■ 同じ料金でウチだけ10Mbps?
苦難の道を乗り越えて到達した光ファイバの生活は、とても快適だった。ダウンも速けりゃ、アップも速い。混んだ時間帯でなければ9Mbps近い転送速度が出るので、実用上まったく問題なかった。
だが、世の中では100Mbpsの「ニューファミリータイプ」が登場し、入れ替わりに「ファミリータイプ」は消え失せてしまった。ニューファミリータイプが、ファミリータイプより料金が高ければ納得もいくが、料金は据え置き。同じ金額を払っているのに、世間は100Mbps、ウチは10Mbps。これはどうにも納得いかず、100Mbpsへの切り替えを考え始めた。
10Mbpsから100Mbpsへの変更工事も可能だが、2万円近くの工事費が発生する。通常の新規工事より安くなるとはいえ、使用上特に問題は生じてないので、金を払ってまでニューファミリーに変更する気にもなれず、工事費無料キャンペーンを実施しているプロバイダーを探すことにした。
工事費無料キャンペーンを利用するとなれば、当然新規のプロバイダーに申し込むことになる。どうせなら、将来的には独自ドメインを取得して本格的にサーバーを稼働したいので、固定IPに対応したプロバイダーを選びたい。そこで下調べしたところ、通常の接続料に加え、固定IPの取得に数千円のオプション料金が必要な場合が多いことがわかった。といっても、すでにBフレッツの料金が4,500円、現在契約しているプロバイダーのBフレッツ対応プランの料金が2,000円と、毎月7,000円近い金額を支払っているので、これ以上通信インフラにコストはかけたくはない。
速度測定サイトを見ると、上位にランキングされているのは「有線ブロードネットワークス」か「TEPCOひかり」のどちらか。特にUSENの場合、特別に申し込まなくても固定IPを5つも貰える。本当はこのどちらかに申し込みたかったのだが、住んでいる東京都多摩市にはどちらも来ていない。開通予定が決まったら連絡をくれるというメールサービスがあったので、とりあえず申し込んでおいた。
その後もプロバイダー探しは継続していたが、なかなかコレというものが見つからない。現在の10Mbpsのサービス今の状態でも特に困っているわけではないというのが、イマイチ本気でプロバイダー探しをできない理由にもなっていた。
■ USENから連絡が! 遂に念願のUSEN開通か!?
ある日、会社に出かける支度をしていたところで電話が鳴った。平日の午前中に自宅に電話をかけて来るのは何かのセールスくらいのものだ。半分うんざりしながら電話を取ると、電話の相手は「有線ブロードネットワークス」と名乗り、なんと開通の準備が整ったので連絡したと言う。一瞬、「待ちかねたぞ! 遂に来たか有線!」と思ったが、すぐにあることを思い出した。有線は都内では23区と武蔵野市、調布市などでサポートはしているが、多摩市ではマンション向けの「Type Eマンション」しかサービス提供をしていないハズなのだ。そこで、ウチは集合住宅でも4戸しかないアパートだと伝えると、やっぱり小世帯アパートでは回線は引けないということが判明し、失意とともに、電話を切った。
ぬか喜びさせられたせいで、それまでは比較的どうでもよかった「100M化熱」が再燃しはじめた。いろいろと調べながらサーバーマニアの友人に聞いてみたところ、WAKWAKなら接続料1,480円で、固定IPが1つに付き2,000円だという。WAKWAKならNTTグループなので信用できそうだし、工事費無料キャンペーンにも対応している。ランニングコストは今よりは多少高くなるが、まぁいいかという気持ちになり、その場でオンライン申し込みを済ませた。だが申し込みを済ませてから、詳細情報を見ようとホームページを見ると、固定IPが2,000円なのはフレッツ・ADSLの時だけらしい。Bフレッツだと、なんと追加料金は倍額以上の4,500円になってしまう!
