■ 加入電話ライトサービスの実施でADSL導入を決意
筆者は現在のライター専業になったのが今年の始め。そのころは、フレッツISDNによる常時接続環境ではあったものの、さすがにブロードバンドというには程遠い64kbps接続を続けていた。もっとも、それまではサイズの大きなデータをやりとりすることも少なく、実際に困らなかったのも事実。ただライターという職業は、とかく情報のやり取りの多い仕事である。例えば十数MBのドライバをダウンロードしたり、巨大なファイルを送信したり、といった作業が増え、そうしたことに30分以上も時間を取られることが無駄に感じ始めた。そこで、今年4月、ついにADSLの導入を決意したのである。
もっとも、それまで高速回線の導入を考えたことがなかったわけではない。しかし契約していた回線のが「INS64ライト」だったためADSL導入には二の足を踏んでいたのだ。「INS64ライト」は施設設置負担金(7万2000円、いわゆる加入権)を必要としない代わりに、月々の基本料金が640円高くなるISDNサービスだ。この加入権を必要としないサービスはISDNのサービスのみで、アナログ回線では行なわれていなかった。つまり、ADSL回線を導入しようと思うと、加入権の購入という大きな投資が必要になったのだ。ギリギリ生活を送る者としては「正直痛いっす、その出費」なわけで、このような大きな投資は避けたかったわけだ。
そこに光明が射したのが今年の2月。ようやくアナログ回線でも加入権不要の「加入電話・ライトプラン」サービスが実施されたのだ(詳しくはこちら)。筆者としては、これにより、ついにADSL導入にGOサインが出た状態となった。
もともとプロバイダーにODNを利用していたこともあって、キャリアはJ-DSLに決めていた。4年ほど使っているODNを解約する気がなく、どうせなら契約プランの変更が簡単なほうが良かったからだ。そこで、いざJ-DSLに加入した場合、ISDNのときと比べてどの程度月々の出費に変化があるかを計算してみると、以下のような結果になった。
●ISDNの場合
基本料(3470円)+フレッツISDN代(2800円)+ISP代(1950円)=8220円
●ADSLの場合
基本料(2390円)+J-DSL&ISP代(2880円)+NTT回線使用料(173円)+モデムレンタル代(500円)=5943円
……時は金なりというし、回線が速くなったことで仕事がはかどるなら多少の出費増はいたしかたなし、と思っていたのが、時だけでなく、純粋にお金も節約できるということに、このとき初めて気がついたのである。
■ ADSL回線を導入、しかし……
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内房・外房線の先に見えるNTT千葉南局。高圧電線が及ぼす影響なども気にはなっている
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というわけで、いよいよ申し込み。これまでのODNベーシックプランからJ-DSLプランへの変更を申請し、サービス開始可能時期を確認。NTTに回線の切り替えを依頼するなどの諸手続きを済ませ、いよいよ5月11日にADSLが開通したのである。ちなみに、ADSLモデムはODNからのレンタル品。届いたモデムは住友電気工業の「Mega BitGear TE4121C」で、AnnexC G.dmt/lite共に対応するモデムだ。J-DSLの場合は、8Mbpsサービス地域であれば、G.dmt対応モデムを使うと自動的に8Mbpsサービスとなる。
「ではでは」とばかりに、期待に胸を膨らませて、8M ADSLでのインターネットを試してみた。……が、確かにいくぶん速くは感じるものの、劇的な変化は感じられない……。試しに計測サイトで確認してみると、下のような結果に。
【参考:BNRスピードテスト】
ダウンロード速度 |
WebARENA | 104.016kbps(0.104Mbps) 13.37KB/sec |
PLALA | 103.096kbps(0.103Mbps) 13.18KB/sec |
ASAHI-Net | 66.066kbps(0.066Mbps) 8.45KB/sec |
推定転送速度 | 104.016kbps(0.104Mbps) 13.37KB/sec |
測定サイト:BNRスピードテスト 回線速度計測ページ
URL: http://www.musen-lan.com/speed/
もちろん、ISDN回線での計測結果ではない。実際、ほんのちょっとだけ速くなってるし……。しかし笑い話のネタに使えるという以外、メリットが感じられない結果ではある。
