■ 38,000円も高いと感じなかったOCNエコノミー
|
ISDN、OCNエコノミー、CATV、Bフレッツとお世話になっている近所の電柱。回線はすべてここからやってくる。今回、Bフレッツの分岐器がついた
|
筆者が最初にインターネット常時接続としたのは1998年。当時流行のOCNエコノミーを自宅に引き、サーバーを立ち上げた。128kbpsの通信速度でも十分に速かった。16個のIPアドレスを持て余したため、友人のサーバーを2台ほど預かり、なんとも贅沢なインターネットライフを楽しんでいた。
そのときのOCNエコノミーの月額料金は38,000円、いま思えば信じられないくらい高いが、まわりで誰も味わったことのない常時接続と、自分名義の16個のIPアドレスは決して高いと思わなかった。消費税込みで39,900円の料金をクレジットカードで払っていたため、ものすごい勢いでクレジットカードのポイントもたまっていた記憶がある。
ところが、事情で引っ越した後がたいへんだった。引っ越しの際のIPアドレスの移転とサーバーの移転にかなりの手間がかかってしまったことに参ったことに加え、転居先ではスループットが異常に遅い。ファイルのダウンロードをすれば10kbpsほどになることもしばしば。遅いだけならまだしも、メールサーバーとの接続がタイムアウトしてしまうこともあり、分割して誕生したばかりのNTTコミュニケーションズに苦情を入れても何も対策がされなかった。
そんなある日、自分の住んでいる市の市役所のホームページを閲覧してみた。市役所にしては早い表示に驚き、市役所のWebサーバーに対してWindowsのコマンド「tracert」でチェックしてみた。なんと、トレースは一瞬で終了。そんな市役所のWebサーバーのIPアドレスを見てもう一度驚いた。自分がもらっているアドレス空間のすぐ隣なのだ。となると市役所もOCNエコノミーを使い、自分の回線は市役所とシェアされている可能性も高いということだ。市役所の職員たちのインターネットアクセスと、市役所内のWebサーバーへのアクセスとシェアされているのでは、自分が遅いのも当然だ。
すぐにNTT Comにその旨を申し出ると、「逐次改善していきます」といった定型句が帰ってくるばかり。そこで、いよいよOCNエコノミーに見切りを付ける時期と判断した。まず、自分が持っているjpドメインをホスティングサービスに預け、comドメインのほうのDNSサーバーを管理している知り合いの会社2社のDNSサーバーに勝手に設定追加(笑)、使い古したミニノートパソコンをメールサーバーにして別の固定IPのところにそっと置いておくという手法で、サーバーの移設は完了した。これで固定IPがなくても問題ない。
■ いよいよ128kbps超の世界へ
そして、自宅の回線をダイヤルアップにしようかと迷っているところに、ケーブルテレビの営業がやってきた。もちろん、インターネット接続サービスもある。工事費が2万円かかると言われたが、OCNエコノミーのたった半月分だ。迷うことなく契約し、晴れて“ISDNの数倍”という通信速度を手に入れることになる。当時はブロードバンドルータというものは海外からLinksysのものを直輸入するしかなく、OCNエコノミーでもともと使っていたサーバー兼NATゲートウェイの設定変更で代用することにした。そのケーブルテレビ局は「ルータ禁止」が謳われており、ルータの動作はするが“パソコン”をつないでいると自己解釈して利用を開始した。しかし、そのCATV局もたいしたもので、局からDHCPでIPアドレスをもらう際には、指定されたコンピュータ名を送信しないと接続できないのだ。Windowsでは簡単な設定だが、PC-UNIXの設定には苦労した。
ケーブルの導入からしばらくして、日本にもDSLなるものが上陸した。幸いにして、NTT Comの最初の試験提供地域に知り合いのオフィスがあり、そこでOCNの試験サービスを導入してみた。全部で数千円の費用でありながら、/30のIPアドレス空間が自分名義となる破格のサービスだった。申し込みから1カ月ほどで開通し、2000年4月にはADSLユーザーになった。幸いにしてそのオフィスでは規格の512kbpsの上限に近いスループットが出ていたが、距離によって速度が異なったり、つながらない地域もあるということで、デジタルな時代に逆行したサービスという印象を受け、自宅への導入は先送りすることにした。
■ DSLを飛び越えてFTTHか?
