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[2004/08/23]
その5「無線LANの問題とWEP」
[2004/08/09]
その4「IEEE 802.11a/b/gって何を意味しているの?」
[2004/08/02]
その3「ダイナミックDNSって?」
[2004/07/26]
その2「グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレス」
[2004/07/12]
その1「PPPoEって何だろう?」
[2004/07/05]

その93「10GBASEの種類(2)」


10GBASE-X/Tって何?

 前回取り上げた「10GbE(Giga bit Ethernet)」の中で、「10GBASE-W/R」を紹介しました。今回は残る「10GBASE-X」と「10GBASE-T」について、触れたいと思います。

 前回でも少し説明しましたが、10GBASE-Xは4対の信号線を使って10Gbpsを転送する方法で、1本あたりの転送レートはずっと低くなっています。また、10GBASE-TはUTPケーブルを使って転送する方法で、これも内部に4対の信号線があるわけですが、使われている技術は10GBASE-Xとまったく異なっています。ということで、以下個別に説明していきます。


10GBASE-X

図1:10GBASE-LXの構造
 まずは、10GBASE-Xについて説明します。この規格は8B10B符号を使い、4対の信号線にそれぞれ3.125Gbpsの信号を流すという方式です。8B10Bを使うと効率は80%なので、実質的な各信号線のデータレートは3.125×80%で、2.5Gbps。これを4本束ねて10Gbpsにするというわけです。

 その内部ですが、10GBASE-LXの場合は図1のようになっています。10GBASE MACから10GBASE RS経由で10G PCSにXGMIIを使って接続される、というところまでは同じなのですが、この時点で32bitのパケットを8bitずつ4つに分解します。

 実は前回少し説明を省略したのですが、10GBASE-W/RのPCSが64bit単位でデータを受け取ることから、XGMIIが64bit I/Fと誤解されているかもしれません。しかし、XGMIIそのものは32bit幅で、10GBASE-W/RではPCSは2サイクル分のデータを受け取ってから64B/66B変換を行なう、あるいは相手から受け取ったパケットを2回に分けて10GBASE RSに返すといった処理を行なっています。

 さて、話を10GBASE-LXに戻すと、8bitずつに分けられたデータは個別に8B/10B変換を受け、PMA/PMD経由で光信号に変換されます。問題はこの光に変換されるときで、波長が微妙に異なっているのがわかります。ちなみに1275/1300/1325/1350nmというのは概算値で、実際はもう少し細かな数字になっています(波長の間隔も25nmではなく正確には25.4nmなのですが、まぁそこまで細かい話は良いでしょう)。

 こうして4種類の光信号が出てくるわけですが、これを1つのファイバにまとめる「WDM(Wavelength Division Multiplexing)」というモジュールが追加され、最終的に1本の「MMF(Multi Mode Fiber)」に送り出される形となります。受け取る場合はWDMを逆に通って4つの光信号に分解されるというわけです。


 10GBASE-Xを使ったもう1つの規格である10GBASE-CXはどうかということで、こちらを図2にまとめました。10GBASE PMAまでの層は10GBASE-LXと違いがありません。ただ、こちらは銅線(同軸ケーブル)を使った配線なので、信号の多重などは原理的には不可能ではありませんが、信号の転送速度を考えるときわめて困難です。このため、素直に4本の信号線を「Twinax」と呼ばれる4対(正確には8対)のシールドケーブルを使って送り出すというわけです。なぜ正確には8対かというと、送信と受信で別のケーブルを使うからで、結果送受信それぞれ4対ずつで8対というわけです。

 ついでに書いておけば、ここまで説明してきた10GBASE-W/Rや10GBASE-LX4の場合、いずれも光ファイバは2本(送信と受信)になっています。これに比べると10GBASE-CX4は、内部的には8対ですが見かけはこれが1本に束ねられている上、一応銅線ということで光ファイバに比べれば配線の取り回しも容易になっており、結果として扱いが楽になっているのが特徴です。


図2:10GBASE-CXの構造

10GBASE-T

 次は10GBASE-Tです。承認が今年ということもあって、まだ製品などは皆無ですが、今後は10GBASE-CXに変わる形で普及することが期待されている規格と言えるでしょう。基本的に10GBASE-Tは、UTPケーブルを使って10Gbpsを実現するということが目的で、当初は既存のCAT5/CAT5eのケーブルを使って通信することが期待されていました。

 ところがこのアイディアは審議の早い時期に「技術的に無理」ということで却下され、それに加えてCAT6のケーブルでの利用も難しいということになりました。結果、CAT6a/6e/7という、従来はほとんど利用されていないUTPケーブルではないと利用できないということになり、1000BASE-Tの普及のシナリオ(既存の配線を生かしつつ、スイッチとエンドデバイスだけを1000BASE-T対応にすることでGbE環境が利用できる)は再現しないことが明らかになってしまいました。

