まず最初にアクセスしていただいた方にお断りしておきたい。私自身はカメラマンであり、デジタルカメラや画像処理に関しては専門分野だが、いまだにWindows XPの使い方に関してはごく一般的な知識しかない。それなら「わざわざこんなところに出てくるな」とお叱りの言葉をいただきそうだが、写真や写真転送に興味のある方、もしくはプロのカメラマンとして仕事している方々に、参考になることがあるかもしれないと思い、書かせていただくことにした。
■ 大量のデータを日常的に送らなければいけない
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仕事で画像データのレタッチなどをする都合上、最新のPower Mac G5を導入した
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まず私のパソコン環境をご紹介しよう。事務所ではPowerMac G5をメインに使用し、地方ロケや海外取材などには小さめのWindowsノートパソコンを持って歩いている。Windowsノートパソコンを持ち歩いているのは、デジカメデータのバックアップ用と、遠隔地から東京にいるデザイナーや編集者にデータを送るためだ。
ADSL環境になる前は、デジタルカメラで撮影した画像データはCD-Rに焼いて、急ぎの場合はバイク便で送ったり、1日以上納期に余裕がある場合は、宅急便を利用したり自分でデータを届けたりしていた。ブロードバンド導入以前はアナログ回線でモデムを使用していたが、所詮画像データを送ることはできないため、ISDNの導入には至らなかった。
もともと銀塩写真の時代から、データでの画像加工はしていたし、キヤノンのEOS D30、D60など、初期からデジタルカメラを使っていたので、納品にはずっとCD-Rを使っていた。しかし2002年8月にYahoo!BBが12Mサービスを提供開始したのをきっかけにADSLを導入。これまでのCD-R納品からオンラインでの納品に切り替えることにした。
ADSLにしてからは、ジャストシステムのオンラインストレージサービス「InternetDisk」を使用して納品している。それも、加入しているYahoo!BBがさらに高速な24Mサービスを始めるようになったことでさらに便利になっている。現在はもっと速いサービスもあるが、今のところ24Mでもそれほどのストレスを感じていないため、たいていの場合は不満を感じずに使っている。その理由の1つは、事務所がNTTの収容局から100メートルほどしか離れていないという立地条件にあると思う。現在のサービスでも実用上十分な速度が得られているため、もっと高速なADSLサービスや光ファイバに変更する必要性をあまり感じないのだ。
デジカメで撮影したデータはメールに添付して送ることもできるが、データのサイズに限りがある。現在、仕事では主に約1,100万画素のキヤノン「EOS-1Ds」を使用している。1,100万画素のデータはさすがに大きく、JPEGでも数MB、RAWで撮影して印刷用のEPSデータに変換すると、1つのデータが十数MBから、数十MBになってしまうこともある。つまり1枚の画像ですら、メールに添付できる容量を簡単に超えてしまう。もちろんホームページにデータをアップすることもできるが、Yahoo!BBのホームページ容量は25MBしかないので、写真データを送付するにはもの足りない。
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IP電話、24Mbpsサービスにも対応したYahoo!BBのトリオモデム。無線LANにはヤマハのルータで対応
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ルータはヤマハのNetVolante RTW65b。当時AirMacに対応したものはこれしかなかった
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ノートパソコンは、無線LANでネットワークに接続している
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■ データの受け渡しに便利なオンラインストレージサービス
蛇足だが、オンラインストレージサービスについて説明しておこう。一言でいえば、インターネット上の専用スペースにデータを保存できる商用サービスだ。データの受け渡しには、やはりホームページを使うのが便利。すべてのクライアントがFTPを使えるわけではないが、ホームページ(Web環境)使えないところはまず存在しないし、Webブラウザが使えればデータを受け渡しできるからだ。私の場合は、InternetDiskに相手に渡す画像を入れておき、必要に応じて取り出してもらう。InternetDiskでは、プロバイダーのホームページ容量に比べ、大幅に容量が大きいのでデジカメで撮影した写真データを保存するのに適している。プロバイダーの容量では足りないが、サーバーを設置する知識もヒマもないという方にはおすすめできる。
相手への送付だけでなく、自分用に使うこともある。画像データを会社からアップロードしておいて、それを自宅や出先のパソコンでダウンロードして利用するのだ。これならCD-Rなどにいちいち焼いて持ち歩かなくても、データをどこでも使用できる。
