■ やっとの思いでやってきたブロードバンド
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筆者が住んでいる茨城県鉾田(ほこた)町。PCパーツを買う時は、最寄の水戸に行かなければ、ほとんど手に入れることができない
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数年前、それまで勤めていた会社を退職して、埼玉から故郷の茨城に帰ることになった。そこで筆者を襲ったのは、インフラが整えられていない地方の実状だった。すでにフレッツ・ISDNが当たり前の当時、地元茨城で最高の接続環境はテレホーダイ(しかもアナログ!)だったのだ。
仕方なくテレホーダイを利用すること数カ月、やっとフレッツ・ISDN対応エリアに入ったことを知り、早速申し込みをした。予約で順番待ちが続出という噂だったが、ほかには選択肢がない。申し込みから1カ月が過ぎ、忘れたころにNTTから連絡が入った。
「1万円でレンタルできる機械を接続しないと、繋がらないかもしれないですよ!」
なぬ、1万円を安月給から捻出しなくてはならないのか……と、理不尽に思ってそれをレンタルせずに利用を開始。何の問題もなく接続ができた。なにやら初めて聞く機械だったのでその名は忘れたが、アレはいったいなんだったのだろう。少しでも消費者に出費させようというNTTの姿勢に、少しだけ不信感を持った瞬間だった。
そして、テレビや雑誌でADSLの文字が目立つようになったころ、前の会社の後輩から連絡が入った。早速、1.5Mbps回線を引いたと自慢してきたのだ。冷静に聞いていたが心中穏やかではない。これは悔しい。ADSLにしようとも、筆者の住んでいる茨城県鉾田町では、まだフレッツ・ISDNが来たばかり。「CATVとかは?」と探してみても、最寄でも筑波にしかない。ほんとに何もないのね、この地域。
あきらめかけていた矢先、ADSL申し込みハガキが届いた。
「やっとADSLが……。」
涙で見えない目元をぬぐい、感動で震える手で申し込みハガキに書き込むと、郵便ポストを無視して郵便局にハガキを持ち込んだ。
もともと電話嫌いな筆者だが、それから1週間ほどは電話が鳴るのが楽しみだった。しかし、かかってきた電話の内容は残酷なものだった。
「伝送損失が55dBを超えているので、繋がりませんね。」
有無を言わさず断わられた。
■ 自宅がダメなら会社で満喫、ネットライフ!
筆者は職業柄、アパートに帰るのは深夜23時過ぎで、朝も遅い。休日にインターネットを利用しようと思わなければ、テレホーダイでもなんら不自由しない時間帯にアクセスし、ダラダラと時間をかけてウハウハなWEBを回り続けていた。しかし、ウハウハなWEBにはキレイで大きい画像が多く、ISDN回線の速度ではすべてが表示されるのに時間がかかる。日に日に増えていく接続時間。
たまにネットゲームをしていると、都会の友人たちはいつの間にかADSLを卒業して、FTTH接続に。「40Mbps超えた」とか「50Mbps位かな」という会話に筆者はついていけなかった。
「メガ? それって今のウハウハの何倍?」
ADSL環境すら整わないこの地に、そんなブルジョワなインフラが来るのはいつのことだろうか。切ない思いは増すばかり。
会社の移転が決まって、わが社にも遂にADSLの導入が決定した。町役場が近いこともあり、かなり期待のできる伝送損失(31dB)だった。まだ8Mサービスは来ていなかったので、1.5Mサービスなのだが期待を裏切らず1.2~1.3Mbpsの速度が出ている。なんて快適なスピードだろう! 会社だということも忘れ、ついついお気に入りのページに行き、サイズが大きくてダウンロードを断念したあのウハウハな動画ファイルや、あの巨大なデモゲームをダウンロード。白状します、仕事中にこっそりとダウンロードしまくっちゃいました。休日でも喜んで出勤。いや~、仕事楽しいなぁ~(社長ごめんね)。おかげでちょこっとリハビリできた。
しばらくして、そろそろ8Mサービス対応地区にならないかと思いフレッツのページへアクセス。なんてタイムリーなんだろう、しっかり対応エリアになっているではないか。社長に報告すると、悪徳社員に回線乱用されているとも知らずに、回線変更に快諾してくれた。ああ、心が痛む(ウソ、うひひ)。
もちろん自宅の対応エリアもチェックしていた。アパートに帰ると案の定申し込みハガキが来ていた。「今度は8Mbps対応エリアになったのだから、回線はきっと改善されているさ!」と自分に言い聞かせ、8Mサービスを選択しまたもや郵便局に走った。
前回よりも早い対応で、1週間もしないうちにNTTより連絡があった。
こ、この声は……。
電話に出ると、忘れたくとも忘れられない前回のADSLお断わりの男性であった。浮かれた気分も残念モードになってしまい、聞き流しに入ると予想通り、
「8Mサービスは無理だと思いますね。でも……」
ん、でも……?
