昨年末、ソーテックとの共同開発で話題となったメルコのネットワークメディアレシーバー Play@TV(PC-MP1000)。PCに保存されているMPEG-2などの映像やMP3などの音楽、画像などをネットワーク経由で家庭用テレビで再生できる機器だ。発売からしばらく時間が経過しているが、価格が下がり、値頃感も出てきたので、今回あらためてテストしてみることにした。
■家電にするか? それともPCにするか?
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ネットワークメディアプレーヤー Play@TV(PC-MP1000) |
現状、HDDやDVDの利用を前提としたテレビ録画環境には、2通りのアプローチが存在する。家庭用のHDD&DVDビデオレコーダーに代表される家電ベースのアプローチ、そしてテレビ機能を搭載したPCに代表されるPCベースのアプローチだ。どちらもテレビ番組をHDDやDVDに録画するという点においては同じだが、それを見るための方法に違いがある。PCベースのアプローチはあくまでも録画した番組を再生するのはPCとなるが、家電ベースのアプローチでは家庭用のテレビとなる。
この違いは、一見、わずかなもののように思えるが、実際にはライフスタイルにも大きく影響する。筆者のように生活の大半をPCの前で過ごすような人であればPCベースのアプローチが適していると言えるが、そうではない人にとってはやはり家庭用テレビを利用する家電ベースのアプローチの方がしっくりとくる。どちらが優れているとは一概に言い切れないのだが、実際の利用シーンを考えても後者の方が一般的には便利なのだろう。
では、PCベースのテレビ録画環境は、この先も一般的でないままなのかというと、どうやらそうでもなさそうだ。最近では、単純にPCでテレビが再生できるだけでなく、ネットワーク経由で家庭用のテレビでもPCに録画した映像を再生できる環境が整いつつある。これまで、あくまでもPCはPC、家電は家電と、両者とも閉じた世界で発展してきたのだが、最近になって、この垣根が取り払われつつあるわけだ。その代表とも言えるのが、今回取り上げるメルコの「Play@TV」だ。
本製品は、いわゆるネットワークメディアレシーバーに分類される製品となる。基本的には家庭用のテレビに接続して利用する機器となるのだが、本体にネットワークインターフェイスを備えており、PCに保存されている各種メディアをネットワーク経由で再生できるようになっている。いわばPCと家電の橋渡しをするわけだ。現状、PCベースのテレビ環境を利用しているユーザーが、その利用範囲を家庭用のテレビにまで広げたいと思っている場合に最適な製品と言えるだろう。
■利用環境やメディアを選ばない
このようなPlay@TVと同様の製品としては、ソニーの「ルームリンク」が存在するが、本製品はルームリンクとは比較にならないほど汎用性が高いのが特徴となる。
まず、第一に利用環境を選ばない。前述したソニーのルームリンクは同社の「Giga Pocket」搭載バイオと組み合わせて利用するのが前提条件となっており、他のPCでは専用ソフトウェアが組み込まれていないため利用できない。これに対して、Play@TVは、使用環境(Windows XP SP1を搭載したPentium4 2GHz以上、メモリ256MB搭載のPC)さえ満たしていれば、基本的にどのようなPCでも利用可能だ。もちろん、ルームリンクはVAIOシリーズを前提としているため、それだけ機種に特化した使いやすさを備えているが、いくら使いやすくても利用環境が用意できなければ使いたくても使えない。この点を考えると、Play@TVの汎用性の高さは魅力だろう。
また、利用するネットワーク環境も複数から選択可能になっている。本体には有線LAN用の10BASE-Tコネクタに加え、PCカードスロットを装備。IEEE 802.11bの無線LANカードを装着することが可能となっている。これにより、有線LAN環境でも無線LAN環境でも利用可能となるわけだ。PCが設置してある場所とPlay@TVとテレビがある場所が近いとは限らないので、無線LANによる接続が可能な点は高く評価したいところだ。なお、対応する無線LANカードはIEEE 802.11bに対応した同社のWLI-PCM-L11、WLI-PCM-L11G、WLI-PCM-L11GPのみとなる。
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背面には10BASE-TコネクタとPCカードスロットを装備。対応する無線LANカードを装着すればIEEE 802.11bでの無線LAN環境でも利用可能 |
さらには、対応するメディアファイルが多彩な点も特徴と言える。映像ではMPEG-1、MEPG-2に加え、WMVやDivXまでもサポートしており、MP3やWMA、WAVなどの音楽ファイル、JPEG、BMPなどの画像ファイルもサポートしている。正直、DivXまでサポートしているのは驚いた。
実際、エルザジャパン製の「EX-VISION 500TV」と付属の「bitcast.TV」を利用して、MPEG-2、WMV(Windows Media 9形式)にてテレビ番組を録画し、これをPlay@TVで再生してみたが、問題なく映像を再生することができた。また、あらかじめCにコーデックをインストールしておく必要があるが、DivXにてエンコードした映像も問題なく再生できた。
もちろん、すべての環境でテストしたわけではないので断言はできないが、他社製のテレビチューナー&エンコーダーボードなどを利用した場合であっても、汎用的な形式が利用されている限りはPlay@TVで再生することが可能だろう。ここまで幅広い環境、そしてさまざまなファイル形式をサポートしているのは大きな魅力だ。
■画質はあまり期待できない
肝心の画質だが、これはあまり期待しない方がいいだろう。今回、2Mbpsと6.5Mbpsのビットレートで録画したMPEG-2、700KbpsのDivX、500kbpsのWMVの各ファイルを再生してみたが、どれも画質的にはあまり優れているとは言い難かった。言葉で言い表すのは難しいが、印象としては、ピントがあまいというか、細部がぼやけたような感じの画質だ。
