■ ADSL回線と料金をシェアすべく、部屋に穴を開ける
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壁に穴を開けてLANケーブルを通し、隣人宅PCと接続
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中国での海外ブロードバンド生活も早2年。開通時のレポートはこちら、中国のホットスポット体験はこちらですでにご紹介したのでそれを見ていただくとして、今回はその後のレポートを書こうと思う。最初は従量課金でやっていたが、その後はつなぎ放題の固定料金プランに変更し、気兼ねなくWeb巡回やら、ビデオコンテンツの閲覧をするようになった。
中国の滞在先での1カ月のつなぎ放題の通信料金は150元で、人民元が切り上げられた今、日本円換算すると2,000円強。速度は最大2Mbpsであることを考えると結構安く、値段だけなら日本と張り合えるかもしれない。ひょっとしたら、先進国数カ国の中で日本の通信料は最安と言われるが、広い世界、途上国とか探したらもっと安いところもあるかもしれない。途上国にADSLなんてないだろう? なんて思ってはいけない。
それでも中国人にとっての150元というのは、日本の物価では15,000円くらいの感覚であり、安い買い物ではない。そんなお金の事情からだろう、アパートの隣人に一緒に回線をシェアしようと声をかけられた。ルータを導入し、壁に穴を開け(!)、LANケーブルを通し、かくして隣人のブロードバンドのインフラも潤った。ちなみに隣人との面識は、依頼されたときが初対面。彼によれば、私の住んでいる家は古いという理由から、LANケーブルを通す程度の穴を開けることはノープロブレムなのだとか。とりあえず今までのところ、誰からも文句は言われていない。
■ 快適な速度でのWeb閲覧→VOD→リアルタイムTV視聴
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ソニーが2004年に発表した、12インチ液晶を採用した宅内向けロケーションフリーテレビ「LF-X1」
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ADSLが開通してしばらく、もっぱらその広帯域な回線の使い道はWeb閲覧と、ビデオコンテンツの閲覧が日課となった。
VODのさまざまな映像コンテンツがプロバイダー各社から配信されるようになって、多くのジャンルの中から自分の好きなジャンルの映像が、国外にいても簡単に見られるようになったのはうれしい。とにかく、今やVODは「見たいときに見たいビデオが見られるサービス」という説明に恥じないコンテンツ量となった。今後もっともっとコンテンツが増え、2005年のVODのコンテンツ量を見て「あの時はコンテンツが少なくて少なくて……」なんて回顧できることを望んでいる。
さて、VODで欲しい映像コンテンツが見られるようになると、人というものはさらなる欲がでてくるもので、リアルタイムでテレビが見たくなった。
ブロードバンド環境があれば、ニュースなら、テレビ局各社のニュースサイトで放映された最新の映像が視聴できる。中でも、フジテレビ系の「FNN-NEWS.COM」サイトでは、「本日のビデオ・ヘッドラインニュース」を1クリックするだけで、動画ニュースを最新のものから流し続けてくれるという、他の動画ニュースサイトより嬉しいサービスを提供している。
現在筆者が滞在しているのが日本と1時間しか時差がない中国だからできる考えなのだが(多分オーストラリア在住の邦人も同様のことを思っているはず?)、たとえば日本時間の12:00に、タモリやみのもんたを見て昼を感じたいし、日本の夜のゴールデンタイム時に、日本の生活習慣のように、どんな番組や芸能人が話題になっているかを見つつ夕食を食べたい。VODでも第2日本テレビなど、民放各社がネットでのコンテンツ配信に参入するニュースもあり喜ばしい限りだが、そうしたサービスも欲しい一方で、リアルタイム視聴もしたい。
日本国内に置いたPCをTVサーバーにすれば、こうしたリアルタイム視聴も不可能ではないが、サーバーを置くのはPCに詳しくない両親の住む日本の実家とあって、PCの常時稼動は躊躇してしまう。そこで、筆者が購入したのが、9月5日に新製品も発表されたソニーのロケーションフリーテレビだ。「外国でも日本のテレビが見れる」の謳い文句で登場したアレだ。
■ ロケーションフリーテレビ「LF-X1」のベースステーション設置
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実家でのロケーションフリーのための準備。左からロケーションフリーテレビのベースステーション、ルータ、VDSLモデム
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筆者が購入したのは、9月5日に発表された「LF-PK1」の前モデルとなる「LF-X1」だ。今夏に購入し、外国で日本の番組が見れるTVとして1カ月ばかり使ったので、これから登場するロケーションフリーテレビへの期待も込めて、使ってみた感想などを簡単にご紹介したい。
設定方法については細かく言及しないが、超がつくほど簡単に言うと、固定グローバルIPまたはダイナミックDNS、それにダイナミックDNS対応ブロードバンドルータをあらかじめ準備(できればソニー推奨のIOデータ製ルーターが望ましい。理由は後述)し、ロケーションフリーテレビにダイナミックDNSを入力し、ポートフォワーディングの設定をすればOKだ。設定にはクセがあり、家庭内ネットワークの設定管理程度はできる筆者で、なんとか苦戦しつつもできるレベルだ。初心者にはかなり難しいと思うので、初心者の方にはソニーの出張設定サービスを利用することをお勧めする。
