松下電器産業(パナソニック)から、HDD&DVDビデオレコーダー用の周辺機器「ブロードバンドレシーバー(DY-NET2)」が発売された。同社のHDD&DVDビデオレコーダー「DIGA」シリーズにネットワーク機能を追加するための機器だ。早速、入手することができたので、レビューをお届けしよう。
■DIGAシリーズの機能を強化
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松下電器産業のHDD&DVDビデオレコーダーをネットワーク化できるブロードバンドレシーバー(DY-NET2)。必要な人だけがネットワーク機能を追加できるように、外部機器でコントロールするという珍しい形態となる。 |
家電の分野で、現在、最もネットワーク化が進んでいる製品を挙げるとすれば、やはりHDD&DVDビデオレコーダーがその筆頭となるだろう。すでに本体にネットワーク端子を装着した製品がいくつか発売されており、インターネットからのEPG情報の取得やPCなどからのコントロールが実現されている。家電のネットワーク化ということが話題になるようになってから久しいが、ネットワークをうまく機能として取り込んだ機器が、ここに来てようやく一般化し始めたことになる。
そんな中、松下電器産業から発売されたのが「ブロードバンドレシーバー(DY-NET2)」と呼ばれる機器だ。同社のHDD&DVDビデオレコーダー「DIGA」シリーズに対応した機器で、本体に接続することで、HDD&DVDビデオレコーダーをネットワークに対応させることができる(DMR-E80H、DMR-E90H、DMR-HS2、NV-HVH1対応)。他社製のHDD&DVDビデオレコーダーが本体にネットワーク端子を装備する方法を採用していることを考えると、比較的、珍しい形態となる製品だ。
この製品で具体的に何ができるのかというと、機能的には大きく2つに分けられる。ひとつは外部からの機器コントロール、そして録画予約時の番組タイトルの取得だ。これ以外にもブロードバンドレシーバーに対応デジタルビデオカメラなどを接続することで、Webカメラのように利用することもできるが、メインとなる機能は前述した2つになる。
■主役は携帯電話
まず、外部からの機器コントロールだが、他社製のHDD&DVDビデオレコーダーではPCからのコントロールに重きが置かれているのに対して、ブロードバンドレシーバーではあまりPCが意識されていないのが特徴と言える。もちろん、PCからのコントロールにも可能となっており、ブラウザを使ってブロードバンドレシーバーにアクセスすることで、LAN上のPCから録画予約をしたり、機器の再生や録画などをコントロールすることができるが、このような機能はどちらかというとオマケ的な機能という印象だ。
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PCからのコントロール画面。ブラウザでブロードバンドレシーバーにアクセスすることで各種操作が可能。リモコンのようにボタンで機器を操作したり、録画予約(EPGやGコードは未対応)を行なうことができる |
では、何を使って機器をコントロールするのかというと、携帯電話を利用することになる。NTTドコモのiモードやauのEZweb、J-フォンのJ-スカイなどに対応した端末(一部利用できない機種もある)を利用することで、EPGを使った予約録画ができたり、機器を直接コントロール(再生や録画など、いわばリモコンのように使える)できるようになっている。
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PCからのコントロール時と同様に、再生や録画など、携帯電話を使ってリモコンのように機器を操作することができる |
携帯電話のサイトで提供されているEPGを利用して、遠隔地から録画予約を行なうことも可能。うっかり録画予約を忘れたという場合でも安心 |
しくみ的には、携帯電話からテレビ番組情報のサイトにアクセス。ここでEPGによる予約録画や機器操作のメニューを選ぶと、このサーバーをゲートウェイのように利用して、自宅のブロードバンドレシーバーに接続されることになる。携帯電話のメール機能を使って機器をコントロールするHDD&DVDビデオレコーダーも存在するが、この製品はメールではなく、携帯電話の画面から直接、機器をコントロールできるのが特徴だ。このため、リアルタイムに録画予約を行なうことができる。
一方、番組タイトルの取得だが(DMR-E80Hに対応)、これは文字通り番組タイトルしか取得できない。ネットワークに対応しているのだから、ブロードバンドレシーバー経由でインターネットからEPG情報を取得、そこから録画予約などができそうなものだが、これは不可能となる。本体を直接操作する場合、録画予約はあくまでもGコード(もしくは手動設定)を利用する必要があり、これによって予約した番組のタイトルをインターネット経由で取得して登録できるにすぎない。どうしてもEPGを使いたいのであれば、前述したように携帯電話を利用するしかない。ネットワークの使い方としては、かなり独特だ。
