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筆者宅にて3製品を試用してみた
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7月にアイオーデータから「SlingBox」、ノバックから「どこでもTV for Skype」が相次いで発売された。両製品ともシステムは異なるが「海外からでも日本の自宅のテレビが見られる」というコンセプトの製品である。この2製品の前には、すでにソニーが2年前から同コンセプトの「ロケーションフリー(旧名ロケーションフリーテレビ/エアボード)」、略称「ロケフリ」を3製品リリースしている。
筆者は中国の滞在先に元祖の12.1インチモニタ付きロケフリこと「LF-X1」を長い間導入していたが、ここに来て同コンセプトの製品が2製品リリースされたので、海外からの、というより中国からの、さらに具体的には中国の一都市の筆者の家からの閲覧では、ロケーションフリーを含めた3製品でどれが一番快適なのかを検証してみた。
なお、今回の実験はインターネットによる映像の発信は日本で、受信は中国でしか行なっていない。中国のネット環境は、国策により一般的なネット環境と異なるところもあるので、一概に他国も同じ状況となるとは断言できない。そこはご了承願いたい。製品のレビューについては行なわない。ここでは、あくまで筆者の中国の家から視聴した場合のクオリティや、筆者の環境における設定のしやすさなどに着目したい。
なお、SlingBoxについては、Broadband Watchの清水理史氏の連載記事や、AV Watchの小寺信良氏の連載で紹介されている。また、他の2製品についても、同様に清水理史氏の連載で紹介済みだ(どこでもTV for Skypeはこちら、ロケーションフリーこちら)。それぞれの製品については、それらレビューをご覧いただきたい。
■ ストレスのない映像はSlingBox
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Slingbox本体と同梱物一式
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Slingbox背面
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さて、前置きが長くなってしまったが、最初に外国に滞在する日本人ならもっとも気になる点、肝心かなめの画面の滑らかさなどを紹介しよう。結論からいうと、滑らかさで言えば
1.SlingBox
2.ロケーションフリー
3.どこでもTV for Skype
という順番になった。とくに、SlingBoxは映像音声にストレスを感じない点で頭抜けているという印象だ。
筆者の経験では、中国でロケーションフリーを使うと、トラフィックが少ない深夜から午前中にかけてはストレスなく見られるのだが、午後からは映像はカクカク、音声も「ここここんんんんんにににちちちちちわわわわわ」といった具合になってしまい、ゴールデンタイムではそれにさらに輪がかかり視聴が極めて困難になる。ところがSlingBoxは今回調査を行なった限りでは映像がカクカクになることは、午前中はもちろんゴールデンタイムでも極めて少なかった(カクカクがないわけではない)。
どこでもTV for Skypeに関しては、残念ながら一番カクカクであった。しかし、Skypeがベースだけに音声が切れ切れになることはない。割り切って、日本語の番組そのものをバックグラウンドミュージックと思って流しておく、あるいはアナウンサーの音声のみ聞ければ満足という人であれば、ロケーションフリーよりもどこでもTV for Skypeのほうがいいかもしれない。
ロケーションフリーに関しては、発売して既に数年経っている利用者の多い製品のため、世界各地の日本人が導入してブログなどに感想を書いている。これから海外へ行く場合、滞在先でロケーションフリーがどの程度快適に見られるかは、googleやyahooなどで「ロケーションフリー 国名」といった形で検索して、実際の利用者の感想を読むと参考になるだろう。
機能面では、もちろん3製品全てがテレビ視聴が可能だが、ロケーションフリーおよびSlingBoxでは、HDDレコーダーなどを接続してHDDレコーダーに録画したコンテンツを視聴できるほか、録画設定など遠隔操作をすることも可能だ。レコーダーやプレーヤーの対応機種についてはファームウェアのアップデートにより随時対応機種が増えるので、購入前にソニーの「LF-PK1/PSP リモコン対応機種一覧」やSling Mediaの「リモコンサポート接続機器リスト」のページを確認して、対応機種を確認していただければと思う。
■ 設定の簡単さではどこでもTV for Skypeに軍配。ただし要PC
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どこでもTV for Skype
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どこでもTV for Skypeの本体と同梱物一式
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「海外で日本のテレビが視聴できる」という製品は、ITに精通した人からITに興味のない人まで、海外に在住する日本人なら誰もが欲しがる夢の製品だ。しかし、導入には日本の自宅に置くサーバーと、海外で起動するクライアントPCの両方の設定が必要となる。
PC側の設定はさして難しくないが、サーバー側の設定は個々のネットワークの環境も絡むため、状況によっては設定がかなり面倒になる。ITに詳しい人ならどの製品でも、もしもつまづく点があっても、ネットで調べるなりして努力と根性でどうにかするだろう。しかし、問題はITに疎い、興味がない人である。そうした人でも、簡単に設定できる製品はどれだろうか。
