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その4「IEEE 802.11a/b/gって何を意味しているの?」
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その3「ダイナミックDNSって?」
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その2「グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレス」
[2004/07/12]
その1「PPPoEって何だろう?」
[2004/07/05]

その47「OFDMAの仕組みとOFDMとの違い」


OFDMAって何?

 OFDMAとは「Orthogonal Frequency Division Multiple Access(直交周波数分割多重アクセス)」の略です。「ちょっと待て、OFDMと何が違うんだ!?」という声が聞こえてきそうですが、この略語を見ている限り、前回取り上げたOFDMとの差が区別できないかと思います。

 実はOFDMもOFDMAも、大きな方式としてはほとんど変わりがありません。強いて言えば使っているパラメータ(というのも乱暴な言い方ですが)が異なる程度です。ただ、OFDMとOFDMAには互換性があるわけではなく、それぞれ長所とする点が違います。そこで、OFDMとOFDMAという形で名称を分けたというわけです。


1次変調と2次変調

 では両者にどんな違いがあるか、という話になるわけですが、ここでまた面倒な用語がいくつか出てきます。最初はこれらを説明していくことにしましょう。まず、1次変調と2次変調という用語があります。

 前回OFDMのときにはさらっと流したのですが、OFDMで送り出すデータは、生データそのものではなくデジタル変調を行なったデータです。この「デジタル変調」にあたるのが1次変調で、ここでまず元々のデータを加工してから、さらに2次変調で信号を送り出します。カラオケでボイスチェンジャーを使う場合を考えてもらえば良いのですが、ボイスチェンジャーで声の調子を変えるのが1次変調、それをアンプで大音量に増幅するのが2次変調というわけです。


図1:ASKの信号
 さて、この1次変調ですが、古くから知られているのは振幅変調(AM:Amplitude Modulation)と周波数変調(FM:Frequency Modulation)で、ラジオのAMとFMはここから来ています。ただ、コンピュータの場合、信号は0か1なので、それぞれ対応するのがASK(Amplitude Shift Keying、図1)、FSK(Frequency Shift Keying、図2)という方法になります。

 ASKやFSKはあまり馴染みはないのですが、モールス信号を使った通信がこのASKやFSKになります。これに加えてもう1つ、位相変調(PM:Phase Modulation)と呼ばれる方法があります。信号の位相を変えるというもので、これを応用した伝達方法としてPSK(Phase Shift Keying)という方法があります(図3)。図1~3で、信号が0と1のどちらに対応しているかを例示しましたが、こんな具合に波形を操作することで信号伝達を行なっているわけです。


図2:FSKの信号 図3:PSKの信号

図4:QPSK
 ただここまでの変調方式は、いずれも波形1回で1bitのデータを送っていたわけですが、もっと効率を上げる方法はないかということで登場したのが図4に示すQPSK(Quadrature PSK)です。図4を見ていただくとわかるのですが、2種類の正弦波(Sin:赤、Cos:青)を足すと、合計した波形は1つの正弦波(緑)に見えます。

 実はこの合成した正弦波は、あとでもう1度2つの正弦波に分解することが可能です。これを使うと図5のように、2つの信号をQPSK変調で1つの信号として送り出し、受け取った側がQPSK復調を使って2つの信号に戻す、ということが可能になります。


図5:QPSKの使い方

図6:8PSK
 つまり、2つの信号を同時に送れるようになったわけです。これをさらに拡張して4つの信号を同時に重ね合わせた8PSK(図6)、そして変調/復調がうまく合成/分離できさえすれば、無限に信号を重ねることが可能です。

 ただし、現実問題としてはあまり重ねすぎると分離が大変になるため、8PSKあたりが普通に使う上限ですが、これを超えるケースも稀にあります。1つの信号で1bitのデータを送れるので、QPSKならば2bit、8PSKならば3bitが同時に通信できることになります。


 ちなみにこの方式はPSKのみの専売特許ではなく、ASKを位相を変えながら重ね合わすQAM(Quadrature AM)という方式も実現されています。こちらはベースとなる波形がsinとcosのみですが、振幅のレベルに合わせて値を複数持たせることで、例えば16QAMだと同時に4bitを通信できることになっています。さらにこれを細かく分割した64QAMという方式もあり、こちらでは同時に6bitが通信できることになります。

 一方、2次変調ですが、これは前回説明した通りです。FDMA/TDMA/CDMAという3方式があり、OFDM/OFDMAではFDMAを拡張した形で利用しています。


OFDMとOFDMAの違い

 長い前振りが終ったところで、OFDMとOFDMAの違いにうつりましょう。OFDMとOFDMAは、1次変調と2次変調のどちらも、微妙に異なっています。IEEE 802.16-2004の場合、まず1次変調では以下のものがサポートされます。

OFDM : PSK / QPSK / 16QAM / 64QAM
OFDMA : QPSK / 16QAM / 64QAM

 OFDMでは最大64QAMまでサポートされていますが、PSKも一緒にサポートされていることからもわかる通り、信号の同時転送速度をあまり上げずにすます方向性に振られており、実際QPSKとかを使うケースが多いようです。一方、OFDMAでは効率の悪いPSKは省かれており、16QAM/64QAMの利用がメインです。

 そして、2次変調ですが、この方式自体は前回説明した通りで、どちらも原理は同じです。ところが周波数帯の使い方を見ると、OFDMは図7のように、集中的に帯域を使い切るわけですが、OFMDAでは図8のようにわりとまばらな使い方をしています。つまり、OFDMは信号の圧縮は軽めで、その分(相対的に)帯域を占有します。周波数利用の観点から言えばやや厳しい使い方ですが、その分送受信の際の1次変調/復調の負荷は軽めです。

 一方、OFDMAは周波数の占有には優しいわけですが、その分1次変調/復調の負荷は重くなっています。周波数占有の幅が少ない分を1次変調で補っていますから仕方がないことですが、処理が重いというのはそのまま消費電力増加に繋がり、ひいては電池寿命が短くなるという形でユーザーの使い勝手に影響してくるのが現在の問題でしょうか。そんなわけで、両者はよく似た技術であり、周波数帯域を取るか、処理の容易さを取るかという方向性の違いがインプリメントに反映されている、と考えれば良いでしょう。



図7:OFDMの周波数分布、図8:OFDMAの周波数分布(3サブキャリアの例)




2005/08/01 10:57

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。(イラスト:Mikebow)
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