筆者の場合、ロケーションフリーテレビのベースステーションを実家に置かなくてはならなかったのだが、ロケーションフリーテレビを使うには実家が特殊な環境にあって、さらに四苦八苦。
実家は新築の大型マンションで、最初からブロードバンド環境は整っており、マンション管理費で通信料を支払うタイプのプロバイダー「じょいふるねっと」に入居当時から加入済み。同社の持つグローバルIP転送サービスはWindowsなりマックなりのソフトウェアのネットワーク設定を使わなくてはならないもので、それでは結局PCにNICを2枚挿しして常時起動しなくてはならないのでNG。どうにかならないかと同社に頼んだら、VDSLモデムを送っていただいて、無事に接続が完了した。困った時には、ダメモトでお願いしてみると、なんとかなることもあるという例だ。
■ ロケーションフリーテレビの前にそびえる壁
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中国の滞在先でLenovoのPCに囲まれるロケーションフリーテレビのモニター
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中国にロケーションフリーテレビのモニターを運び、滞在先で実際日本のテレビが見られることを確認した時は、理論的に間違いなくできるとわかっていても思わずガッツポーズ。実際に使えるようになってからは、1日の間にちょくちょく日本のテレビを見るようになった。
しかし、毎日必ず昼の時間帯になると、時々映像がカクカクし、ゴールデンタイムの時間になるとしょっちゅう映像が途切れるという問題があった。しかも映像だけでなく音声も途切れ途切れになってしまい、例えるなら「こんにちは」という音声が、「ココココココンンンンンンニニニニニチチチチチチワワワワワワ」といった感じになり、視聴がかなり厳しくストレスがたまる。この製品についてのBBSを見てみると、どうやら中国在住の人は似たような症状に直面している様子だ。
日本までの回線速度を測定してみると、サーバーと時間によってスループットは100~500kbpsとまちまち。測定結果が300kbpsと出た直後に再測定してみても、200kbpsになったり、あるときは450kbpsになったりと、なんだか不安定なのだ。
問題のゴールデンタイムはというと、CNNICのインターネット発展状況報告書を見てみると、中国では18時~23時にネット利用者が集中していて、日本でもリサーチによると同様の傾向が見られるため、この時間帯の日中間のバックボーンは、多くの利用者でひしめき合っている状況なのかもしれない。海外で日本のテレビを見るなら、その国でのトラフィックの多い時間帯は事前に調べて、この時間はひょっとしてテレビが見づらいかもと、覚悟したほうがよいかもしれない。
問題はそれだけではなく、別の問題も発生し、解決までかなり苦戦した。この製品の掲示板を見ていていると、どうやらルータとの相性がかなりあるらしく、最初問題なく視聴できていても、突然ある時からつながらなくなることがあるという。結局、筆者はソニーが推奨するアイ・オー・データ機器のルータを使用することで解決したが、掲示板でもこの症状に対する同じ解決例が見受けられた。
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「LF-X1」のロケーションフリー用PCクライアントソフトの画面。新ロケーションフリーもこんな感じ?
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CNNICによる中国ネット利用者の利用時間帯アンケート結果。20時頃をピークに、利用が夜に集中していることがわかる
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蛇足だが、10月には新ロケーションフリー製品が出るというので、1ユーザーとして、そのニュースを見ただけでの感想を書く。まず、モニター部のリモコンをオプションでも用意してもらえたら……と感じた。海外在住の人ならば、モニターをテレビのように据え置いて、遠くのダイニングテーブルやソファからリモコン操作でチャンネルを回したいはず。いくら無線マウスで遠隔操作ができるようになったとはいえ、マウスのインターフェイスよりは、慣れ親しんだリモコンを使ってチャンネルを変えたい人は多いと思うのだ。もう1つ、新ロケーションフリー製品では、前述のルータとの相性問題について改善してたらなお良しだ。
なお、ロケーションフリー製品については、新製品がすべて前モデルを上回っているというわけではない点にも注意したいところだ。モニター部については、前モデルならリモコンもある。デザインについては好みもあるので一概には言えないのだが、筆者としては前モデルの方が洗練されていると感じた。このほか、旧製品はお風呂に持ち込むことだってできる。
新製品の登場で、前モデルが値下がりする可能性もあるので、購入を検討している方には、新旧にこだわらず、自分に合った価格と目的の製品を選ぶようおすすめしたい。
■ URL
ロケーションフリーテレビ製品情報(ソニー)
http://www.sony.jp/products/Consumer/airboard/
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2005/09/22 10:58
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山谷剛史 海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進しております。現在中国滞在中。 |
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