IPv6を利用したサービスは、実際に提供されています。NTT東日本のFlet's.Netを中心に、サービスとIPv6の関係を見てみましょう。
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現状、IPv6は研究目的での利用がほとんどですが、NTT東日本のFlet's.NetやNTT西日本のフレッツ・v6アプリのように、実際のサービスとしての提供が開始されているケースもあります。
これらのサービスでは、IPv6の特徴を活かして、P2Pでのファイル転送やデータ共有、テレビ電話、ブロードバンド放送サービスなどが楽しめます。たとえば、ブロードバンド放送サービスでは、IPv6により、ネットワーク上の負荷をかけずに大規模な映像配信ネットワークを構築できるようになっています。
なお、実際にサービスを利用するには、IPv6に対応した通信機器やパソコンへのIPv6のインストールなどが必要です。
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■ 実際のサービスとして利用されているIPv6
前回、IPv6の概要について紹介しましたが、インターネットで利用されているプロトコルは依然としてIPv4が主流のため、まだ身近に感じることができないという人も多いでしょう。そこで今回は、実際のサービスとして利用されているIPv6を紹介していきましょう。
IPv6は、一部のプロバイダーなどで利用できますが、実際のサービスとして運用されているもっとも身近な例としては、NTT東日本のFlet's.NetやNTT西日本のフレッツ・v6アプリが挙げられます。
NTT東西では、これまで地域IP網、フレッツ網などと呼ばれる専用ネットワークを利用して、フレッツユーザー向けにコンテンツ配信などのサービスを提供しています。このネットワークで提供されているIPv6のサービスが、前述したFlet's.Netやフレッツ・v6アプリです。
具体的には、インスタントメッセンジャーのような専用ソフトを利用したファイル転送やファイル共有、テキストチャットなどのコミュニケーションサービス、「フレッツフォン」と呼ばれるテレビ電話サービス、「4th MEDIA」や「オンデマンドTV」などのブロードバンド放送サービスがIPv6を利用して提供されています。
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NTT東日本のFlet's.NetやNTT西日本のフレッツ・v6アプリで提供されているIPv6サービス。大容量ファイル転送やチャット、テレビ電話などのコミュニケーションサービスやブロードバンド放送サービスを利用できる
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前回、IPv6では非常に多くのIPアドレスを利用できるという特徴を説明しましたが、これらのサービスではその特徴を活かしたものです。従来のIPv4の場合、ルータのWAN側に割り当てられた1つのIPアドレスをさまざまなアプリケーションや端末で共有する必要がありましたが、IPv6では端末ごとにIPアドレスを割り当てることで、直接通信によるPC間のファイル転送や、テレビ電話サービスなどを実現しています。
■ マルチキャストで効率的な映像配信ネットワークを実現
このように、IPv6を利用することで、たくさんの機器を自由に(NATの制限などを考慮せずに)利用できますが、ファイル送信やテレビ電話であれば、現状のインターネットでもメッセンジャーソフトなどを利用すれば実現できます。ここで、IPv6で興味深いもう1つの特徴を紹介しておきましょう。前述したブロードバンド放送サービスで利用されている「マルチキャスト」と呼ばれる技術です。
ブロードバンド放送サービスには、レンタルビデオのように見たい映像を選んで再生するオンデマンドサービスと、ケーブルテレビやCS放送と同様の専門チャンネルを見られる放送サービスの2種類があります。このうち、放送サービスは、一定のタイムテーブルに従って番組が放送されるため、ネットワーク上に複数の視聴者がいた場合、それぞれのユーザーに同じ映像データを配信します。
ここで問題になるのがネットワークのトラフィックやサーバーの負荷です。たとえば、ネットワーク上に100人の視聴者がいて、すべての人がブロードバンド放送サービスで同じチャンネルを見ていたとしましょう。これを映像を配信するためのサーバーと端末の1対1の通信(ユニキャスト)で処理するのはあまり効率的ではありません。送るのはまったく同じデータ(現在放送されている番組の映像データ)でありながら、それを100人のユーザーそれぞれに個別に、しかも同時に配信しなければならなくなってしまいます。
そこで登場するのがマルチキャストです。マルチキャストは文字通り、複数の端末に向けて発信される通信のことです。ユニキャストが1対1の通信であるのに対して、マルチキャストは1体多の通信が可能となっています。
具体的には、特定のグループ(同じチャンネルを見ているユーザー)に対して、サーバーからデータ(パケット)を送信すると、それが経路上のルータでコピーされながら目的の端末まで配信されます。
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マルチキャストでは、1つのパケットが経路上で複製されながら端末まで送り届けられる。これによりネットワークのトラフィックやサーバーの負荷を軽減できる
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サーバーから配信するのはたった1つのデータですから、複数のユーザーが同じチャンネルを視聴してもサーバーの負荷はあまりかかりません。また、そのデータが経路上で複製されますので、ネットワークの負荷も防ぎながら効率的なデータの伝送ができるのです。
このようなマルチキャストは、IPv4でも実現可能な技術ですが、IPv6ではマルチキャストの利用がはじめから考慮されているのが特徴です。前回、コマンドプロンプトでIPv6のアドレスを見る方法を紹介しましたが、この画面をよく見ると「multicast」というアドレスが表示されていることがわかります。また、マルチキャストではルータでパケットを複製する必要がありますが、IPv6に対応したルータはこの機能を標準で搭載しているため、ネットワークを構築するコストも低減できるメリットがあります。
■ IPv6を利用するには対応ルータが必須
このように、次世代の技術と言われているIPv6ですが、実際にはすでに身近に利用されています。では、実際にIPv6を利用するにはどうすればいいのでしょうか?
「Flet's.Net」や「フレッツ・v6アプリ」の利用には、当然、サービスの申し込みが必要ですが、このほかに家庭内の通信機器もIPv6に対応させる必要があります。具体的には、IPv6ブリッジ(IPv6アドレスの取得や通信を可能にする機能)に対応したルータを用意し、パソコンにもIPv6プロトコルをインストールしておく必要があります。
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IPv6の利用には、IPv6ブリッジに対応したルータを利用し、パソコンにもIPv6をインストールしておく必要がある
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ただし、「Flet's.Net」や「フレッツ・v6アプリ」などでは、事業者からレンタルされるルータがIPv6ブリッジに対応しており、セットアップユーティリティなどを利用することで、手軽にIPv6を設定できます。フレッツシリーズを利用しているユーザーは、試してみるのも良いでしょう。
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2005/12/09 11:23
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