それから2年、いよいよ自宅もBフレッツのエリアとなった。しかし、すっかり低価格ボケした筆者には、もはや3万円近い初期費用は出せなかった。どっぷり漬かったケーブルテレビインターネット接続サービスは、支給されたテラヨンのモデムはそのままに、導入時の「ISDNの数倍」(実質800kbpsほど)、「2Mbps」、「8Mbps」と勝手にグレードアップ。通信速度的にも不安はなく、DSLと違ってネットワークの混雑がなければ規格上のスピードが出るという至極当たり前のサービスに不満はなかった。
そんなとき、Bフレッツの導入が伸び悩んでいるというニュースを目にした。世界的にみれば、日本の光ファイバの個人宅への普及は抜きんでているが、それでもNTTは満足しなかったらしい。これは大幅なテコ入れが加えられると考え、工事費についても何か策がとられると確信した。
■ ちょっとだけADSL
|
はじめて使ったADSLモデムはYahoo! BBのトリオモデム。無料だったので無線LANパックも同時申し込み
|
そのとき、ちょっと世間のブロードバンド事情を調べてみた。世の中では、DSLが普及し、無料、無料の文字が躍っている。これはもうケーブルテレビを継続する必要はない。うまく無料サービスを乗り継いでいるうちに、Bフレッツも無料になっていくのではないかという気までしてきた。街頭でモデムならぬメディアコンバーターを配る日も近いのではないかと思えた。
そうなったら契約だ。家のISDN回線はISDNのまま使わないといけない事情があるため、眠らせていた電話加入権を復活させてアナログ電話を開通。同時にYahoo! BB 12Mを申し込んだ。もちろん、無料期間中はBBフォンを使い倒し、電話をかけようものなら、自宅に戻ってかけるという徹底ぶりだった。
しかし、Yahoo! BBは、5Mbpsほどのスループットは出るものの、気づくとモデムのリンクが切れている状態だった。ADSLのリンクが切れているときは、BBフォンも迂回されているが、電話がかかる直前のプププ音では、迂回されたからといって電話を切ることもままならない。それではと裏技を思いついた。
迂回されても、NTT回線から発信できないようにするには、電話機のダイヤル方法を、NTT回線の設定と反対にするのだ。BBフォンモデムはどちらのダイヤル方式でも認識するので、BBフォンの発信はするが、迂回となった場合でも加入回線は反応しないので、BBフォンを安心して無料で使うことができる。
そんな嬉しい無料期間が終わろうとしていたとき、次なるニュースが飛び込んできた。気に入らなければ、Yahoo! BBよりも様々な費用まですべて返金するというプロバイダーが現われたのだ。
[編集部注]
IP電話の場合、一部を除き、対応する通話相手以外は一般電話回線に迂回することを前提としています。通信事業者の指示と異なった設定を行なった場合、緊急通報などができなくなる恐れがあります。IP電話の設定を含め、今回の記事はあくまで1ユーザーの試用事例であり、記事を読んで行なった行為によって生じた損害はBroadband Watch編集部および、メーカー、通信事業者はその責を負いません。
■ 「ごめんね返金」にはほんとうにごめんなさい
DIONがはじめたごめんね返金サポートは、定められた期間内の解約ではすべて返金してくれる。いったんはお金を払わないといけないのでYahoo! BBとはちょっと違うが、Yahoo! BBとは違ってISDNからアナログへの変更費用や、タイプ2で導入した場合でもすべて費用負担してくれる太っ腹なサービスだ。もうひとつのISDN回線もコスト削減のためにアナログに戻そうと思っていたところだ。DIONにISDNからアナログに戻してもらって、さらにADSLが無料で使えるとなると、これは申し込みするしかない。最初から返金目当ての確信犯だ。
ISDNの切り替えもあるため、開通には3週間ほどかかったが、ぎりぎりYahoo! BBの無料期間終了までに開通した。ADSL回線はイー・アクセスのもので、貸与されたNEC製のADSLモデムでは、リンク速度も確認でき上り8Mbps、下り1Mbpsでリンクした。12Mタイプでこの速度だからまあ満足だろう。