 さて、まずはケーブルから説明します。図3はCAT5e~CAT7までの構造を簡単にまとめたものです。CAT5eまでは、要するに4対の撚り対線をまとめて外皮で覆う形状ですが、CAT6では間にスペーサーが入り、ケーブル内部での位置関係がずれないような工夫が追加されました。この外側に薄いシールドを追加したのがCAT6eです。CAT6aはこの改良版で、複数のケーブルを並べて接続したときに、隣のケーブルからの影響を抑えるために被覆の形状を縦長にしました。これにより隣接ケーブルと密着しても、実際の配線同士の距離が不定長になるため影響が減るというものです。一方、CAT7では、全体を網線の厚いシールドで覆い、さらに撚り対線ごとに個別のシールドも追加されています。

 これに加えて、配線の太さ自体もそれぞれ異なっています。

・配線太さ
CAT5e :5mm
CAT6 :6.5mm
CAT6e :7mm
CAT6a :7mm
CAT7 :8mm

 また、CAT6aでは撚り対の撚りの具合を撚り対ごとに変えるといった工夫もなされています。実のところ100mという10GBASE-Tの最大伝送距離を実現できるのはこのCAT6aとCAT7のみ。CAT6eでは55mが上限となっています。理論上は、もっと距離が短ければCAT6やCAT5eでも伝送可能に思えますが、10GBASE-Tではトレーニング機能(通信を開始する前に低速で通信を行ない、その際のエラーレートから通信回線の状態を把握する)が含まれたので、実装によってはこうした規格外ケーブルは排除されてしまうかもしれません。


図3:CAT5eからCAT7の構造

図4:10GBASE-Tの構造
 さらに、通信方式も独特です。MAC層とXGMIIで接続すること自体は変わりませんが、その下はまるで異なります。1000BASE-Tでは信号を5値にすることで効率的なデータ通信を目指しましたが、10GBASE-TではPAM16、つまり電圧は16段階の可変となりました(図4)。これにより、1サイクルあたり4bit分のデータを送れる計算になります。また、信号の変調には128DSQと呼ばれる方法が利用され、これにより2シンボルで7bit分のデータが表現されます。信号自体の速度は200MHzで、この結果として“生の”データ転送レートは以下のような計算になります。

200MHz×7bit÷2シンボル×4bit×4対=11.2Gbps

 “生の”と書くのは、実際はもう少し低いからです。このPAM16と128DSQを組み合わせた状態でのデータのエラーレートは、10の-2乗bitのオーダーと言われます。つまり、100bit送ると1bit以上がばける、という話でいくらなんでもこれでは使い物になりません。そこでエラー訂正のために「LDPC(Low Density Parity Check)」と呼ばれる符号を使ってこれを補うことにしました。これを使うとエラーレートが10の-12乗bit、つまり116.4GBytes程度を転送すると1bit以上が化けるところまでエラーを押さえ込むことに成功しました。

 ネットワークの世界では、これだけエラーレートが低ければ十分で、あとは上位層でカバーできます。ただこのLDPCを使うと、1,723bitのデータを送るのに2,048bitが必要になります。そこで、実効転送レートはおおよそ9.4Gbpsというあたりになります。そんなわけで厳密には10Gbpsを満たしていないとも言えるのですが、この程度であれば十分ということでしょう。


10GBASE-LRM

 最後に10GBASE-LRMに触れたいと思います。これは10GBASE-LX4を置き換えることを目的とした規格です。要するに10GBASE-LX4に使われるWDMを小型化・低価格化するのが難しいので、WDMを使わずに10Gbpsを実現しようというものです。

 名前が示す通り、長距離通信用のレーザーと短距離通信用のMMFを組み合わせるものですが、このままだとケーブルの特性的に十分な波形伝達特性が得られず、信号の速度を上げられません。そこで、「EDC(Electronic Dispersion Compensation:電子分散補償)」と呼ばれる技術を使い、崩れた波形を受信側で復元することで、10Gbpsのデータレートを確保するというものです。ちなみに想定している光ファイバは、かつてFDDIなどに使われていた安価なもので、これで最大220m(300mという数字もあり、最終的にどちらになるかは判りません)まで伝達可能にする予定です。

 この10GBASE-LRM、IEEEにおいてもIEEE 802.3aqとして審議中ですが、現時点ではドラフト 4.0が否決されたという状態で、標準化が成立する時期は現在明確に見えていません。その一方、10GBASE-LX4対応製品が2004年末あたりから次第に登場しつつあり、今後10GBASE-LRMの標準化が完了しても、10GBASE-LX4のマーケットを置き換えられるかはという点では疑問視する声も出ているのが現状です。


2006/09/11 10:54

槻ノ木 隆
 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。(イラスト:Mikebow)
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