今年の2月末、ようやく筆者宅にもアッカ・ネットワークスのADSL(8Mbps)が開通した。既設のフレッツ・ADSL(1.5Mbps)、イー・アクセス(8Mbps)に加え、都合3本目のADSL回線だ。これでメジャーなADSLのうち3回線を同一環境でテストする環境が整ったことになる。他事業者との違いなどを見ながら、アッカ・ネットワークスのサービスの使い心地をレポートしていこう。
■開通までの長き道のり
今回のアッカ・ネットワークスの回線(実際にはSo-net ADSL)が開通するまでの道のりは、非常に長期にわたるものだった。申込みをしたのが昨年の11月末。実際の開通が2月末だったので、都合3カ月もかかったことになる。タイプ2での申込みであったため、回線の割り当てに多少時間がかかるのは理解できるが、それでも3カ月というのは長い道のりだった。
しかし、これにはカラクリがある。昨年末と言えば、コロケーションの問題が大々的に取り上げられた時期だ。Yahoo! BBが大量にコロケーションを予約してしまったおかげで、他事業者がNTTから回線を割り当てられなかったのが、ちょうどこの時期にあたる。つまり、筆者の場合もこの影響を受けた可能性がある。回線の割り当てができず、開通までに時間がかかってしまったわけだ。
インターネット上の掲示板などを眺めていると、同様に開通までに長期間待っているユーザーも多いようだが、この問題はもう少し時間が経てば改善されるはずなので、もうしばらく辛抱すべきだろう。すでに報道されているように、Yahoo! BBは160万回線分のコロケーションスペースを解放する予定だ。これが順調に進めば、開通までの期間も改善されてくるはずだ。今回の一件は、業界全体の利益を無視した行為が、いかにユーザーに不利益をもたらすのかといういい例と言えるだろう。
■安定性、スピードは文句ナシ
さて、開通までに期間がかかったものの、いざ開通してみると、その安定性、スピードは非常に満足のいくものであった。筆者宅は最寄りのNTT局からの距離が2.5km前後と遠いため、あまりADSLにとって良い環境とは言えないのだが、それでもリンクアップ速度で2.3Mbps前後、FTPによる実測で1.9Mbps程度のスループットは確保できており、回線の切断も一度もなく、非常に安定している。
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筆者宅での回線状況。局からの距離が遠いためリンクアップ速度は2.3Mbps程度となるが、回線の切断などは一度も発生せず、非常に安定している。 |
同じ8MbpsのADSLとしては、すでにイー・アクセスの回線を敷設済みだが、こちらは非常に回線状況が良いときには2.5Mbps前後でリンクアップするものの、回線の切断が1日に何度も繰り返されるなど安定していない状況にあり、まれに64kbpsや96kbpsといった速度でリンクアップすることも珍しくない。もちろん、これはイー・アクセスが悪いのではなく、どうやら局から自宅までの回線が何らかのノイズの影響を受けていると考えられるのだが、幸いにして今回のアッカ・ネットワークスで使う回線ではこのようなトラブルは今のところ発生していない。
ADSLを敷設後、速度の低下や切断などに悩まされているユーザーも少なくないようだが、筆者宅の例を考えると、あきらめずに収容替えなどの対策をしてみるのも手だろう。もちろん、収容替えですべてのケースが改善するとは言えないが、筆者宅のように同じ環境でも回線の経路や事業者の違いによって安定度やスピードに差があるのは事実だ。家庭内の配線状況の改善やノイズ対策をしっかりと行なうのはもちろんだが、時にはこのような思い切った対策が吉と出る場合もある。
■あまりにもマニアックなADSLモデムに脱帽
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アッカ・ネットワークスが配布している富士通製のルータータイプADSLモデム。ADSL回線の状況を細かく表示できるなど、かなりマニアックな仕様となっている。 |
さて、アッカのADSLを導入して、はじめに驚いたのは事業者から提供されるルータータイプのADSLモデムの仕様だ。アッカでは富士通製の「FC3521RA1」をユーザーに提供しているが、このモデムは非常にマニアックな仕様となっており、ADSL回線の状況を非常に詳細に表示することが可能となっている。