いくらなんでもこれでは高すぎだ。あわてて申し込みを取り消そうとも思ったが、オンライン申し込みは済ませてしまったのですぐには取り消せない。ただ、救いだったのは銀行引き落としを利用しようと思ったので、申込書を郵送してもらう方法を選択したことだ。工事の手配は開始されるが、プロバイダーの申し込み自体は、その書類を返送しない限り正式に申し込みをしたことにはならないので、これ幸いとばかりにそのまま放置することにした。WAKWAKさん、ごめんなさい。
■ 想像以上にスムーズだった回線開通
本来、それほどプロバイダー探しを急がなければならない理由はないのだが、なんとなく早く決めてしまいたい心境になってしまいあちこち調べて回った。しかし月々の料金は安くても工事費無料のキャンペーンをしていなかったり、固定IPを利用するには数千円の追加料金を支払わなければいけないプロバイダーばかり。探しているうちに、やっと条件に見合うCyberBBというプロバイダーを見つけたので、もういい加減プロバイダー探しにも飽きていたし、決めてしまうことにした。
今回は料金も確認してあるが、WAKWAKの件があったので、念のためまた申込書は郵送にしてもらうことにした。申し込んだ翌々日、もうNTTから実地調査日のための連絡が来た。早速、次の集に実地調査をしてもらうことにしたが、どうせ調べればすぐにわかってしまうので現在ファミリーブランに加入していること、ニューファミリープランは追加導入だという事を伝えると、担当者は思ってもみなかった事を言い出した。
「もし今後ファミリープランをご利用にならないようでしたら、ニューファミリープランの設置工事と同時にファミリープランの撤去工事をされますか?」
工事費無料などのキャンペーンは通常、新規申し込みのみの場合に適用される。もし、新規申し込みでも、2回線目の光ファイバ導入では、キャンペーン対象外になってしまう可能性もあると考えていたのだが、今回のキャンペーンではプロバイダーが工事料を支払うためか、あまり深くは追求されないようだ。とはいうものの、以前の回線切り替え工事でもそうだったが、万が一新回線でトラブルが発生した場合、数日とはいえインターネットなしの生活を余儀なくされてしまう。最低1カ月は新旧回線を重複させるため、ファミリープランは継続し、ニューファミリープランを追加することにした。
事前調査の日を迎え、調査担当員がやってきた。しかし、部屋の中と外でしばらくごそごそやっているうちに気になることを言い出した。なんでも最初からあった電話用のメタル線、ADSL Type2で使っていたメタル線に加え、光ファイバを引いているせいで、配管内がかなり狭くなっているという。光ファイバ自体は入るスペースはあるが、配管にケーブルを通すためのワイヤーが入らないかもしれないというのだ。急に不安になったが、その担当員は人を不安にさせておいて、「ま、大丈夫でしょうから調査は一応オーケーにしておきますね」などと適当な事を言って帰っていった。大丈夫ならそんな人を不安にさせるようなこと言うなよ……。
工事日の前日。以前の工事の時には前日光ファイバがMDFまでは設置されていたのを思い出して、夜帰宅してからベランダに出てみた。電話などのケーブル引き込み口はちょうどウチのベランダの端にあるので、ベランダからすぐ見えるのだ。すると、そこには、以前敷設した光ファイバに加え、もう1本ケーブルが巻いてある。このケーブルが明日になれば室内に引き込まれ、我が家も100Mbpsになるのだ。思わずニヤリとして、即座にカメラを取り出して撮影しようかと思ったが、もう時間は午前2時過ぎ。この時間にベランダからストロボ撮影をしていたら、いくら自宅とはいえ怪しすぎる。撮影は翌日出勤前にすることにして、その日は寝てしまった。
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工事日当日の外の様子。電線にかかってる白い箱は10Mのファミリープラン用のもの。その手前に巻いてあるのが今回の100M用の光ファイバだと思われる
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筆者宅ベランダから撮影した光ファイバ。すでに工事日の前には2本目のファイバは敷設が完了していた
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電柱から引き込まれた光ファイバは、アパートの1階と2階の間に設置されたMDFのまわりに巻き付けられていた
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以前に引いたADSL用メタル線2本と、10M用光ファイバ(ベージュのもの)だけですでにかなりややこしいことに。この上さらに100M用の光ファイバは通るのか!?
