生活情報などを提供するネットワークサービス「Tナビ」に対応した松下電器産業のデジタルハイビジョンテレビ「デジタルT(タウ)」。個人的に興味があったこともあり、早速、購入して使ってみた。果たして、家庭用テレビは情報端末として、どれほどの実力を秘めているのだろうか?
■ネットワーク端子とブラウザを搭載
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背面に用意されたネットワーク端子。ここにFTTHやADSLなどのブロードバンド回線を接続することで「Tナビ」サービスを利用できる。ただし、10BASE-Tのみの対応 |
今年の5月、松下電器産業から、「Tナビ」に対応したデジタルハイビジョンテレビが発売された。「Tナビ」とは、インターネットを通じて、生活に密着した情報を配信するネットワークサービスだ。と言っても、別段、高度な技術が利用されているわけではなく、要するにインターネット上に、Tナビ専用のコンテンツを用意。それを、Webブラウザ内蔵のテレビから閲覧できるようにしたサービスとなっている。
実際の利用イメージとしては、パソコンでWebを閲覧するのとほとんど変わりがない。Tナビに対応したテレビにはネットワーク端子が装備されており、ここにFTTHやADSLなどのブロードバンド回線を接続することで、ネットワークに接続できるようになっている。あとはテレビ本体に内蔵された専用ブラウザを利用してコンテンツを閲覧するという使い方となる。パソコンに搭載されているブラウジング機能をテレビに搭載し、それを家庭用テレビで使いやすいようにカスタマイズしたという感じだ。
今、テレビを購入するなら、プラズマか液晶というのが有力な候補となることだろうが、予算の関係上そうはいかないケースも多い。そういったユーザーにとっては、ブラウン管方式でも、ネットワークサービスに対応するなど、普通のテレビとひと味違った使い方ができる同製品は魅力的な商品とも言える
■使いたいときにサッと使える
Tナビ自体の使い方は非常に簡単だ。リモコンに用意されている「Tナビ」ボタンを押すと、テレビ画面にTナビのトップページが表示されるので、リモコンのカーソルキーを利用して、メニューから見たい項目を選び、そのコンテンツが表示するという流れになる。
用意されるコンテンツは、テレビ/ニュース、エンタテインメント、旅/レジャー、グルメ/レシピ、暮らし/宅配、ショッピング、お楽しみ/趣味、調べものなど、いくつかのカテゴリに分類されており、それぞれ2~3ほどのコンテンツが用意されている(2003年5月の時点では全部で22コンテンツ)。たとえば、テレビ/ニュースでは番組情報、エンタテインメントでは映画やチケット情報、お楽しみ/趣味ではオセロゲームや占いなどのコンテンツといった内容となる。
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リモコンでTナビボタンを押したときに表示されるのトップページ。メニュー自体は非常にシンプルな構成で、しかもボタンなどが大きく操作しやすい |
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コンテンツはカテゴリごとに分類されており、各カテゴリごとに2~3のコンテンツが用意される。主に生活に密着した情報を閲覧することが可能 |
全体的な印象としては、家庭で主にテレビを利用する女性向けというイメージが強いが、個人的に気に入ったコンテンツもいくつかあった。たとえば、暮らし/宅配メニューにある「出前館」などでは、近所に存在する出前可能なお店がリストアップされ、テレビの画面上でメニューを眺めながら出前の注文ができるようになっている。また、調べものメニューにある「マピオン」で外出先の地図を調べたり、乗り換え案内onTVを使って電車の乗り継ぎ方を調べることなども可能だ。
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近所にある出前可能なお店を表示し、メニューを見ながら注文できる「出前館」。手軽に出前を取ることができる |
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パソコンでもおなじみのマピオンのTナビ版。目的地を指定することで、地図データを表示することができる。スクロールや縮尺変更なども可能 |
もちろん、これらのコンテンツは同様のものがインターネット上に存在するため、パソコンからも利用することができる。しかし、手軽さという点では、Tナビに軍配が上がる。パソコンの場合、まずはパソコンを起動するというところから始めなければならないが、一般的にテレビはいつでも電源が入っているので、思い立ったときにサッとコンテンツを閲覧することができる。出かける前のあわただしい時間帯に、電車の乗り換え方を調べたいといったシーンなどでは本当に重宝する。
