的にWindows XPのブロードバンド機能には何があるのだろうか。主なものをリストアップしてみると以下のようになる。
・Windows Messenger
・Windows Media Player8
・PPPoEのサポート
・リモートアシスタンス/リモートデスクトップ
・インターネット接続ファイアウォールの搭載
もちろん、これ以外にもWindows XPには数々の新機能が搭載されているうえ、目に見えない「安定性」という大きな特徴も備えているのだが、ブロードバンドという環境に限定すれば、以上の機能が主なものと言える。ちなみに、ここでリストアップした機能は、Home Editionがリモートデスクトップの接続を受け付けることができない制限があるものの、どれもHome EditionとProfessionalの両方で利用可能だ。
さて、これらの機能のうちWindows MessengerとWindows Media Player8は、具体的な使い方が多数のメディアに紹介されており、機能的にも比較的わかりやすいものと言えるが、そのほかの機能についてはあまり詳しく紹介される機会がない。これらの機能が、一体どれほどの実力を持っているのか気になる読者も多いことだろう。そこで、ここでは主に後半3つの機能にフォーカスを当て、それぞれの機能のメリットや用途などを探っていくことにする。まずはじめはPPPoEから話を進めていこう。
■OS標準でサポートされたPPPoE
PPPoEは、ADSlやCATVなどで利用されているユーザーを認証のためのプロトコルだ。NTT東日本・西日本のフレッツ・ADSLなどで利用されており、プロバイダへの接続時にユーザー名とパスワードを認証するために利用される。正式には「Point-to-Point Protocol over Ethernet」という名称で、要するにEthernet上でダイヤルアップ接続のようなPPP接続を可能にする技術となる。
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接続ウィザードに追加されたPPPoEの選択肢。少しわかりにくいが、「ユーザー名とパスワードが必要な広帯域接続を使用して接続する」というのがPPPoE用の選択肢となる |
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接続用のユーザー名とパスワードを指定すると、実際にPPPoE接続が作成される。接続方法は、ダイヤルアップの場合と何ら変わりはない |
Windows XPでは、このPPPoEが標準でサポートされている。インターネット接続を作成するためのウィザードを起動するとわかるが、インターネットへの接続方法の選択肢のひとつとして「ユーザー名とパスワードが必要な広帯域接続を使用して接続する」という項目が追加されており、これを選択することでPPPoEを利用した接続を作成することが可能となっている。これにより、フレッツ・ADSLなどの環境では、NTT東日本・西日本が配布しているPPPoEクライアントツール「フレッツ接続ツール」を利用しなくてもプロバイダへの接続が可能になる。試しにWindows XPの「ネットワーク接続」に新しい接続としてPPPoE接続を作成し、フレッツ・ADSLに接続してみたが、何の問題もなく接続できた。
では、フレッツ接続ツールの代わりにWindows XPのPPPoEを利用するメリットはどこにあるのだろうか。まずは、互換性の問題が挙げられる。フレッツ接続ツールは、一部ネットワークカードとの相性の問題などもあり、正常に動作しないケースなどがあった。また、根本的な問題として現在のフレッツ接続ツール(バージョン1.5b)はWindows XPに対応していないという問題もある。Windows XPにインストールすることはできるが、エラーが発生して実際に接続することはできないのだ(互換性モードを利用しても不可)。このため、Windows XPを利用する限り、現段階ではOS標準のPPPoEを利用するしかないことになる。
ただし、仮にフレッツ接続ツールがWindows XPに対応したとしても、Windows XPのPPPoEを利用するメリットはある。なぜなら、接続が完了するまでにかかる時間がWindows XPのPPPoEの方が速いからだ。
フレッツ接続ツールの場合、接続を開始してから認証が完了し、実際に接続されるまで3~4秒程度かかるが、Windows XPのPPPoEを利用した場合は一瞬にして接続が完了する。時間的にはわずかな差だが、体感としてはこの差が大きい。NTT東日本・西日本が配布しているフレッツマネージャなどを組み合わせて利用すると、さらに時間の差が大きく感じられるので、使いやすさを考慮すればWindows XPのPPPoEに軍配が上がるだろう。
しかしながら、このようなPPPoEのメリットを享受できるのは、現段階では限定された環境のみとなる。というのは、実質的にPC側でPPPoEクライアントを利用する必要があるのは、ブリッジタイプのADSLモデムをPCに直結している場合のみだからだ。このため、ルータタイプのADSLモデムやブロードバンドルータなどを利用しているユーザーにとっては、Windows XPのPPPoEのメリットを享受する機会はほとんどないと言える。
■将来的な応用も考えられるPPPoE
では、多くのユーザーにとってWindows XPのPPPoEは意味のないものと言い切ってしまってもいいのだろうか? 必ずしもそうとは言えない。なぜなら、前述したようなPPPoEの利用方法はあくまでも現段階での話でしかないからだ。
将来的なことを考えれば、Windows XPにPPPoEが標準搭載されているメリットが活きてくることも予想できる。たとえば、公共の場でのネットワークの利用がそうだ。ホテルや飲食店などの公共の場でのインターネット接続環境が整ってくれば、外出先などからでもPPPoEを利用して、普段自分が利用しているプロバイダーに接続可能となることも考えられる。
現段階では、ブロードバンド対応のホテルなどではCATV回線が利用されているケースが多い。また、一部の飲食店などで展開されているADSLと無線LANを組み合わせたような接続環境も、802.11bのWEPやMACアドレスによる接続制限を利用するケースが多い。このほか、公共の場でのインターネットの利用に関しては、この他にIEEE802.1x(注1)の利用も検討されているため、必ずしもPPPoEが必要になるとは言い切れない。
しかし今後、アクセスラインのみを提供する公衆ADSLサービスが登場し、その認証にPPPoEを利用することも考えられる。このような環境が登場したとしてもWindows XPにPPPoEが標準搭載されていれば、即座にサービスを利用することが可能となるわけだ。
このように現段階では、残念ながら利用シーンが限られる標準搭載のPPPoEだが、機能単体として見た場合の完成度は非常に高いと言える。ブロードバンドルータなどを利用しているユーザーは、あまり必要性を感じないかもしれないが、そうでない場合はWindows XPのPPPoEを利用する価値は十分にあるだろう。
(次回につづく)
(2001/11/15)
□フレッツサービス情報(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/flets/
□Windows XP製品情報(マイクロソフト)
http://www.microsoft.com/japan/windowsxp/
注1:LANへの参加認証をユーザー単位で行なうための認証技術。中央の認証サーバーがユーザーにネットワーク使用権利があると認めるまで、802.1x準拠のハードウェアがクライアントからのトラフィックをブロックする。また無線LANのWEPキーを動的に交換し、より高いセキュリティを実現することができる。これもWindows XPで標準サポートされている。
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