ちなみに、筆者が住むアパートの立地は千葉市の南方、市原市との境まで約1kmの場所だ。回線はNTT千葉南局から、JR内房線・外房線を跨いで約3kmの距離である。たしかに微妙な距離なのだが、それにしても110kbpsってのはないだろう。
ただ、J-DSLのサポートダイヤルに電話して対処してもらう前に、この状況を逆手に取って、いろいろ試してみようという「ポジティブシンキング」に切り替える事にした。とくに、巷では「あまり役に立たない」と言われる、ノイズ対策グッズを試してみてみたいところだ。ちなみに、ノイズ対策グッズ以外にも、以下のオーソドックスな対策はもちろん試してみた。- MTU、RWINをいじる
- ADSLモデムをテレビから離す
- ADSLモデムのACアダプタを挿しているコンセントを変える
効果があれば回線速度は上がり、話のネタにもなりで一石二鳥……の目論見は当然のように敗れ去り、110K ADSLの看板を降ろすこともままならないまま、1カ月半が経過したのである。
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スプリッタ、フェライトコア付きツイストケーブル、ノイズ防止フィルターなどなど、投資額は4860円也
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壁-ADSLモデム間は1m。コンセントもADSLモデム以外には使っていない。ノイズに隙を与えない完璧な接続だと思うのだが……
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■ J-DSLサポートに電話、やっぱりサポート外ですよね……
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Jサ氏が確認してほしいといったモデムの設定画面。ただ、コレって実効値じゃないような気がするのだが
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「笑い話に使えるから」という理由がすべてではないのだが、1カ月半ほど110kbpsのままで使っていたが、この話で笑ってくれる人もとうとういなくなった6月末。ようやくJ-DSLのサポートに電話をかけてみたのである。
主目的は回線調整。J-DSLのFAQにも書かれているが、収容されている回線を別の回線に切り替えてもらったり、ブリッジタップと呼ばれる回線終端装置を外してノイズの干渉を減らすためのもの。料金が発生するが、このさい構わない。
というわけで、以下はJ-DSLサポートとの会話を交えて紹介しよう。(役に立つかは微妙だが)ケーススタディのつもりで見ていただければ幸いだ。
筆者 | 「回線速度が110kbpsしか出ないんですが……」 |
J-DSLサポート | 「その速度は、どこで確認されましたか?」 |
筆者 | 「(使った計測サイトを羅列)です」 |
J-DSLサポート | 「それは参考にはなりません。レンタルしているADSLモデムで確認してください。今から手順を紹介します」 |
筆者 | 「えっと、うちはコレガのルーターを介してPPPoE接続してるんで、ADSLモデムの設定画面はすぐには呼び出せないようになってるんですが……」 |
J-DSLサポート | 「それじゃあサポートはできないです」 |
そう、J-DSLはPPPoAの接続のみサポートで、PPPoEはサポート外なのである(注)。が、それも試して全然変わらないことは確認済み。メーカーからすれば困ったお客さんだが、ふだん使っているPPPoE接続の状態で電話しただけである。 |
筆者 | 「PPPoAでも同じ状況だったんですけど。というか、料金が発生するのは承知のうえで、回線調整をお願いしたいんです」 |
J-DSLサポート | 「それも出来ません」 |
うっ。しかし、こちらもここで引き下がるわけにはいかない。 |
筆者 | 「どういった理由で回線調整すらNGなんですか?」 |
と、言ってみる。ここで2分ほど保留。 |
J-DSLサポート | 「では、特別に情報開示を行ないますので、1~2週間お待ちいただけますか?」 |
とりあえず一歩前進だ。ひとまずこの対応には感謝して電話を終了、連絡を待つ身となった。
【注】
ただし、PPPoEで接続するための設定方法などはJ-DSLのWebページで情報提供されており参考にさせてもらった(設定方法のページはこちら)。
■突然のコールバック……お寒い結末
今はただ待つのみとなったわけだが、先ほどの電話から30分ほどして、突然電話が。さきほど会話したJ-DSLサポート氏である。
J-DSLサポート | 「先ほどの件ですが、設定を確認したいので、5分ほど回線を止めてもいいですか?」 |
