こんにちは。大学時代はIT関連とは無関係な学問を専攻し、現在もIT関連とは無縁な仕事をしております私が、このようなサイトでコラムを書かせていただくことになり、非常に驚きを感じております。というわけで、今回は専門的な話とは少し離れて(というか、専門的な話をしてしまうと嘘や誤りをとことん指摘されて自滅しそうなので……)、このサイトをお読みの方々であれば「ああ、そんなことがあったなぁ~」的な回顧録として書かせていただきました。
■ インターネット=電子メール?
私がPCに触りはじめたのは高校1年生のころ、入学祝いで買ってもらったPC9801-BX2という機種だった。もちろんWindowsなどは普及していないDOS時代で、小遣いをはたいて買った一太郎で文書作成をしたり、ゲームをしたりで、一人で試行錯誤しながらPCを学んでいった。思い起こせば、当時メモリとHDDの違いをきちんと理解するまで1年はかかった気がする……。
そんなわけで、変にPC歴だけは長い私だが、インターネットとは具体的に何かを知ったのは、とっくにWindows 95が登場していた6年ほど前のこと。化学系といえども大学では工学部に席を置いていたのに、パソコン関連の授業はまったくなく、「インターネット=電子メール」なる、方程式が頭の中では成立してしまっていた。「電子メールだけのためにお金なんて使えない」と、自宅へのインターネット導入はまったくく考えていなかった(なんせ大手プロバイダーだと全社従量制、月20時間程度しか使わなくても数千円は当たり前、という時代だった)。
■ 人生を変えたインターネットとチャット
インターネットを始めたきっかけは、仲が良かった友人の「チャットしてみない?」という一言だった(その本人はちゃっかり、チャットがきっかけで知り合った美女と昨年ゴールインしたが……)。とりあえずインターネットを引け、と言われて引くことにした。
まず必要な物はPCまでの電話線。私の家は1Fに電話のモジュラージャックがあり、自室は2F。当時は無線LAN機器なんてしゃれた物もなく、必死に1Fから電話線を引き回し、とりあえずは無料体験でインターネットやらに触れてみることにした。すると……驚くほどに時間が経っていく。当然無料体験期間なんてあっという間に終わってしまったのである。もちろん原因はチャット。
もとから人と話すのが好きで、タイピングにはまったく抵抗なし、その上ちょうど春休みで時間はアホみたいにある。「チャットにはまる」条件が揃っていたわけであった。こりゃいかんと思い、ナニワの商人勘定が働いたせいもあるが「選ぶプロバイダーは安くて絶対定額制」「テレホーダイは絶対申し込もう」の2つを、ネット体験数日の間に決めてしまった。
こうしてインターネットとチャットにどっぷりはまっていった私だが、「定額制」と「テレホ」を最初から決めていたため、幸いにも当時多くの人が経験した「後から開けてびっくり請求書」なる目に遭わずにすんだ。また、当時はそれほど重いWebコンテンツも少なく、アナログ回線でのダイヤルアップ環境にそれほど不満はなかった。
あえて挙げれば、安いプロバイダー(といっても1カ月1,500円の定額量に入会料が10,000円程度、これにもちろん電話代は別途必要。これでも当時は最安値クラスだったのだが……)のせいで、夜11時を過ぎると回線がビジー状態で、いったん落ちると10分、20分は戻れない。そのため当時は午後10時57分過ぎると同時に(この時間の意味合いわかりますよね? ちょうど市内通話3分10円だった時代の話ですよ~)、PCの前に座ってダイヤルアップを開始したりと苦労(?)したものだった。
■ ブロードバンド=常時接続って意味じゃないの?
