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当時遊んでいたUnreal Tournament。ゲームにもよるが、サーバー側で当たり判定を取るタイプのゲームはPingが高いと、表示されるキャラクターの位置と実際の位置がずれることが多かった (C) 1999 Epic Games, Inc. All Rights Reserved. Created by Epic Games, Inc.
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筆者はPCゲームが大好きである。大好きであるが故にそれが高じてPCゲーム専門ライターになってしまい、現在に至っている。さて、PCゲーマーには重要な物が3つある。1つ目は当然ゲームの腕、2つ目はその腕を活かせる高い処理能力を持つお手製のオリジナルPC、最後は高速なインターネット回線だ。
筆者がメインフィールドとしているFPS(First Person Shooting:一人称視点のシューティングを指す)に限らず、RTS(Real Time Stratagy:リアルタイムで進行する戦略シミュレーション)やレーシング、スポーツなどのPCゲームを心底楽しもうと思ったら、インターネットを介したマルチプレイによって行なわれる見知らぬ他人との対戦は外せない。そして、マルチプレイを快適に遊ぼうと思ったら高速な光回線は必須なのである。
ADSLの一般化によって、ダイヤルアップやISDNによる時代に比べPingの数値は格段に良くなった。ダイヤルアップ時代におけるマルチ対戦では海外のサーバにつなぐとPingが200を余裕で超えることが多く、その数値でFPSなどをやろうものなら数秒先の敵の位置を予測して弾を撃たないとあたりゃしないという状況があたりまえの世界だった。
そんなころに比べれば、Pingが50以下というレイテンシの高いADSL回線が普及した現在は夢のような環境だ。しかし、環境は上を求めればさらに上があるもので、光回線を導入すればそのPingは最低でも15以下、平均しても10を切るところまで引っ張り上げることができる。その数値はすでにLAN環境と変わらないものであり、マルチプレイの環境としては究極といってもいいところまで通信環境は極限化したといっても過言ではないだろう。
■ “PCゲーム”を基準とした筆者のインターネット回線履歴、そして
元来、我が家周辺のインターネット事情は元来あまり良くなかった。ISDNの導入までは順調に進んでいたのだ。しかし、初めての常時接続サービスといえるフレッツ・ISDNになって事情が変わった。フレッツ・ISDNの初期サービス地域に筆者が住む地域の大半は入っていたのだが、なぜか我が家周辺のブロックだけがぽっこりとサービス範囲から外れていたのだ。
テレホーダイの時間である深夜23時になると起き出し、明け方までゲームに明け暮れていた当時の筆者に取って“常 時 接 続”の4文字は、“24時間ゲーム三昧”と同義であり、とても魅力的なものだったにも関わらずである。当時の記憶を思い起こすと「なんでうちの周囲だけ凹になってるのー!?」と吠えつつ、しばらくは悶々としながら深夜のゲーム対戦をしていた覚えがある。
そんな状況に終止符を打ったのが、日本初めてのADSL接続サービス「東京めたりっく」であった。当時1.5Mbpsという回線速度はISDNと単純に比較しても約25倍高速な回線であり、そのレイテンシも桁違いだった。おまけに24時間接続し放題! おかげで筆者はその後約1年にわたり喜々としてゲームを遊び、廃人まっしぐらの道をたどったのだった。
しかし、その後ソフトバンクによるYahoo! BBの開始によって状況はじわりじわりと変わってきた。周囲のPCゲーマー達はYahoo!やフレッツ、アッカ、イー・アクセスといった業者を利用し始め、筆者は回線速度という点において周囲に遅れを取るようになった。しかし、それにもかかわらず筆者は昨年6月の東京めたりっくのサービス終了まで回線を変えることはなかった。なぜかといえば、東京めたりっくにおけるPing値が他のADSL回線業者に比べて良好であったからだ。
正直な話、サーバーを立てたりP2Pを稼働させたりという太い回線が必要なネットワークの使い方を筆者はしておらず、PCゲームのためという目標に沿うならば、回線速度よりもレイテンシ品質の高い東京めたりっくのADSL回線以外に選択の余地は無かったのだ。それに回線事業者の変更に伴う各種手続きが面倒だったというのも正直なところだ。
■ 有線もケーブルテレビも来ない! 回線孤島と化した自宅周辺
そして、現在筆者はフレッツ・ADSL モアを利用している。選択した理由は単純で、周囲のPCゲーマー達に使っている回線とPing平均値を聞いたら、フレッツ・ADSLが若干ではあるがPingが良かったからだ。しかし、このフレッツ・ADSLを導入するにあたり、筆者は自宅周辺がいかに特殊な環境に置かれているかということを改めて認識することになる。
2003年の夏といえば、フレッツ・ADSLの回線速度も向上し24Mbps超のサービスがボチボチ始まった頃だ。筆者は回線速度の太さはあまり必要としないと先に書いたが、やはり遅い回線より速い回線のほうが気持ち良いのは人として当然の話であり、「24Mbpsの回線入れたらゲームのデモプログラムのダウンロードが速くなっていいなぁ」とほくそ笑みつつ回線の申し込みをした筆者だった。
しかし、導入に際してNTTが提供している線路情報開示システムを使って回線品質を調べて筆者は愕然とした。自宅とNTT青山局との経路長は実に3.05km、伝送損失は35dbに上り、NTTがフレッツ・ADSLサイト内で提供しているグラフを見れば、35dbという伝送損失は上りも下りもガクーンと落ちるポイントのさらに右側に位置している。