また、つい先日、Tナビ向けのWebメールサービスをhi-hoが開始するという発表もなされた。これにより、メールなどもテレビで利用できるようになる予定だ。我々のようにすでにパソコンを利用しているユーザーにとってみれば、「パソコンでできることをテレビでやらなくても…」と感じるかもしれないが、まだパソコンを利用していないようなユーザー層が存在することを考えると、手軽なインターネット端末としての存在意義もありそうだ。
■通常のサイトもブラウズ可能だが……
なお、TナビにはURL入力機能も備えられており、インターネット上の一般的なサイトをブラウジングすることも可能となっている。試しに、本サイトを表示してみたが、問題なくページを表示でき、ニュースを閲覧することができた。
URLの入力は、携帯電話での文字入力と同様にリモコンのチャンネルボタンを利用して入力するか、画面にソフトウェアキーボード(50音配列)を表示して入力することになるので、長い文字列を入力するのが面倒だが、お気に入りリストに登録しておくこともできるので、一般的なホームページの閲覧にも利用可能だろう。
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一般的なホームページの閲覧も可能。URLの入力は携帯電話と同様の方式か、ソフトウェアキーボードとなる。お気に入りリストに登録することもできるが、一部、表示できないページも存在する |
ただし、すべてのページが表示できるかというとそうもいかない。専用のブラウザである以上、ページによっては表示が乱れることなどがあるうえ、FLASHやJavaなどを利用したページなども表示することはできない。表示できるのは、HTMLのみで構成されたページだけと考えた方がよいだろう。また、Tナビ利用時の画面の解像度が800×450ドットとなるため、レイアウトなども多少見にくい印象がある。
さらに、Tナビ専用サイトの表示ではそうでもないものの、一般的なページの閲覧では表示速度が遅く、多少のストレスを感じてしまう結構もあった。現状、Tナビがアクセスする回線にはBフレッツのニューファミリータイプを利用しているが、ぺージの表示速度はISDNなどのダイヤルアップ接続の感覚に近い。ページを開くと、まずテキストが表示され、その後に徐々に画像が読み込まれていくという感じになる。
テレビ本体に用意されているネットワーク端子が10BASE-Tにしか対応していないということも問題だが、どちらかというとブラウザの処理自体が遅い印象だ。Tナビ自体は、もともと専用サイトを閲覧するための機能なので、あまり贅沢も言えないが、もう少し、表示速度が速くなると、一般的なインターネット上のサイトなど利用した面白い使い方ができそうだ。
■サービス内容の充実がカギ
このように、Tナビは、テレビのチャンネルを変えるのと同じような感覚で、インターネット上のコンテンツを手軽に楽しめる非常に面白いサービスだと言える。ただし、このサービスが、今後さらに発展していくためには、さらにいろいろなサービスを取り込んでいく必要がありそうだ。純粋に専用サイトのコンテンツを増やしていくことはもちろん、インターネット上の一般的なサイトをシームレスに閲覧できるようにしたり、ストリーミングなどの映像配信を可能にするなどの工夫も必要だろう。
また、個人的には、小さな画面でかまわないので、ブラウザの画面にテレビの画面を表示できるようにして欲しいと感じた。同社がTナビの良いところとして紹介しているように、「旅行番組を見ていたら急に出かけたくなっちゃった・・・」などというようなシーンは確かにある。しかし、現状のTナビは、ブラウザとテレビが機能的に独立したものとなっているため、このようなテレビと情報サービスの連携がうまくできない。できれば、テレビを見ながら、放送されている内容に関連するコンテンツを同時に楽しむという使い方ができるようにしてほしいものだ。
このような使い方ができるようになれば、単純なブラウザ機能を搭載したテレビではなく、テレビとインターネットの情報をシームレスに扱える総合情報端末として、さらに利用価値が高くなると言える。今後の発展に大いに注目したいところだ。
(2003/06/17 清水理史)
□「Tナビ」サービス
http://panasonic.co.jp/enet/products/tnavi/index.html
□関連記事:松下電器、ネットサービス「Tナビ」の報道関係者向けセミナーを開催
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/1317.html
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