「ブロードバンド」という言葉が世間で流行り始めた頃、あるいは流行始める前だっただろうか。一般の個人ユーザーにとって、選択肢はアナログ接続とISDN接続しかなかった当時、24時間チャットができるならやりたいという廃人の間で噂になり出していたサービスがあった。その名も「CATVインターネット」。もちろん、ブロードバンドの原義通り、本来は速さが一番の売りだったはずなんだが、我々にとってはCATVインターネット=24時間ネットやっても値段が一定、それもたったの5,000円前後だってよ、という使い放題の方で脚光を浴びていた。
うちの地域はCATVの普及がかなり早く、そうした話が出た頃にはCATVインターネットが導入できる環境にあったのだが、初期費用がバカみたいに高く(52,500円)、家に穴を開けるのをやけに嫌がるオヤジのせいで(建築関係の仕事をしていて、工事に関してはこだわりがあるということなんですが)、我が家では一生無縁だな~と思っていたのだが……。
きっかけは、1つ下の弟の「インターネットがしたい」という言葉だった。しかしチャットにはまり、夜の電話回線を独占していた私は猛反対。それを聞いていたオヤジが突然持ち出した話が、CATVインターネットの導入話だった。初期費用もオヤジが出す、と。
こういうわけで、うちの家にもCATVインターネット導入が決まった。売り込み時期とも重なり、申込書を送付してから、1週間以内には工事が完了していた気がする。こうして手に入れた念願の24時間常時接続、快速ブロードバンド。チャットに今まで以上にはまったのは言うまでもないが、それと同時にどんどんPCの知識を増やしていった。大学院に進学後、PC出張サポートのアルバイトもこなし、友人からは「本業PC関係で、副業が化学者(=私の専攻)じゃないの?」と言われる始末。これでも今は一応研究職なんだけどな~。
■ CATVインターネットの問題点
CATVインターネットを導入し、無事24時間インターネットができるようになったが、問題点もあった。1つは速度の問題。下りは各種速度測定サイトで計測しても2~3Mbps程度の値が出ていたのだが、上りの速度が遅く、128kbpsの制限がかかっていたのだ。当時、大学の研究室で作ったデータ(FDDには入らず、かといって当時はUSBメモリなどといった便利な品物もない)を、24時間駆動させていた家のPCにバックアップする、という作業をしていた私にとっては、この上りの遅さが非常にストレスであった。その上、アップロードを限界までやっていると、それにつられてダウンロードまでもが遅くなってしまうという欠点もあった……。
もう1つはプロバイダーがルータの使用を禁止していたという点。今では信じられない規則だが、複数台のPCを使う場合は、1台増えることにつきオプションのIPアドレス追加サービス(1000円/月)を契約しなさいよ、というものだった。
一応、自分のメインマシン分と弟のPC分と、計2台のPC分は同時に接続できるような状態にしておいたが、自分のサブマシンをインターネットにつなげるときは、こっそり自分のメインマシンにNICを2枚刺し、Windows 2000以降標準搭載であるインターネット接続の共有機能を使い、メインマシンをルータ代わりに使うことでサブマシンもインターネットに接続していたのだった(その時の格闘記や具体的な設定方法などについては http://www.tcn.zaq.ne.jp/yamadam/ に記載してあります)。あ、あと些細な(?)問題として、CATVのモデムが1カ月に1度程度フリーズしてしまう等といった現象もあった。
これらの問題も、時間が経つにつれて解決された。まずはルータ。ADSLが世間に普及し、ルータというものが一般化した去年の初頭くらいに突然方針を変更し、ルータを使っていいですよ、という規定に変わった。それ自体は喜ぶことだったが、ルータの使用許可を出した途端、各種広告などには“何台のPCでも同価格で同時に使って頂けますよ”という宣伝の文字が……。今までしぶしぶ月々1,000円支払い、IPアドレス追加サービスを利用してきた旧来ユーザーは一体何だったんだろう、とむなしくなった。
もう1つ、上りの速度は何とかならないのかという問題点について。ルータが許可されたのと同時期に「現状ではFTTHも登場し、価格・速度面においてCATVを使い続けるメリットを見いだせません。特に下りの速度については……」なる意見をWeb上から問い合わせをいれたところ、即日で回答があり、「いつになるかはお約束できませんが、上り・下りともに増速は考えております」という回答。まぁルータも許可されたし、この問題も早々と解決されるかなと思ってたのだが、それは甘かった。解決されたのは2003年に入ってから。ようやく追加料金(500円)を払えば、下り最大20Mbps、上り最大2Mbpsまで使えますよとなり、多少はFTTHに追いついたかな、という状態になったのだ。