写真好きの方なら、知り合いの写真仲間に自分の撮影した画像を公開するにも十分な容量があっておすすめできる。また、私のように日々の仕事に追われていてホームページを作るのが面倒だけど、写真をだれかに見せたいという場合も、このInternetDiskが自動的にサムネールを作成してくれる(その場合の画像データはJPGでなくてはならないが)。ホームページは面倒で作ったり更新したくない人でも、これなら簡単に写真を見せられるだろう。
ジャストシステムのInternetDiskには100MBから2GBまで容量が用意されていて、使用料を月極で315円~2,100円(税込み)で使用できる。私が利用している500MBなら、月々840円だけで利用できるので、宅急便でCD-Rを月に2回以上送っているならそれだけで十分もとがとれてしまう計算になる。オンラインストレージサービス、InternetDiskの詳細について詳しくは、ジャストシステムのInternetDiskサービス紹介を参照していただきたい。
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仕事でも使用しているジャストシステムのオンラインストレージサービス「InternetDisk」
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JPEG画像ならアップロードするだけで、自動的にサムネイルが生成されるので便利
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■ 撮影日の夜にはデータをアップロード
ここで話を私の仕事に戻そう。撮影はだいたい昼間が多いので、撮影後画像をチェックして、もしデザイナーやアートディレクターがすぐにデザインを始めたいという場合は、RAWデータJPEG画像を生成し(RAWデータのみで撮影している場合)、その日の夜にはデータをアップするようにしている。相手には、URLとID、パスワードをメールで知らせておけば、相手は好きな時間にダウンロードできる。
InternetDiskを使う場合は、もちろん相手もブロードバンド環境を持っていることが必須条件になってくる。私は500MBで契約しているが、容量をそれ以上に増やしていないのは、必要がないというより、500MBを超えるようなデータでは、ダウンロードに時間がかかってしまうため相手に迷惑がかかる場合もあることを懸念してのことだ。その場合はCD-Rに焼いて宅急便で送るようにしている。
また、ADSLを利用して大容量のデータをアップロードされた方ならわかると思うが、上り転送速度は下りに大して大幅に遅く、最大でも約1Mbps程度しか出ない。混み合う時間帯となると、体感でもはっきり遅いと感じることがある。それでも私が不自由を感じていないのは、データをアップする時はだいたい夜中だったり、画像処理が終わって最後に寝る前などだからだ。夕方などは食事の時間を利用してデータをアップロードしているが、パソコンの前にずっと座って待っているのでなければ、多少の遅さはそれほど気にはならない。
■ 海外取材ではホテルのネットワーク環境もチェックが必要
自宅でのデータ転送とは関係がないが、先月仕事でギリシャのアテネに撮影に出かけたときのこと。滞在したホテルにはADSL環境が整備されており、現地から写真データを編集部に送るため、80MB程度のデータをInternetDiskにアップしたのだが、速度が非常に遅く、数時間を要するという状況になってしまった。そのため、せっかくの豪華なベッドで寝ることができたのはわずか2時間程度、という残念な状況になってしまった。
もっとも、Yahoo!メッセンジャーで仕事仲間や友人とチャットができたため、国際電話代をかなり節約できたという常時接続のメリットもあった。これからアテネオリンピックが始まるが、海外取材などに出かける場合は、かなり念入りにホテルのインターネット環境を確認してから出かけないと、トラブルの種になってしまいそうだ。
旅先で、たとえばデジカメのメディアがいっぱいになっても、もう少しブロードバンド環境が日本でも世界でも発展すれば、パソコンを持ち歩かなくても、出先のパソコンからオンラインストレージサービスにデータをバックアップしながら旅が続けられる時代がもうすぐそこまで来ているように感じている。
■ 参考データ
接続事業者 | Yahoo! BB |
回線の種類 | ADSL 24M |
線路距離長 | 510m |
伝送損失 | 10dB |
プロバイダー | Yahoo! BB |
スループット | 下り4.34Mbps・上り939kbps |
■ URL
Yahoo! BB
http://bbpromo.yahoo.co.jp/
2004/07/01 10:52
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広路和夫 長野県出身。1958年生まれ。広告・建築・人物・雑誌撮影などのアシスタントを経験した後、広告制作会社のスタッフカメラマンを経て、30歳で独立。最近の撮影のほとんどはデジタルカメラを使用。自ら画像処理を施して納品している。 |
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