とのこと。何の設定かは不明だったが、とりあえず了解し、回線復帰後に再度電話をくれることになった。
……そして5分後。
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J-DSLサポート | 「いま接続を試せるでしょうか? たぶん速くなってると思うんですが……」 |
試してみると、確かに速くなっている。このときのBNRスピードテストの結果は、約1.2Mbps。 |
筆者 | 「確かに速くなってますねぇ。計測サイトで1.2Mぐらい出てます」 |
J-DSLサポート | 「だから、それは参考にならないといったでしょう。ちなみに、こちらで確認すると、お客様のリンクは1.5Mフルで出てます。」 |
筆者 | 「(1.5Mでフル?)あの~、8M対応のモデムをレンタルしてて、サービス地域だから、8Mがフルじゃないんですか?」 |
J-DSLサポート | 「お客様のところは8Mではリンクできなかったので、1.5Mで接続してます。」 |
うっ……。しかし、こればかりは仕方ない。しかし、気になるのは「何をしたのか?」。 |
J-DSLサポート | 「お客様に今割り当てているポートですが、以前に使われた方は非常に遠い方で、リンクを確立するために速度を絞った設定をしていたんです。その設定が残っていたので、いま直しました。」 |
冷静に考えれば、「1カ月半はJ-DSL側の設定のミスで110kbpsという低速回線を使っていた。しかも買ったノイズ対策グッズは、まるっきり無駄な出費」なのだが、速度が上がって気分は上々だったので感謝感激。今思えば、Jサ氏はすご~く申し訳なさそうにお詫びを言っていた気がする……。
ひとまず落着したので、情報開示を取り下げて欲しいといわれ、うかれ気分の筆者はもちろん快諾。個人的には大満足の対応をして戴いたのである。
ちなみに、その後も接続は安定、速度も1.05M~1.25Mbps程度で安定している。以下に、参考までBNRスピードテストの結果を挙げておこう。
【参考:BNRスピードテスト】
ダウンロード速度 |
WebARENA | 1141.236kbps(1.141Mbps) 145.98KB/sec |
PLALA | 1090.76kbps(0.1.09Mbps) 139.63KB/sec |
ASAHI-Net | 1124.366kbps(1.124Mbps) 143.89KB/sec |
推定転送速度 | 1141.236kbps(1.141Mbps) 145.98KB/sec |
アップロード速度 |
データ転送速度 | 430.22kbps (53.77KB/sec) |
転送データ容量 | 800KB |
転送時間 | 14.876秒 |
測定サイト:BNRスピードテスト 回線速度計測ページ
URL: http://www.musen-lan.com/speed/
今回はサポートに電話したことで、1時間もかけずにあっさり解決したわけだが、このケースはレアなケースと考えていいだろう。ただ、困ったらサポートを頼りにするのは、どんなケースでも同じだと思う。誰かさんのように「笑いが取れる」などと考えずに、早急に電話することをお勧めしたい。
ただ、個人的に少し心配なのは今後だ。J-DSLはこの6月をもってイー・アクセスに営業を譲渡しており(詳しくはこちら)、J-DSLサービスの申し込み受付も終了している。サポートはこれまで通りとのことだが、J-DSLとは違い、ISPと回線業者が異なることになるので、今回のような迅速な対処が可能かどうかが気になるところ。できる限り迅速で、満足度の高いサポートを今後も期待したい。
■参考データ
居住地区 | 千葉県千葉市 |
線路距離長 | 3000m |
伝送損失 | 39dB |
接続事業者 | J-DSL(加入当時、現在はイー・アクセスに営業譲渡済み) |
プロバイダ | ODN |
スループット | 1.05~1.25Mbps |
■ URL
J-DSLサービス案内
http://www.odn.ne.jp/infoodn/j-dsl/
ODNホームページ
http://www.odn.ne.jp/
2002/07/25 11:11
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多和田新也 1976年岐阜県出身。某PCメーカーの電話サポートから雑誌編集者を経て、今年からライター業に足を踏み入れたライター1年生。最近のライフワークは、満身創痍で走りつづける愛車のメンテナンス。 |
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