おそらく、最も簡単なのは、どこでもTV for Skypeだろう。ネットワークの設定は不要で、本製品とSkypeの導入さえしてしまえば後は説明書に従うだけで、すぐにPCでのテレビ視聴は可能だ。ただし、どこでもTV for Skypeの場合は、自宅でTVを見たいときに常に起動しているPCが別途必要となる。
SlingBoxとロケーションフリーは、設定の難易度ではどっちもどっちといったところ。どちらも設定時には、ネットワークの専門用語がたくさん登場する上に、ルータがいくつも家庭内で使われていると(多段になっていると)さらにややこしくなる。
ただしお金を払うことをためらわないならば、SlingBoxに関してはUPnP機能を持ったルータを導入すれば比較的に設定は簡単にできるし、ロケーションフリーに関しても、ソニーが設定サービスをオプションで提供しているので、さほど苦労しないはずだ。したがって、費用がかかってもかまわないという前提であれば、一番設定が面倒なのはSlingBoxということになる。
ロケーションフリーとSlingBoxに関しては、視聴するPCにソフトをインストール必要がある。一方どこでもTV for Skypeに関しては、視聴するPCにSkype以外の専用ソフトなどをインストールする必要はない。つまり、自前のノートPCや、腰を据えた長期滞在先でのマイデスクトップPCであればロケーションフリーかSlingBoxでもかまわないが、海外で転々としネットカフェでネットに接続するような人や、海外のさまざまな出向先で仕事をする人などの場合は、PCを利用するたびに専用ソフトをダウンロードしてインストールすることは難しい。そういう用途には、どこでもTV for Skypeのほうを薦めたい。
ちなみに、3製品ともマニュアルはダウンロード可能。海外にマニュアルを持っていく必要がないのは嬉しい。どこでもTV for SkypeとSlingBoxに関しては視聴用PCのソフトウェアもダウンロードできる(ロケーションフリーはPCでの視聴用ソフトが別売のため、ダウンロードは不可)。
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ロケーションフリー「LF-X1」背面
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左から、ロケーションフリー「LF-X1」(左)、「Slingbox」(中央)、「どこでもTV for Skype」(右)。どこでもTV for SkypeはVAIO TYPE Uをサーバーにしている
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■ 導入費用は(複数台PCがすでにあれば)どこでもTV for Skypeが安価
導入費用で比べてみよう。製品自身の実売価格で比べてみると
・どこでもTV for Skype 1万円弱
・SlingBox 3万円弱
・ロケーションフリー+PC用ソフト 3万円強
となる。ただし、どこでもTV for Skypeには、自宅に別途PCが必要となる。動作環境としては、CPU動作クロックが1.8GHz以上とのことなので、あまり古いPC(Windows 2000世代以前)では厳しいだろう。このPCを、海外にいる間、必要な時に常に電源をONにできるかどうかが鍵となる。SlingBoxとロケーションフリーに関しては別途UPnP対応のルータが必要(有線のみのルータで5,000円程度)となる。さらにロケーションフリーに関して設定をメーカーサポートに依頼する場合は、プラス15,000円程度の出費となる。
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さて、ここまで、画質・設定のしやすさ・価格など、いろいろな面から比較してきたが、それぞれに特徴があるので、一概にお勧めはこれ! というのは難しい。どこにウエイトを置くかでまったく変わってくることもある。
筆者の個人的意見としては、海外での映像のクオリティだけで選べばSlingBoxを、設定の確実性でいえばモニタなしロケーションフリーを、導入のし易さや現地で不特定多数のPCで利用するならどこでもTV for Skypeがお薦めということになる。また、「パソコンのモニタなんかで見たくない!」「リモコンでなくてはテレビを操作できない!」とPCに抵抗がある人に、海外で利用してもらうなら、ソニーの現行製品であるモニタ付きの旧ロケーションフリーことLF-X1を使うほか道はないだろう。
■ 新ロケーションフリーの画質に期待!
さて、上のようにまとめたところで、ソニーのロケーションフリー新製品が発表された。
新モデル「LF-PK20」は10月20日発売で、テレビをロケーションフリーのクライアントとして利用できる「ロケーションフリー TVボックス(LF-BOX1)」も同時発売されるという。新モデルでは画質の向上が図られたほか、学習リモコン機能も搭載されたそうなので、これから購入される場合は、待てるならば10月20日の「LF-PK20」の発売を待ち、発売早々に購入したユーザーのブログや掲示版などでの評判を確認してから、どれを購入するのがいいか検討する方がいいだろう。筆者も、新モデルが出たら機会を見て試してみようと思っている。
■ URL
「ロケーションフリー」製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/locationfree/index.html
「SlingBox」専用サイト
http://www.slingmedia.jp/
「どこでもTV for Skype」製品情報
http://www.novac.co.jp/products/hardware/vp-skype/nv-lf2000/index.html
2006/09/11 11:43
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山谷剛史 海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進しております。現在中国滞在中。 |
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