ではなぜADSLなどに乗り換えなかったのかというと、実はADSLがほとんど使えない地域に住んでいたのだ。基地局からの経路長5,140m、伝送損失44dBなる地域である。ADSLに乗り換えたら余計速度は落ちる、という状況なのだ。じゃFTTHは?ということになるが、ADSLが使えない地域のためか関西電力系のケイ・オプティコムのFTTHエリアに入るのは非常に早かった。しかし工事費など初期費用に数万円かかってしまうという問題があり、これも我慢している。
てなわけで、今現在は現状の環境にまぁ満足はしているのだが、不満なのはやはり高い使用料。増速用の追加料金と合わせて月々5,500円で、メールアドレスは5件まで追加無料、それぞれのウイルススキャンも無料、というサービスは家族ぐるみで使っている我が家にとっては素晴らしいと思うんだが……でも頑張ってもう1,000円程度は安くして欲しいかなぁ~。もう1つは、よく固まるルータだろうか。このルータくん、1年半ほど前で無線LAN AP内蔵、さらに無線LANの子機も付いて2万円という格安価格に飛びついて買ったのだが……。
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良く固まるルータくんとCATVモデム(ZAQプレミアムサービス対応機。交換してCATVモデムが固まることはなくなりました)
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ケーブル配線の後(黒が電話線で白がLANケーブル。当時は無線LANなるしゃれた物はなかったのさ~)
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CATV工事の後。灰色のケーブルがCATV引き込み線。オヤジがうるさくいったせいか、綺麗にエアコンの後に隠れてるでしょ?
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ケーブル配線の後その2(余ったケーブルをまとめる場所がなくて……)
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■ これからのインターネットに望むもの
どんどん値段が下がり、速度も上がり、選択肢もたくさんありと、何年も前からインターネットを利用している私たちにとっては驚き、そして便利さに感動することばかりだが……。
一方、出張サポートをしているときにお客様によく言われたのは、「インターネットを導入するにも選択肢が多すぎて何がいいのかわからない」「なぜ家電のように統一規格がないのか」「なぜ設定1つに何通りも選択肢があるのか?」ということだった。
選択肢が多いからこそこのような価格競争が起こり、どんどん安価になっていく。また、コンセントを差してスイッチを入れるだけで準備完了な家電並みのシンプルさを、汎用機であるPCに求めるのには酷であるのはわかっているのだが……。
初心者の方々には下り100Mbpsの高速サービスは必ずしも必要ではないかもしれない。たとえば、回線速度は64kbpsでもいいから、電源を入れるだけで今日のニュースや天気予報などが表示され、メールが来れば自動的に読み上げてくれたり、「昨日の阪神戦の結果が知りたい」とマイクに言うだけで、そのような情報が表示される―――といった、シンプルなインターネットを提供できるサービスが、今後さらにインターネットを普及させるためには必要ではないのかな? と思う今日このごろであった。
■参考データ
| 自宅 |
居住地区 | 大阪府高槻市 |
接続事業者 | 高槻ケーブルネットワーク |
回線の種類 | CATV |
プロバイダー | 高槻ケーブルネットワーク |
スループット | 下り7Mbps、上り1Mbps(共にBNR測定値) |
■ URL
高槻ケーブルネットワーク
http://cw1.zaq.ne.jp/tcn/
2003/08/21 11:13
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山田正宏 ( http://www.tcn.zaq.ne.jp/yamadam/ )
1978年9月14日、大阪生まれ。以後ずっと大阪に在住している生粋の関西人。大学時代、学部・修士課程ともに化学を専攻していたことから、現在化学系研究職の見習いとしてサラリーマン生活を行っているが、学生時代いろいろとPC関連のバイトをしていたことから、「化学は趣味で、本業はIT関連でしょ?」とイヤミを言われるのが日常茶飯事。何かIT関連の仕事があればいつでもそっちに転職しまっせぇ |
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