少し前から、ちらほらと話題になっている「blog」。海外ではかなり普及しているようだが、国内はと言うと、話題にはなるもののそれほど普及はしていない。そもそもblogとは何か? どこが面白いのか? 実際に使って、その魅力に迫ってみた。
■blogって??
「日記サイトのようなもの」。blogの説明でよく見かける言葉だが、その正体は? と聞かれると的確に説明するのは難しい。日記サイトなら、これまでにも存在したし、それほど話題になることとも思えない。一体、これのどこが面白いのか? 正直、1カ月前までは、こんな印象しかなかった。
しかし、実際に使って、その正体が次第に見えてくると、これは面白いかもしれないと感じるようになった。要するに、これは新しい情報発信の形なのだ。
blogの正体がわかりにくいのは、その使い方が完全に自由だからだ。利用者、もしくは利用者が扱う情報によって、そのサイトはさまざまな形態になり得る。前述したように日記として使うこともできるし、個人所有のニュースサイトとして利用することもできる。また、掲示板のようにも使えるし、そこで議論を交わすこともできる。
共通しているのはblogというシステムを使っている点だけ。あとは使い方次第というのがblogなのだ。
■横の広がりがある
とは言え、日記やニュースサイト、掲示板などは、極端な話、これまでのホームページでも実現できる。プロバイダーやフリーで提供されているCGIを使って、日記サイトを開設している人なども少なくないだろう。では、このような既存のサイトとblogの違いはどこにあるのだろうか?
最も大きな違いは、「横の広がり」があるということだと思う。blogには「コメント」や「トラックバック(Trackback)」、「Ping」といった機能が用意されており、これらを使うことで、記事を元にしたコミュニケーションやblogサイト間のつながりが生まれる。
まずは、コメントだが、これは想像の通り、発行した記事に対して第三者が意見を投稿できる機能だ。たとえば、記事の発行者が気になるニュース記事を引用して、それに対する意見をblogに掲載したとしよう。この記事にコメントの書込みを許可しておけば、それを読んだ第三者が自由に意見を書き込むことができる。つまり、記事の発行者と読者との対話が実現できるわけだ。これは、あたかも雑誌の読者投稿欄のようでもあるし、インターネット上の掲示板のようでもある。
続いてのトラックバックだが、これはかなりわかりづらい。イメージとしてはリンクに近いものだと考えればいいのだが、仕組みはかなり複雑だ。たとえば、本コラムがblogで発行されていたとする。そして、本コラムを読んだ読者が、その内容に関して、「今日のイニシャルBについて」といった記事を書きたいと思ったとしよう。
この場合、読者はまず本コラムの末尾などに用意されている「trackback」というリンクをクリックする。すると、トラックバック用のURLが表示されるので、これをコピーし、自分のblogサイトで記事を執筆する際に「トラックバック先のURL」という欄に貼り付ける。すると、読者が記事を発行した時点で、この情報が本コラム側に届き、読者のサイトのURLや記事の説明などがトラックバックとして本コラムに自動的に追加される。
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トラックバックの例。他のサイトからのトラックバックを受けると、それがトラックバックの欄に表示される。どこのblogサイトで参照され、どんな内容の記事が書かれたのがかがひと目でわかる |
つまり、本コラムのトラックバック欄を見れば、この記事に関連する他のblog記事を参照できるようになるわけだ。本コラム側で何も操作しなくても、トラックバックが自動的に追加される点が面白い。こうして、トラックバックを利用すれば、blogサイト間のつながりが次々に生まれていくことになる。
最後のPingは、トラックバックでも利用されているが、要するに通知機能だと思えばいい。これに関しては、具体的な例を見たほうがわかりやすいだろう。たとえば、株式会社ドリコムが運営する「Myblog japan」を見て欲しい。「最新記事一覧」として、最近投稿されたblog記事が表示されている。これは、Myblog japanの運営者が最近投稿された記事を検索して手動でリスト化しているわけではない。blogサイトを運営するユーザーが送信したPingによって、自動的に更新されているのだ。
具体的には、blogサイトを構築するためのツール(たとえばMovable Typeなど)で、新たに記事を投稿した際にPingを送信するURL(どこに通知するか)を設定しておく。すると、発行者が記事を掲載した時点で、自動的にPingが送信され、その情報が相手に届いてリスト化されるわけだ。blogの発行者にとっては自分が記事を執筆したことを広く読者に伝えることができるし、読者にとっては各サイトを巡って最新のblog記事が発行されているかを探す手間が省ける。これも、blog発行者と読者を結びつける重要な機能の1つだ。
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「Myblog japan」 |
■決して手軽ではない
このように、blogには、これまでインターネット上で提供されていた情報発信手段にはなかったさまざまな機能が取り込まれており、発信した情報が非常に伝わりやすく、発展しやすい媒体だと言うことができる。中にはblogを新しいジャーナリズムの形だという人もいるが、記事の内容は別にして、システム的にはそういう発展をする可能性もあるだろう。
では、このような特徴を備えたblogが、なぜ国内では普及しないのだろうか? この答えは単純だろう。blogのシステムが、個人ユーザーにとって手軽に使えるものではないからだ。もちろん、記事を発行する手順は簡単だ。掲示板に書き込むような感覚で手軽に記事は発行できる。
問題なのは、サイトを立ち上げるまでのプロセスだ。中には「myprofile」のように、blogサイトを手軽に開設できるサービスもあるが、現状は自分のホームページ領域に「Movable Type」などのblog用のCGIを設置する方法が一般的だ。
この作業は非常に煩雑だ。英語のドキュメントやMovable Typeの設定方法を紹介しているサイトを参照しながら、設定ファイルを書き換えるなどの作業が必要になる。実際、筆者もMovable Typeを自分のホームページ領域に設置してみたが、試行錯誤しながらの設定となったため、1日がかりの作業となってしまった。利用するホームページ領域によっては、CGIが使えなかったり、CGIを設置するディレクトリが固定されていたりするので、環境に合わせて設定するのが難しい。サイトのデザインまで変えようと思ったら、スタイルシートの知識までも必要になってしまう。
現状のままでは、blogの魅力である記事の発行というところまで、たどり着けるユーザーは数少ないことだろう。このような手間がなくならない限り、blogが普及するのは難しいかもしれない。今年の8月、他国の法人に先駆けて、韓国のYahoo! Koreaがblogサービスを開始したというニュースがあったが、Yahoo!のような大手が、誰にでも手軽に利用できるサービスを開始しないと普及は厳しいのではないかと思う。Yahoo!に限らず、大手プロバイダーを中心に、ぜひ国内でも同様のサービスを開始して欲しいものだ。
(2003/10/14 清水理史)
□関連記事:ドリコム、blogのポータルサイト「Myblog japan」ベータ版を開設[INTERNET Watch]
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/08/18/147.html
□関連記事:ドリコム、ウェブログサービスに携帯電話で画像更新できる機能[ケータイWatch]
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/15014.html
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