「1.5Mbpsなら、万が一つながるかもしれません。万が一ですけど。」
前回は有無を言わさず断わられたのに。その可能性にかけて、1.5Mサービスを申し込む事にした。こうして、やっとADSL導入へ前進できた。
■ ADSLが繋がった! でも……
遂にやってきた、開通日。筆者はドキドキしながら、マニュアルも読まずにいきなり機器の接続を開始した。残念ながらブロードバンドに対応してないルーターしかなかったので、直接モデムとPCを接続。そしてフレッツ接続ツールを使って、いざアクセス!
沈黙、そしてエラー。
なんのことはない、番号の入力ミスだったようだ。気を取り直して、再度接続。問題なく接続できた。実際にファイルをダウンロードすると約560Kbps。接続先にもよるだろうが、導入前から比べると約10倍ほどの速度だ。単純に考えて、ウハウハなサイトを1時間かけて見ていたのが、6分で見られる計算に! 2倍ほどの速度でも出れば嬉しいと考えていたのだが、約10倍のスピードとは。ついつい朝まで巡回して、久しぶりに徹夜をしてしまった。
人間の欲望にはキリがないもので、1週間も経たずに不満が出てきた。回線が不安定なのか、たまに転送速度が激減しているようだ。いつも何かとお世話になっている友人のアドバイスでは、ADSLにはノイズ対策が重要だという。
「きっとノイズを低減できれば安定するだろう!」
早速ノイズ対策機器を求め、水戸市内の大型量販店へ向かった。
ノイズ対策関連の製品を見て驚いたのは、その品数の多さだった。それまでは縁のない物と見て見ぬフリをしてきたが、いつの間にやら関連のコーナーが設置されているほど。そこでおススメとして陳列されていた、エレコム製品をまとめて購入した。
さっそく試してみたところ、速度が落ちてるではないか! ちなみに最低値は、Download: 165.32kbps、Upload: 274.53kbpsだった。
結局、モデュラージャックからモデムへ至る経路のノイズ対策はまったく効果がなく、純粋に基地局からの伝送損失が原因という結果に終わった。ある程度は予測していたものの、一握りの可能性を求めて本格的に機器を買い込み、ドキドキしながら測定した事がこのような結果になり非常に残念だ。落ち込んだ筆者は、友人たちへ報告のついでに愚痴をこぼした。
【回線速度測定】 | 変更前 | 変更後 |
Download | 641.78kbps | 629.54kbps |
Upload | 334.32kbps | 334.73kbps |
※20回計測して、最速の数値 |
【購入製品】 |
ノイズレスモジュラーケーブル(10cm) MJ-01TS | 500円 |
ノイズレスモジュラーケーブル(1m) MJ-10TS | 1,800円 |
フェライトクランプ NF-01LG | 980円 |
ADSL用スプリッタ LD-ADSLSP2 | 1,780円 |
2モードADSLノイズフィルタ MJ-ADSLF2 | 3,800円 |
合計 | 8,860円 |
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今回購入した製品。こんなに買っていいのだろうか? 一抹の不安が残る……
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接続キットに同梱され、変更前に使用していたもの。ADSLユーザーのみなさんにはおなじみの機器
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■ 目指せ、さらなる高速回線
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これでもなんとか整理した使用PC周辺。写真ではわからないが、モニターの上はホコリだらけ
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8Mサービスは、申し込み時に断わられただけでチャレンジはしていない。詳しい友人にも聞いてみたが、筆者の状況では「厳しい」の一言であった。
以前なら、接続できてもできなくても同様に工事費が必要だったが、今は接続できない場合に費用は不要らしい。今回、ADSL化のトライも、繋がらなかったら工事費が不要ということが後押しとなった。ならば8Mサービスをトライしたかったのだが、NTTの強い反対があってあきらめたわけだ。1.5Mサービスは万が一といわれながらも接続できた。まだ来ていない12Mbpsのフレッツ・ADSL モアが来た時には、やっと8Mがトライできるのであろうか。まぁ、その結果は想像できるが。
どれくらい先になるかわからないが、まだまだ技術の進歩で回線速度も上がっていき、地域格差もなくなるだろう。これに懲りず、まだ訪問したことのないウハウハなサイトを求めて、回線速度アップ第一で七転八倒していきたいと思う。
■参考データ
居住地区 | 茨城県鉾田町 |
接続事業者 | NTT東日本 |
回線の種類 | フレッツ・ADSL 1.5Mプラン |
線路距離長 | 4,000m(NTT開示情報表示による) |
伝送損失 | 55dB(NTT開示情報表示による) |
プロバイダー | ゼロ |
スループット | 630kbps前後 |
■ URL
フレッツ ドット コム(NTT東日本)
http://flets.com/
ゼロ
http://www.zero.ad.jp/top_2.html
2003/06/12 11:12
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ぷっぷくぷ~太郎 大学卒業後、東京の某コンピュータショップに勤めていたが、いやけがさして都落ち。現在は地元で慌ただしく生活している。得意なものは英語。 |
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