Yahoo! BBと違って、勝手に切れてしまっている問題もないため、快適にインターネット接続ができていたが、やはり切れることが判明した。部屋のエアコンを入れるとリンク切断されるのだ。Yahoo! BBのときはエアコンと関係なしに切れていたので切断原因は別のものだ。これでは寒い日にふるえながらインターネットに接続しなければならない。
■ アッカのADSLを導入、メジャーADSL制覇へ
そうしているうちに、フレッツ・ADSLの2カ月無料のニュースが飛び込んできた。しかし、フレッツ・ADSL モアはイー・アクセスのADSLプラスと同じ方式。ならば、残るはアッカということで、Yahoo! BBを解約して空いた回線で申し込んだ。ついでにIP電話も申し込み、通話料無料でYahoo! BBと同じ電話もインターネットも無料の環境が再現したわけだ。ちなみに、このとき、筆者はADSL3社目にして、はじめてADSLの工事費なるものを自分で負担することになる。なんともよい時代になったものだ。
アッカの回線では、下り8Mbps、上り1Mbpsでリンクアップした。エアコンを付けてリンク切断もなく、すこぶる快調だ。もう何も言うことはない。トラブルなしで安定して使える、これがすべての基本なのではないだろうか。
■ いよいよBフレッツか?? その前に
いよいよBフレッツを導入するきっかけがやってきた。BIGLOBEがBフレッツの工事費を負担してくれるというものだ。さらに、BIGLOBEの半年分のISP料も無料になるという。Bフレッツ自体のランニングコストはばかにならないが、今申し込みするしかない。ネットでニュースを見た次の瞬間には申し込みを済ませていた。
しかし、Bフレッツにするまでにやり残したことがある。フレッツ・ADSLだ。IP電話の無料期間が終わったアッカを解約、そこにフレッツ・ADSLを導入することにした。Bフレッツの申し込みとほぼ同時にNTT東日本に書類がまわったらしく。NTTからすぐに電話がかかってきた「あのう、NECさんからBフレッツ、ソニーなんとかさんからフレッツ・ADSLの申し込みなんですけど、どっちですか?」さすがに両方同時に申し込みする人はいないのだろう、「両方です」と答えると「両方できないんですけど」とのありがたいお言葉。同時に使えることをこっちがNTTの担当者に説明する始末。なんとかしてください>NTTさん
フレッツ・ADSLも無事開通、リンクアップ速度はやはり下り8Mbps、上り1Mbpsとなった。フレッツの特長はフレッツ・スクウェアのコンテンツが楽しめたり、なにより、プロバイダーを簡単に取り替えて楽しめることだ。これなら掲示板などで特定プロバイダーの締め出しが行なわれたとしても、すぐに他のプロバイダーに入れば回避できる。
ちなみに、エアコンによるリンク切断はフレッツ・ADSLでは起こらなかった。イー・アクセスだけ使ったメタル回線が違うということがあり、条件が違うと言えばそれまでだが、いずれ同条件で試してみたいと思っている。
■ 今度こそBフレッツ開通へ
|
押入の中の回線終端装置。これを拝むと光ファイバの設置を実感する
|
いよいよブロードバンドの最終兵器。FTTHの導入と相成った。申し込みから3週間目にして電話がかかってきた。「Bフレッツの準備ができました。来週火曜日以降いつでもオッケーです」とのことだ。現地調査などの段階を予想していたのだが、いきなり引き込みになるという。帰宅して家の周辺を見ると、すでにスプリッタのようなものが電柱についていた。これで準備OKということなのだろう。
工事日はもちろん最短の日を指定、当日はけっこうな工事になると予想したが、朝8時50分に来たのは高所作業車1台と、作業員1名。光ファイバの接続には手先の器用そうな人が来るのかと思えば、ふつうの人だった。ファイバを接続する大道具らしきものも見あたらない。
入線場所を確認し、すぐに電柱のスプリッタにファイバを接続、すでに2本引き込んでいるメタル線に沿って黒いファイバを敷設していく。保護用のワイヤーと二重構造になっているのはメタル配線と同じだ。屋根裏に引き込み、押し入れの奥で屋外用のファイバと屋内用のファイバを接続。その下に終端装置を設置した。
特に大がかりな機械も使わず、最初にISDNやOCNエコノミーを引き込んだときよりも工事時間は短かったように思う。これなら、光ファイバの導入だからといって身構える必要は全くない。肩すかしを食らったような工事だった。