このように携帯電話が主役となっている点は、賛否両論があるかもしれない。ただし、PCがすぐに使える環境と携帯電話がすぐに使える環境のどちらが多いのかと言えば、やはり後者だ。より多くのユーザーに使ってもらうことを考えれば、こちらに重きを置くのも当然だろう。個人的には、PCからの録画時や本体での録画時にEPGが使えれば、どれほど便利だろうかと感じてしまうが、携帯電話を使った新しいHDD&DVDビデオレコーダーの使い方が提案されているあたりは、やはり高く評価したいところだ。
■利用環境は比較的選ばない
このようなブロードバンドレシーバーを利用するにあたって気になるのはインターネットへの接続環境だろう。携帯電話から機器をコントロールできるということは、インターネット経由で、外部からブロードバンドレシーバーに接続できなければならない。このような場合、NATをどう越えるか、ファイアウォールをどう越えるかが問題になることが多い。
しかし、筆者がテストした限りでは、比較的、環境に左右されないことがわかった。ユーザー側でルータのポートを開けておくことやポートフォワードを設定しておく必要などもなく、基本的にはつなぐだけで外部からのアクセスが可能だった。
ブロードバンドレシーバー自体はUniversal Plug and Play(UPnP)対応機器と同様、PCのマイネットワークなどにもアイコンが表示されるため、一見、UPnPでポートのコントロールを行っていると見える。しかし、試しにUPnPのON/OFFができるルータでOFFにした状態で接続してみたが、これでも外部からブロードバンドレシーバーにアクセスできたうえ、UPnPに対応していないルータを利用した場合も問題なく接続できた。また、ルータ側でSPIなどのファイアウォール機能をON/OFFした状態でも接続できるかを試してみたが、設定にかかわらず問題なく接続できた。もちろん、テストしたのは限られた環境であるため、中には接続できないケースもあるかもしれないが、実質的にはほとんどの環境で問題なく利用できそうだ。
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マイネットワークからブロードバンドレシーバーを参照可能。設定ページなどもここから表示することが可能。おそらく通信時にもUPnPを利用したポートコントロールも行なっていると予想される |
正直なところ、一体、どのようなしくみで外部から接続しているのかがわかりにくい。ブロードバンドレシーバーのサポート情報ページによると、ファイアウォール環境下では利用できない旨の記載があり、その場合の対処方法(ファイアウォール機能をOFFにするなどの方法)が記載されているので、何らかの方法でポートをコントロールしているはずなのだが、その具体的な方法は不明だ。また、実際の接続にどのポートを利用しているのかも、同ページにセキュリティの関係上、一切回答しないとの記載があり、まったく明らかにされていない。
もちろん、ほとんどの環境で利用可能であれば、実質的にはそれで問題ないかもしれない。また、セキュリティの関係上、利用するポートを公開しないという姿勢も理解できないことはない。しかしながら、どのようなしくみで、どのポートを使うのかが、まったくユーザーにわからないという状況が本当に正しいのかは疑問だ。このあたりは、可能な限りの情報を公開してほしいところだ。
■今後に期待
このように、携帯電話をメインと考えれば、ブロードバンドレシーバーによってもたらされるメリットは大きいと言える。外出先から予約録画ができることはもちろん、家にいる場合でも手元の携帯電話で手軽に機器をコントロールできるのは、通信料金がかかるが、やはり便利だ。
また、赤外線通信機能を搭載した携帯電話を利用することで、EPGサイトから番組情報を取得し、赤外線経由でHDD&DVDビデオレコーダーに予約録画をする携帯電話用のアプリケーションなども発表されており、携帯電話を使った機器のコントロールというのが一般化しそうな展開になりつつある。
ただし、筆者のようにPCをメインに使うユーザーにとっては、やはりPC関連の機能が弱いという印象が否めない。5月末には、PCからもインターネット上のテレビ番組情報サイト「アイラテ」経由でブロードバンドレシーバーの操作が可能になる予定だが、PCから利用した場合、EPGは利用できない模様だ。このあたりのサービスが充実してくれば、さらに面白くなるはずなので、結論としては、やはり今後に期待したいというところになりそうだ。現段階で急いで購入する必要はなく、今後のサービス動向を見ながら、必要になった時点で購入すればいいだろう。
(2003/05/06 清水理史)
□関連記事:松下、ブロードバンド回線を介して録画予約を可能にするレシーバー
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/805.html
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