■ ドメインとActive Directoryって何?
前回、「ワークグループ(Workgroup)」をご紹介しましたが、今回はその後継となる「ドメイン(Domain)」と「Active Directory」について取り上げていきます。
端的に説明すると、ドメインとはワークグループを集中管理できる仕組み。Active DirectoryはドメインとDNSを合わせたようなもの、というイメージになります。まずは、ドメインから順に説明していきましょう。
■ ワークグループからドメインへ
前回も触れたとおり、小規模のLANであれば、ワークグループで十分に機能するかと思います。ところが、マシンの台数やユーザー数が増えてくると、マシン台数×ユーザー数の分だけ設定を行なければなりません。
例えば、20台のマシンがあったら、ユーザーが1人増減するごとに20台のマシンを回って登録/削除を行ない、マシンが1台増えたらその都度、全ユーザーの登録作業が余儀なくされます。手間もさることながら、数が増えると間違いが起きやすいのも問題です。従って、何らかの集中管理の仕組みが必要になってきます。
そこで登場するのがドメインです。これは、Windows NT Serverと一緒に登場した新しい概念です。例えば、前回で取り上げたLANの構成を考えてみます。ここで、ドメインを使うには、“petshop”と“birdshop”のためにそれぞれ1台ずつ新しく「ドメインコントローラ」と呼ばれるものを追加します。
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図1:ドメインサーバーを追加
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画像1
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図1で言えば、“petserver”と“birdserver”がそれです。そして、この2台にそれぞれ“petshop”と“birdshop”のドメインコントローラとなるような設定をした上で、dog/cat/turtle/hamsterには“petshop”の、parrot/honeyparrot/finch/javasparrowには“birdshop”のドメインメンバーになるように設定を変えます。そして最後に、petserverにuser_A~user_D、birdserverにuser_E~user_Hのユーザー登録をします。
登録作業が終わってドメインとして運用を開始すると、petshopドメインに参加しているマシン上でネットワークを参照した場合、こんな具合(画像1)に見えるはずです。この見え方自体はワークグループと違いはないのですが、異なるのはもう1つのbirdshopドメインのマシンが見えなくなることです。
あくまでも自分の所属するドメインのメンバー同士でのみアクセスが可能になるわけで、外部から不用意に侵入されなくなるのは、セキュリティ面でも好ましいと考えられます。また、管理面でも、ドメインコントローラでマシン/ユーザーの追加や削除を一括して行なえるようになり、利便性が向上しました。
■ ドメインからActive Directoryへ
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画像2
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そういうわけでオフィスなどではドメインを利用する、という流れはできたわけですが、より大規模になるとドメインの利用でも不便な点が出てきました。例えば、petshopの商売が盛んで、会社が各地に支店を出したとします。そうすると、全支店のマシンを1カ所のドメインコントローラで管理するのは通信費もかかるし、支店のマシンやユーザーを本店で管理するのは不便です。かといって、支店ごとにドメインを分けると、今度はお互いのデータ移動がやりにくくなってしまいます。
実はドメインには“信頼関係”という機能があります。先の例で言えば、PetshopドメインとBirdshopドメインがお互いに信頼関係を結べば、両ドメインに所属するマシンが自由にアクセスできるようになります(画像2)。
ただ、この信頼関係を使っても、多数のドメインを相互に接続するのは大変です。本社(Headquater)以外の支店が、東京(Tokyo)、大阪(Osaka)、名古屋(Nagoya)にあった場合、以下のように合計6つの信頼関係を結ぶ必要があります。
・Headquater-Tokyo
・Headquater-Osaka
・Headquater-Nagoya
・Tokyo-Osaka
・Tokyo-Nagoya
・Osaka-Nagoya
もう1つは、前回でも少し触れたインターネットにおけるドメインの取り扱いがあります。例えば、petserver上でIISを使って社内管理システムを立ち上げたとします。この場合、petserver上では「http://localhost/」を入力することでIISにアクセスできますが、他のドメインメンバーは「http://petserver/」と入力してもアクセスできません。というのも、“petserver”という名前は、Windowsが勝手に管理しているもので、これとIPアドレスが結びついていないからです。
これらを解決するのが、Windows 2000 Serverとともに導入された「Active Directory」です。Active Directoryは、上述の2問題を解決するとともに、「Directory Service」と呼ばれる機能が追加されています。ちなみにActive Directoryという名称自体も、このDirectory Serviceを統合したことに由来するようです。
Active Directoryでは、まずドメインの親子関係が導入されました(図2)。先の例で言えば、親にあたる本店がPetshopというドメインの場合に、東京/大阪/名古屋の各支店を子ドメインとして登録すると、親子はもとより子同士でも自由にアクセスできるようになります。また、信頼関係も引き続きサポートされているので、同じく親子関係を構築したBirdshopと信頼関係を構築した場合、両方のドメインを自由にアクセスできるようになります。
2点目に関しては、ドメインコントローラがDNSサーバー機能を兼ねる形でこれを解決しました。これによって、Windows Network上にあるドメインと、Internet上にあるドメインが一括して管理できるようになり、「http://petserver/」とするだけで、petserver上で動くIISにアクセスできるようになっています。
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図2:ドメインの親子関係
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ちなみにDirectory Serviceとは、さまざまなリソースを検索・識別するためのサービスです。NTTの104(電話番号案内)を想像していただけると理解が早いかもしれません。Active Directoryの場合、ドメインへのユーザー登録時に必要な情報(例えば、社員番号や内線番号・電子メールアドレスなど)を登録しておけば、これをあとから自由に検索できる機能なども提供されています。
小規模なオフィスではあまり必要ないでしょうが、大規模なオフィスでは有用になってきます。こうしたことからもわかる通り、ドメインやActive Directoryはビジネスでの利用を前提としたものになっています。Windows XPやWindows VistaのHome Editionでは、ドメインへの参加機能が省略されているのはこうした点が背景にあると思われ、実際の所家庭で使用する分にはこれで問題はないでしょう。
2007/03/19 10:54
槻ノ木 隆 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。(イラスト:Mikebow) |
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