NTT東日本の「Flet's.Net」、NTT西日本の「フレッツ・v6アプリ」など、IPv6を利用したサービスが登場し始めてきました。IPv6とはどのような技術で、どんな特徴があるのでしょうか?
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IPv6は、現在、インターネット上での通信に使われている「IPv4(IPバージョン4)」を改良した次世代のインターネットプロトコルです。その特徴は膨大なアドレスの数にあります。IPv4で割り当て可能なIPアドレスの数は2の32乗(約43億個)でしたが、IPv6では2の128乗個という途方もない数のアドレスを利用できます。
このほかにも、IPv6には設定が簡単(アドレスが自動的に決まる)だったり、高度なセキュリティ機能を備えていたり、映像配信などに向いているといった特徴もあります。
このようなIPv6は、その形式も現在のIPv4とは異なり、「2001:c90:c11:2:207:40ff:fedd:f5c1」のような16進数を「:」で区切った英数字で表現されます。
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■ IPアドレスが足りなくなる?
私たちが手紙を送るとき、封筒やはがきには宛先として相手の住所を書きます。これと同じように、インターネットで通信する際の宛先として利用されるのがIPアドレスです。
ブラウザでホームページを表示するときには、IPアドレスではなくDNSによって変換されたURLを利用しているために、普段はあまり意識することはありませんが、「192.168.0.1」といった数字の羅列を、ルータの設定画面などで一度は目にしたことがあるかもしれません。
このIPアドレスが、将来的には枯渇する可能性が心配されています。現在、インターネットでは、IPv4(IPバージョン4)というプロトコルが利用されていますが、このIPv4で利用可能なIPアドレスの数は、約43億個(実際には特定の用途に使われるものがあるためさらに少ない)です。仮に世界の人口約60億人にそれぞれIPアドレスを割り当てたとしてもすでに足りない計算であり、人間だけでなく家電などの機器がネットワークにつながることを考えても、将来的にIPアドレスが足りなくなる可能性があるのです。
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インターネットの普及、ネットワーク機器の増加により、IPアドレスは将来的に不足する可能性がある。現状はNATで対処できているが、双方向通信などの課題もある
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もちろん現在のIPv4でも、NATという仕組みを利用することで、IPアドレスを有効に利用しています。NATは、インターネット上で利用するグローバルIPアドレスと、家庭内や企業内で利用するプライベートIPアドレスを相互に変換する技術のことで、家庭の中ではルータなどに搭載されている機能です。
NATを利用すると、WAN側に割り当てられた1つのグローバルIPアドレスをLAN内の複数の機器で共有できます。このため、端末1台ずつにグローバルIPアドレスを割り当てるという無駄を省き、IPアドレスの枯渇を防ぐことができるのです。
しかしながら、NATには外部から家庭内やLAN内の機器に直接アクセスできないといった問題もあります。将来的に、パソコンや家電といった家庭内のあらゆる機器がネットワークに接続するような世界を目指す場合、たとえば外出先からネットワーク経由でエアコンのスイッチを入れるといったように、外部からのアクセスも実現する必要があります。このような場合、機器ごとにグローバルIPアドレスを割り当てれば、やはりIPアドレスの枯渇が問題になってしまいます。
■ IPアドレスの問題を解決するIPv6
そこで登場するのが、今回のテーマである「IPv6」です。IPv6はIPv4をベースとした次世代のインターネットプロトコルで、その膨大なIPアドレスの数に特徴があります。
IPv6は、32bitだった従来のIPv4のアドレス空間が128bitにまで拡張されています。このため、利用可能なアドレスの数を2の32乗個(=約43億)から、一気に2の128乗個(340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456個)という途方もない数に増やすことができるのです。
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IPv4とIPv6の最大の違いは、利用可能なIPアドレスの数。アドレス空間が128bitに拡張されたIPv6では途方もない数のIPアドレスを利用できる
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このように、膨大な数のIPアドレスが使えるようになれば、たとえ世界中の人が1人あたり数十台、いや数百台の端末にIPアドレスを割り当てても足りなくなる心配はないというわけです。
■ IPv6のアドレスを見てみよう
では、128bitに拡張されたIPv6のIPアドレスとはどのようなものなのでしょうか? これまでのIPv4では、「192.168.0.1」のように3桁の数字を4つ組み合わせたものが利用されていました。
これに対して、IPv6では128bitの2進数の数値を16進数に変換し、これを4けたごとにコロン(:)で区切って表現しています。具体的には、以下の図のような形式となります。
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IPv6アドレスの簡単な仕組み。MACアドレスをベースにリンクローカルアドレスが作成され、そこにネットワーク構成を表すプレフィックスを付加してグローバルアドレスになる
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IPv6のIPアドレスは、ネットワークアダプタに割り当てられているMACアドレスから自動的に生成します。。MACアドレスは48bitのですが、これを64bitに変更し、さらに先頭部分の値を変更した上で、「fe80::」という前置記号を付けたものがリンクローカルアドレスです。ただし、リンクローカルアドレスは、同一ネットワーク上でのみ有効なアドレスのため、そのままではインターネットとの通信はできません。
そこで、「fe80::」の前置記号を除いた64bit部分に、ネットワーク構成を表すプレフィックス(64bit)を付加することでグローバルアドレスを生成し、これでインターネットとの通信が可能になります。
このように、端末自らがIPアドレスを生成できるのもIPv6の特徴の1つと言えます。IPv4では、手動でIPアドレスを設定するか、ルータなどのDHCPサーバーからIPアドレスを取得する必要がありましたが、IPv6ではこれらが自動的に行なわれます。このため、ネットワークの設定が簡単になるというわけです。
なお、IPv6の利用環境で自分のIPアドレスを確認したい場合は、以下のように「ipv6」コマンドを利用します(Windows XPの場合)。「ipv6 if」と入力すると、現在のリンクローカルアドレスやグローバルアドレスが表示されます。
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Windows XPにIPv6をインストールすると、コマンドラインからIPv6のアドレスを確認できる。画面中段より下の「ワイヤレス ネットワーク接続 2」の部分にIPv6のアドレスが表示されている
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IPv6には、現在のIPv4とは異なる仕組みですが、このほかにもいくつかの特徴があります。このあたりは、実際のIPv6サービスを踏まえて、次回説明することにしましょう。
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2005/12/02 10:55
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