■ グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスとは?
インターネット全体からアクセスできるアドレスをグローバルIPアドレス、自分のLAN内でのみ利用できるアドレスをプライベートIPアドレスと言います。
■ そもそもIPアドレスとは?
ご存じの通り、インターネットに接続するためには、IPアドレスというものが必要です。言ってみれば住所のようなもので、IPアドレスには以下のようなルールがあります。
・インターネットに接続されたすべての機器は、IPアドレスが割り振られていること
・IPアドレスは重複しないように割り振られなければならない
これは当然の話で、「住所不定」では郵便を届けることができませんし、同じ住所が100も200もあったら、区別ができないからです(1部屋に100人も200人も詰め込まれていたらどうするんだ? という怖いシチュエーションは、考えない方向でひとつ……)。
ところが、このIPアドレスは有限だったりします。現在主流のものはIPv4と呼ばれていますが、これは2桁の16進数×4の組み合わせで作られています。フォーマットとしては「aaa.bbb.ccc.ddd」という形式で示され、aaa/bbb/ccc/dddのいずれも、0~255までの範囲に入っていなければなりません。
例えばBroadband WatchのURLである「http://bb.watch.impress.co.jp/」は「210.173.173.66」となっており、PC Watch(http://pc.watch.impress.co.jp/)の場合は、「210.173.173.73」となっています。このBroadband WatchのIPアドレスやPC WatchのIPアドレスは、インターネット全体で一意に決まるようになっているので、世界中どこからアクセスしても、間違いなく到達できるようになっています。こうしたアドレスを、一般にはグローバルIPアドレスと呼んでいます。
■ グローバルIPアドレスの問題
Broadband WatchのURLは、世界中からアクセスできることを目的にしていますから、グローバルIPアドレスを取得する必要があるわけですが、このグローバルIPアドレスというのは無限ではありません。総数としては256×256×256×256=4,294,967,296というわけで約42億個ほどある計算になりますが、World PopulationというWebサイトを見ると、すでに世界の人口は64億人ほど居るらしいので、既に1人1アドレスは行き渡らない計算になります。これでは不公平になりますね。
もう少し現実的な話をしましょう。例えば、パソコンショップでPCでもルータでも何でも良いのですが、購入してきたとします。それをインターネットに繋ぐためにグローバルIPアドレスが必要だったりすると、まずはこのグローバルIPアドレスを申請して入手しなければいけません。
前にも書いた通りIPアドレスは重複してはいけませんので、これを重複しないように割り振る必要があります。この割り振りを行なっているのがNIC(Network Information Center)という組織で、日本だとJPNIC(正式名称:社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)がこれを行なっています。
ここにある「IPv4アドレスの申請」の手続きに沿って割り当てを受けることになるわけですが、自分がプロバイダー事業をはじめるというのであればともかく、通常は自分が契約しているプロバイダーからIPアドレスを貰うのが一般的でしょう。
しかし、グローバルIPアドレスは普通貰えたとしても1契約で1個です。複数個のグローバルIPアドレスが欲しいと思った場合にはそれなりの契約が必要ですが、筆者が知る限り大体月あたり数万円という費用が発生します。どう考えてもこれは割高につきます。
■ プライベートIPアドレス
値段の話はともかく、グローバルIPアドレス「だけ」では日常的に不便が多い、という話は以前から認識されていました。アドレスの枯渇に関する問題もさることながら、新しい機器を持ってくるたびにグローバルIPアドレスを重複しないように割り振るのは非常に面倒です。
また、そもそもインターネット全体にその機器を公開する必要があるかどうか? という問題もあります。ネットワーク全体に自分のネットワークプリンタを公開したところで、せいぜいが嫌がらせのプリントアウトが多発する程度でしょう。こういった“インターネット全体に公開する必要がない”機器に、グローバルIPアドレスを割り振る必要性はありません。
こうした目的のために用意されているのが、プライベートIPアドレスです。具体的に言えば
10.0.0.0 ~10.255.255.255 (クラスA:16,777,216個)
172.16.0.0 ~172.31.255.255 (クラスB: 1,048,576個)
192.168.0.0~192.168.255.255 (クラスC: 65,536個)
という範囲のIPアドレスは、グローバルIPアドレスとして利用する事が禁止され、各人が自由に利用できるアドレスとなっています。ただ「自由に」といっても制限があり、この範囲のIPアドレスを使ってインターネットに接続する事は禁止されています。
■ プライベートIPアドレスの使い方
では、どのようにプライベートIPアドレスを使ってインターネットと接続するかという事になりますが、大きく2種類の方法があります。自分が契約しているプロバイダーがそもそもプライベートIPしか割り振ってくれない場合は、ユーザーのPCは最終的にプロバイダーのゲートウェイまでこのプライベートIPを使って接続する形になります(図1)。ここでゲートウェイがプライベートIPとグローバルIPの変換を行なってくれるので、インターネットと通信が行なえるという仕組みです。
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図1「プロバイダーからプライベートIPのみが配布される場合」
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ただし、この方式だとユーザーのPCはインターネットからまったく見えなくなるので、一部のネットワーク対戦ゲームやメッセンジャーサービスは、この環境で使う事はできません。
一方、プロバイダーによってはユーザーのところまでグローバルIPアドレスが配布されている場合があります。この場合、もしPCが1台“だけ”ならば、直接モデムにPCを接続し、PCにグローバルIPアドレスを割り振れば良いのですが、複数台のPCがある場合には図2のようにルータにグローバルIPを割り当て、ここでNAT/NAPTなどを用いてPC側のプライベートIPアドレスとの変換を行なうのが一般的です。これを行なう場合、例えばメッセンジャーサービスやネットワーク対戦に必要な分に関してはポートフォワードを利用して特定のPCに割り振る形を取ります。
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図2「プロバイダーからグローバルIPが配布される場合」
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こうしたことをいちいち設定しなければならないのが、現状のプライベートIPアドレスの問題の1つで、これを解決するためUPnP(Universal Plug &Play)という規格が提唱され、一部の製品では利用できるようになっています。しかし、根本的にはグローバルIPアドレスの数を増やす必要があり、IPv6という新しいIPアドレスの規格の普及を進めることが必要になってきます。
ただ、ここまで話を広げると文章が収まらなくなりますので、とりあえず今回はここまでにして、UPnPについては項を改めて説明したいと思います。
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びび(右):
ブロードバンド用語を習得すべく、日々学習中の小学生。何とか自力で学ぼうとはしているが、結局はワーズに助け船をだしてもらっている。
ワーズ(左):
言葉がキツくなるときもあるが、基本的には面倒見の良いお姉さんタイプ。びびとは家も近いこともあり、昔から何かと世話を焼いている。びびからは「ワーズさん」と呼ばれ、慕われている。 |
2004/07/12 11:27
槻ノ木 隆 国内某メーカーのネットワーク関係「エンジニア」から「元エンジニア」に限りなく近いところに流れてきてしまった。ここ2年ほどは、企画とか教育、営業に近いことばかりやっており、まもなく肩書きは「退役エンジニア」になると思われる。(イラスト:Mikebow) |
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