これは、Play@TVにて再エンコードが行なわれているためだ。Play@TVでは、前述したIEEE 802.11bの無線LAN環境など、ネットワークの帯域が低い場合でもスムーズに映像が再生できるように、サーバーとなるPCで一旦、映像を再エンコードしてから映像を配信するしくみになっている。具体的には、Play@TVを有線LANで接続した場合は4Mbps以下に、無線LAN(IEEE 802.11b)で接続した場合は2.5Mbps以下に再エンコードされる。
このため、もともと低いビットレートの映像であれば、それなりの画質となるものの、高いビットレートの映像であっても画質は低下してしまうことになる。試しに、8Mbpsのビットレートで録画したテレビ番組をルームリンクとPlay@TVの両方で見比べてみたが、画質は明らかにルームリンクの方が上だった。さすがに8Mbpsの映像ともなると、ルームリンクをIEEE 802.11aで接続しないと話にならないが、画質を求めるなら高速なネットワーク環境+ルームリンクという組み合わせの方が有利だ。
もちろん、Play@TVでは、サーバー側のPCで映像を再エンコードせずに、そのまま配信するという設定も可能だ。しかしながら、Play@TVの場合、利用可能なネットワーク環境が10BASE-T、もしくはIEEE 802.11bと低速なため、低いビットレートの映像でないと、コマ送りのようになってまともに再生できない。再エンコードしない方が、画質的にはシャープな印象で美しいが、映像のスムーズさという点ではやはり再エンコードした方が有利だ。
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サーバー側の設定次第では、映像を再エンコードせずダイレクトにPlay@TVに転送することも可能。しかし、ネットワークの伝送速度が遅いため、高いビットレートの映像はまともに再生できない |
なお、再エンコードして配信する場合、サーバーの役割を担うPCには非常に高い負荷がかかる点にも注意したい。今回のテストでは、Pentium4 2GHz、メモリ512MBを搭載したPCをサーバーとしたが、Play@TVで映像を配信している最中はCPUの使用率が70%を下回ることがなかった。普段利用しているPCをサーバーとして利用することも可能だが、常用するならサーバー専用のPCを1台用意した方がいいだろう。
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サーバーには高い負荷がかかる。映像の再生中に他の操作を行なうのは避けた方がいいだろう。できればサーバー専用のPCを用意するのが無難 |
■ビデオフォルダの設定変更を推奨
このほか、操作性に関しても良好だ。テレビに接続したPlay@TVは付属のリモコンを使って操作できるようになっているのだが、こちらはリモコンのボタン配置や画面構成などが良くできており、直感的でわかりやすい。
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Play@TVの操作画面。シンプルでわかりやすい画面構成になっている。直感的な操作ができるあたりは高く評価できる |
一方、サーバー側の操作も設定次第でだいぶ良好になる。サーバーに設定するPCには、Play@TVのサーバーソフトウェアに加え、メディアオーガナイザーと呼ばれるソフトウェアをインストールしておく必要があるのだが、通常はディアオーガナイザーを使ってPC上のファイルを登録しないと、Play@TVからサーバー上のファイルを認識することができない。
もちろん、手動で登録するのが面倒でなければそのままでも良いのだが、テレビ番組のようにテレビチューナー&エンコーダーカードで自動的に録画した映像は、登録しなくても見られるのが理想だ。Play@TVでは、このような操作にも対応しており、サーバーソフト側でビデオフォルダの設定を変更しておくと、ハードディスクに保存された映像ファイルを自動的にPlay@TV側で認識させることが可能となる。テレビ録画ソフトなどの保存先をビデオフォルダとして設定しておくといいだろう。
ただし、この設定に関する記述がマニュアルの後半にあるために、非常に気が付きにくい。この設定さえしておけば、かなり便利に利用できるので、できれば、この設定に関して、マニュアルのわかりやすい場所で触れていただくか、インストーラーなどで、この設定に関して一言でも触れていただけるとわかりやすい。このあたりはぜひ改善してほしいところだ。
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Play@TVで再生したいメディアは、あらかじめメディアオーガナイザーに登録しておく必要がある。日常的に録画されたテレビ番組を見るケースでは、あらかじめビデオフォルダを変更しておくとよいだろう |
■コストパフォーマンスを考えればお買得
このように、Play@TVは、全体的には良くできた製品だと言える。特に、さまざまな利用環境に柔軟に対応できる点、実に多彩なメディアに対応している点は高く評価したい。画質も高ビットレートのMPEG-2再生には不向きだが、DivXのような低ビットレートの映像を再生する限りは、さほど気にならないだろう。本体のみで2万円前後、無線LANカードを一緒に購入しても2万円数千円であることを考えれば、この程度の投資で、PCと家庭用テレビの連携が可能になるメリットは大きい。PCのテレビ環境を家庭用のテレビまで利用範囲を広げたい場合は、購入しても損はない製品と言えるだろう。
(2003/05/27 清水理史)
□製品情報(ネットワークメディアプレーヤー Play@TV PC-MP1000)
http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/catalog/item/p/pc-mp1000/
□関連記事:メルコ、LAN経由でテレビへ映像を送信する「Play@TV」の価格改定
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/1284.html
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