■ 無料になった工事費分は高速LAN機器に化けていた……
導入したBフレッツ・ニューファミリータイプはすこぶる快調だ。トラブルは全くない。開通から数日はフレッツ・スクウェアで30Mbpsしか出なかったのが、今では60Mbps台も出ている。このスループットに対応するため、ルータにアイ・オー・データの「NP-BBRS」を導入した。同じような価格帯に高スループットルータが集中するなか、現時点で最新のチップを使ったルータということで選んでみた。これもBフレッツ同様、なにも言うことがないくらい安定して動いている。
また、回線が早くなったということで、ノートパソコンに使っていた無線LANも高速タイプへ変更したくなり、IEEE 802.11gの導入を決めた。やはり最新のものがほしいと思い、出たばかりのアイ・オーのWN-G54/AXPを設置した。
ルータと無線LANを新調した金額を合わせると、なんと28,000円! まさに無料になったBフレッツの工事費が、そのままBフレッツのための機器に化けてしまった格好だ。もし、工事費を自分で負担した上でBフレッツが開通したかと思うとゾっとする。BIGLOBEからの申し込みなので、本来なら浮いた工事費はNEC製のルータなどを買わなければならなかったかと反省(?)する面もあるのだが。
|
|
新調したアイ・オー・データのNP-BBRS。最新チップ採用ということで導入した。速度も安定度も筆者の環境では問題なし
|
ついでに揃えたIEEE 802.11g対応のアクセスポイント「WN-G54/AXP」
|
■ これでブロードバンドの終着駅か?
Bフレッツが開通したわけで、ブロードバンドの終着駅にたどりついたかと思った。しかし、まだまだ苦難の道が続きそうだ。プロバイダーのBIGLOBEがうちの環境では20Mbpsほどしか出ないのだ。これでは、毎月6,000円近いBフレッツの利用料がもったいない。20Mbps以上のスループットが必要な場面は少ないのだが、十分回線容量のあるサーバーからファイルをダウンロードしたときくらい、ズドンと高速でデータが落ちてきてほしいと感じるようになってきた。
ためしに、他のプロバイダーのIDで接続して、速度チェックサイトに接続してみると、50Mbpsオーバーはらくらく出る。これでは、6カ月の無料期間が終わったときに遅ければ、他のプロバイダーへの乗り換えも検討しなければならない。
Bフレッツの開通時に工事担当者に聞いた話がある。「最近はベーシックの撤去作業が多い」という。つまり、安くなったニューファミリーへ乗り換えるため、一度ベーシックを解約、その上でプロバイダー経由で再度Bフレッツを申し込めば、工事費が無料になる上、プロバイダー料もしばらく無料となる。無料ジプシーは自分だけでなかったようだ。ベーシックの撤去からニューファミリーの開通までの間は、2カ月完全無料のADSLをつなぎで申し込めばよいのだ。
一度は終わったと思った無料サービスジプシーは、今後も延々続くと思えるようになってきた。FTTHにしても、Bフレッツ以外のサービスのエリアになる可能性もある。そうなった場合に、無料キャンペーンがあれば、また乗り換えの旅が始まるだろう。そのときはまた、編集部に許してもらえれば、第2弾のレポートをお届けしたい。
■参考データ
居住地区 | 首都圏某所 |
接続事業者 | NTT東日本 |
回線の種類 | Bフレッツ ニューファミリータイプ |
線路距離長 | 1,720m(NTT開示情報表示による) |
伝送損失 | 26dB(NTT開示情報表示による) |
プロバイダー | BIGLOBE |
スループット | 平均20Mbps程度(BIGLOBE) 60Mbps以上(フレッツ・スクウェア) |
■ URL
Bフレッツ
http://flets.com/opt/index.html
ブロードバンド回線サービスのコストを徹底比較!~FTTH編~
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/special/1192.html
2003/05/22 11:14
|
江須田 インターネット歴は1994年から。ケータイでいつでも手軽なインターネットよりも、パソコンを使って超高速接続が大好きという固定派。ケータイも小さなiモードよりも大きなPDA内蔵タイプが好き。 |
|