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■ 光ファイバ、ONUともに新タイプ
いよいよ工事日当日。一応工事は10時から12時の間に来る予定なので、念のために10時前に目覚ましを仕掛けて、早めに起きて待つことにした。予定時間の10時をすこしまわったころ、玄関のチャイムが鳴った。「さぁ工事だ!」と思って玄関に出ると、来たのは宅配便。荷物はNTTから送られており、どうやらIP電話用のアダプタらしい。伝票にハンコを押し、荷物を受け取ったかどうかというタイミングで、二人目の客が現れた。次に現れた客こそ、NTTの工事員だった。
工事を見守っていると、持ち込んできた光ファイバはどうやら前のものとは違う。前のファイバは被覆がベージュだったが、今回のものは黒い。「あれ?その光ファイバ、前のと違いますね」と聞くと、親切にいろいろと教えてくれた。なんでも古いタイプの光ファイバは、ファイバを保護するために金属製の芯が入っていたのだが、落雷時にこの芯を伝って電気が流れ、ONUやPCなどの機器を破壊する可能性があるため、金属製からプラスチック製に変更になったそうなのだ。しかし、やはりプラスチック製なので強度は落ちていて、取り扱いは以前より注意が必要とのことだった。
感心して見ていると、余っている光ファイバを出して「折ってみていいですよ」と言ってくれた。こんな機会はめったにないので、ファイバをUの字に折り曲げていくと、わずかな力で「パキン」と折れる感触がした。なるほど、確かに強度は低そうだ。また、今回はONUも変更されており、工事員の話だと以前に使っていたのが初代ONUで、今回のは3代目になるらしい。以前のONUにはブルーLEDが採用されていて、なんとなく嬉しかったのだが、今回はLEDこそグリーンになっているが、数は増え各種ステータスを確認できるようになっている。LEDは多い方が好きなので、これで色が青だったら言うことはなかったのだが……。
そのうちに「ひょっとしたらファイバを通すワイヤーが通らないかもしれない」と事前調査の時に聞いたことを思い出し、工事担当者に尋ねてみたところ、「いえ、全然問題ありませんよ? ほら、もうファイバは出てるでしょ?」と言われてしまった。この1週間ほど心配していたのはなんだったのだろう。まぁ、問題ないならいいのだが、大したことでないのならいちいち伝えてくれなくてもいいのに……。
さらに、以前にONUを設置してもらった時には、後からONUの設置場所を変更できるように、ファイバを長めにしておいてもらったが、結局邪魔なだけで、設置場所の変更はしなかった。そのため、今回は最初からONUを壁に固定してもらい、光ファイバも必要最低限の長さにしてもらうことにした。工事も完了し、工事員がカバンの中からノートPCを取り出して早速接続テストを始めた。何気なく横からのぞき込んで計測値を見ていると、フレッツ・スクウェアの計測値はなんと「73Mbps」と表示されている。心の中でガッツポーズを取っている間に、テストも無事完了し、工事担当者は帰っていった。なんでも年末年始で、工事のスケジュールは混んでいて、次の工事は隣のブロックだとか。ご苦労さまです。
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ローゼット真上の壁に固定してしまったONU。LEDが増えて嬉しいが、LEDの色が青じゃなくなってしまったのが残念
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これまでも使っていたメルコ改めバッファローのルータ「BLR3-TX4」と、新設したIP電話用アダプタ。実はまだIP電話は利用していない……
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■ ドメイン名決定が今後の課題
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100M化された我が家の通信インフラ配線図。ひとつのローゼットにメタル回線2本、光ファイバ2本が来ているという一見贅沢な状況。しかし、使わない線が増えていってムダなだけという話も……
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翌日、プロバイダー側の工事も完了し、やっとインターネットに接続できるようになった。早速複数の測定サイトで測ってみたところ、大体40Mbps程度は出ているようだ。念願の固定IPも取得できたので、今後はドメインも取得して、本格的にサーバーを稼働するつもり。メールサーバーも立ててしまえば、プロバイダーの変更でいちいち友人全員に通知する必要もなくなるだろう。今のところ、特に欲しいドメイン名はないが、そのうち何か思いついたら申請をするつもりだ。
ところで、工事当日に届けられたIP電話用のアダプタは設置して設定もしたものの、実はまだ使えるようにはなっていない。何回か設定したがどうもよくわからないというのと、そもそも今時自宅の電話はそれほど使わないので、特に困っていないというのが理由だ。
もっとも、電話自体はアダプタに接続してしまったので、電話をかけようとすると、「プープー」という音がするきり、相手方には接続できない。掛けたい相手番号の前にゼロを4回入力すれば、強制的に通常回線で接続する。しかし、接続は遅い上に、昔アナログモデムで聞き慣れた「カチカチカチカチ……」という音が聞こえ、アダプタが入力された番号を元にもう一度ダイヤルしなおしている。本当はこの記事が掲載されるころまでには、ちゃんと設定をして使えるようにしようかと思っていたのだが、着信は普通にできるので、もはやどうでもよくなってしまった。まぁ、そのうちに気が向いたら設定しよう。
■参考データ
居住地区 | 東京都多摩市 |
回線の種類 | 光ファイバ |
接続事業者 | NTT東日本 |
プロバイダー | CyberBB |
スループット | 下り50Mbps、上り32Mbps程度 |
2004/02/12 17:54
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平 雅彦 1969年東京都出身。株式会社インプレスにてパソコン雑誌編集、PC Watch記者を経て、現在は編集プロダクション「ウインディ」に所属。友人や職場のバイク乗りに囲まれて、一度は失くしてしまった二輪免許を再取得しようと目論んでいる |
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