おまけにマンションという自宅環境は、マンション地下に存在しているMDFやマンション配管内で受けるISDN回線からの干渉なども無視することはできない。実際フレッツ・ADSLの導入後、各転送速度測定サイトで計測してみると2.7Mbpsという速度、先ほどのグラフでわかる数値から見ても若干低い。やはりマンションという環境ではADSLの転送速度に及ぼす要素が多すぎたのだろう。
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フレッツサービスの公式サイトに掲載されていた伝送損失と転送速度の相関関係を示すグラフ
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筆者宅の35dbという損失数値は、ADSL回線にとってあまり良い状況ではないことがわかる
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こういった基地局からの距離問題だけではない。どうも情報技術関連のサービス普及状況を見ると「我が家があるブロックは情報技術のサービス提供という視点から見ると、すっぽり取り残された地域なのではないか」という気がしてきた。
例えば、先ほど挙げたフレッツ・ISDNは時期は、はっきりしないがADSLサービスが全国的に普及したのと前後してやっと自宅周辺で使えるようになった。USENによる音楽放送サービスやインターネット接続サービスも提供開始から自宅周辺がサービス地域に入るまでかなりの時間がかかった記憶がある。そして、現在顕著なのがケーブルテレビのサービスだ。自宅から2ブロック先の地域では2年以上前にサービスが始まっているにも関わらず、数百メートルしか離れていない自宅周辺ブロックには未だサービス提供のお知らせが来ない。
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筆者自宅前の明治通りの様子。自宅側は地下共同溝で明治通りをはさんだ反対側は電柱による架線になっている。ちなみに現在は地下鉄13号線の工事中
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こういった状況に陥る理由はいくつかあるのだが、大きいのは物理的な事情だろう。自宅ブロックは背後に当たる西側に山手線の線路や明治神宮を背負い、北側には首都高の高架がバーンと走り、正面に当たる明治通りが走っている。おまけに明治通りの自宅ブロック側だけが地下共同溝になっており、電柱が1本も立っていないのだ。
以前、フレッツ・ISDNのサービスが始まらない理由をNTTに訪ねたことがあったのだが、距離的な問題に加え自宅周辺がそのような状況にあることを説明されて以来、筆者は自宅周辺が特殊な状況に置かれているということを強く意識するようになった。
USENやケーブルテレビのサービスが来なかったのも同様な理由だ。特に公共性の強い電話、電気、水道、ガスといったライフライン系のサービス提供に比べ、USENやケーブルテレビなどの商業性の強いサービスの場合「線を引くコストに見合うだけの契約者が望めるか」というのが重視されるのはいうまでもない。
そして、先ほど挙げた明治神宮などの大きな緑地があれば大回りしなければいけないし、山手線の線路や明治通りといった太い幹線があれば長い距離を空中架線しなければならないが、支持する柱なしに架線できる距離にも限界がある。さらに共同溝が走っている地域の場合、地上に通っているケーブルを地下に引き込んだりとなにかと手間がかかる。さらに共同溝に空きがなければ道路を掘り返して新たな管を埋め込まなければならない。こういった工事費用は基本的に行政側の負担になるわけだが、付随する手続きなどでコストは若干増えざるを得ない。
どうやら自宅周辺の状況は、線を引くコストを跳ね上げるものばかり揃っているようだ。
■ 光のパワーだ! ブロードバンド貴族への茨の道が始まった!
さて、話は2001年夏まで戻る。先にも書いたとおり東京めたりっく以外にもADSLサービスが続々と始まり、それまで東京めたりっくのおかげでブロードバンド貴族として隆盛を誇った筆者がブロードバンド平民へと没落した頃でもあった(筆者周辺では、当時から回線が速いと位が高く、回線が遅い者は貧民として蔑まれるというネタがはやっていた)。しかし、筆者はそこであきらめてはいなかった。そのころもう1つ新しいインターネット接続サービスである光接続サービスを導入することにより、再びブロードバンド貴族に返り咲こうと画策したのだった。
当時の記憶を振り返ると、スタートから二つ返事で光導入が決定するということはなかった。まずNTTへ電話をしてみると、第一に青山局から明治通りの下までまだ光ケーブルが敷設されておらず、サービス提供までに時間がかかるということで敷設が終わるまで待つことになった。しかし、この“待ち”が3年以上に及ぶものになるとは当時の筆者は想像もしていなかった。
次回の原稿では、この思いもよらない長い“待ち”が発生した理由やその経緯、それをいかに解決したか、そんなところのエピソードをご紹介したいと思う。
2004/09/30 11:16
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戸塚直太郎 PC雑誌業界を流れに流れ、今やフリーランスのPCゲームライターに落ち着いた27歳。「そろそろ真人間に戻ろう……」と思いつつも、寝るのは3時4時が当たり前。何をやっているかと言えば、IRCのログに目を通しながら5人と同時にMSN Messengerで会話しつつ原稿を書くという、激しく能力の無駄遣いをしている気がする今日この頃。FPS専門ゲームサイト「ukeru.jp(http://ukeru.jp/)」を運営しつつ、新人PCゲームライターを育ててます。 |
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