たとえば、ADSL回線状態一覧では、リンクアップの速度はもちろんのこと、SN比、線路損失、そして局から自宅までの推定伝送距離などを確認可能だ。また、ADSL信号によって伝送される各キャリアをキャリアチャート(いわゆるビットマップ)としてグラフ表示する機能などもあり、どの周波数帯のノイズの影響を受けているかなどを判断することもできる。正直、ここまでの機能はユーザーに必要ないとも言えるが、ADSLの安定性に欠けるなどのトラブルの場合の参考にはなる。
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キャリアチャートでは、ISDNやAMラジオのノイズなどを参考として表示することも可能。このグラフを参照すれば、AMラジオなどからの干渉があるかを判断できる。筆者宅では、周波数が高くなるに従って順調に信号が減衰しているので単純に距離によって速度が落ちているようだ。 |
ちなみに、このモデムは2月27日にファームウェアが最新版のR2.10.b11にアップデートされており、昨年末にリリースされたDMZ設定時のハングアップの問題の解消や機能の強化が図られている。具体的には、キャリアチャートでFEXT(Far End CrossTalk=遠端漏話)とNEXT(Near End CrossTalk=近端漏話)の両方の状態を表示可能になったり、ADSLモデムの動作モードをFBM(Fext BitMap方式)に切り替えることなどが可能となった。また、正式にはアナウンスされていないが、ポートをきちんと開けることでPPTPも通るように改善されているという。
興味深いのは、FBMモードへの切り替えが可能になった点だろう。本連載でも以前に解説したが、通常のAnnex CではDBM(Dual BitMap方式)を利用し、FEXTとNEXTの両方のビットマップを考慮しながら、それぞれを切り替えながら通信する。このため、ISDNの干渉を受けた場合でも比較的高速な通信ができるわけだ。しかし、ISDNからの近端漏話があまりにも強い場合、このDBMでは通信の安定性が損なわれてしまう可能性がある。そこで、効果があるのがFBMモードだ。
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FBMモードへの変更はルーターの設定画面から行なう。ISDNなどの近端漏話が激しい場合は、このモードに変更することで安定性の向上が望める。 |
FBMモードでは、NEXT時のISDNの影響が強い場合にはまったくデータを流さず、FEXTの影響が少ない場合のみ通信を行なうことになる。これにより、ISDNなどからの干渉が強い場合などでも安定性を高めることが可能となるわけだ。FBMモードの場合、最大速度は下り3424kbps、上り416kbpsとなってしまうが、それでも安定しないよりはマシだろう。
実際、筆者宅では回線が安定しているため、このモードが果たしてどれほどの効果があるのかは不明だが、トラブルを抱えるユーザーに対してさまざまな対策を提供するという姿勢は高く評価したい。
■全体的な満足度は高いサービス
このようにアッカ・ネットワークスのサービスは、こと筆者の環境に限定すれば、全体的な満足度の高いサービスだと言える。もちろん、回線速度や安定度はユーザーの環境に左右されるため、それだけでサービス全体を単純に判断することはできないが、回線を敷設済みのユーザーに対して、さまざまなソリューションを提供する姿勢、トラブルなどもきちんと報告する姿勢は高く評価できる。
現状、ADSLはサービスが展開されたばかりということもあり、各事業者とも新たな顧客の獲得に力を注いでいるが、今後は既存のユーザーの満足度をいかに高めるかが生き残っていく上でのポイントになることは間違いない。そういう意味では、今回のアッカ・ネットワークスはもちろん、他の事業者の動向にも注目したいところだ。
(2002/03/05 清水理史)
□アッカ・ネットワークス
http://www.acca.ne.jp/
□関連記事「アッカ、8M対応ADSLモデムのハングアップを解消したファームウェア」
http://bb.watch.impress.co.jp/news/2002/02/28/acca.htm
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