前回紹介したVDSLのほかに、マンションなどの集合住宅で利用できるのが無線方式のFTTHです。どのような仕組みを使うと、無線でFTTHを利用できるのでしょうか?
|
|
|
|
|
建物まで光ファイバを引き込むことができないケースで利用されるのが、無線方式のFTTHです。建物近くの電柱まで光ファイバを敷設、無線LANのアクセスポイントを設置します。ユーザーはマンション側のベランダなどにアンテナを設置することで、宅内と光ファイバを無線で接続します。
利用される規格は事業者によって異なりますが、26GHz帯のFWA、もしくは5GHz帯のIEEE802.11aを利用して最大30~40Mbpsの速度を実現できます。
|
|
|
|
|
|
■ 光ファイバの敷設が困難なケースで利用
マンションなどの集合住宅では、ほとんどの場合、VDSLによってFTTHを利用できます。しかし、ごく一部の建物では、VDSLの利用すら困難なケースがあります。前回で解説したように、VDSLを利用するためには、建物の共有部分などまで光ファイバを敷設しなければなりませんが、建物周辺の環境によって光ファイバを敷設できない場合があるのです。
たとえば、地下の配管の太さが問題になるケースがあります。マンションなどの集合住宅では、地下の配管を通じて、建物内部の共有部分まで光ファイバを敷設することがありますが、この配管に光ファイバを通すだけの余裕がない場合があります。また、近くの電柱などから建物の間に別の建物があるような場合も、光ファイバの敷設は困難です。
このような建物の場合に利用されるのが、無線方式のFTTHです。無線方式のFTTHの場合、建物と光ファイバの間を無線で接続できますので、前述した配線の問題をクリアできます。具体的には、建物近くの電柱などに無線のアクセスポイントを設置し、加入者宅のベランダなどに設置したアンテナで、光ファイバと各住戸の間を接続します。家庭内の無線LANを、屋外にスケールアップしたようなものだと考えれば良いでしょう。
|
無線方式のFTTH。光ファイバと各住戸の間を無線で接続
|
■ ベランダに設置したアンテナを経由して接続
無線LAN方式のFTTHのメリットは、VDSLなどと異なり、建物の共有スペースや配管を利用する必要がないということです。前述したように、接続に必要になる設備は、ベランダなどに設置するアンテナ、アンテナから宅内に引き込む配線(エアコンのダクトなどを利用して引き込むのが一般的)、宅内に設置する通信装置のみとなります。
VDSLのように建物の共有スペースを利用する場合、家主や管理組合の承認が不可欠です。ベランダも規約によって共有部分扱いとされているケースが多いですが、VDSLで利用するような集合住宅内の共有スペースに比べれば、利用するための敷居は低いと言えるでしょう。
■ 速度は最大30~40Mbps。VDSLより劣る場合が
このように、手軽にFTTHを導入できる無線方式ですが、速度に関してはVDSLよりも劣ります。VDSLなどではすでに下り最大100Mbpsの技術が実現され、条件さえ整えば、FTTHの速度を活かしきることができますが、無線方式では最大30~40Mbpsが限界です。
実際に利用される方式は、NTT東日本のBフレッツが26GHz帯のFWAで下り最大46Mbps/上り32Mbps、TEPCOひかりが5GHz帯のIEEE 802.11a(5.03~5.091GHzの周波数を利用するため、一般のIEEE 802.11aとは異なる)で、上下ともに最大30Mbpsの速度となります。
もちろん、この速度は理論上の最大値ですので、電波の受信感度や利用者の数などにより、その速度が低下することがあります。いずれにせよ、100MbpsというFTTHの能力を活かしきることはできないでしょう。
また、料金的にもVDSLに比べると高い場合があります。以下の表はNTT東日本のBフレッツとTEPCOひかりの各方式の料金を比較したものです。TEPCOひかりの場合、VDSL方式でも、無線方式でも月額料金に差はありませんが、Bフレッツの場合はVDSL方式よりも、無線方式の方が月額料金が高く設定されています。
サービス名称 |
通信方式 |
初期費用 |
月額料金 |
機器利用料 |
屋内配線利用料 |
ISP費用 |
月額費用合計 |
Bフレッツ |
VDSL(100Mbps プラン1) |
11,340円 |
3,045円 |
420円 |
- |
1,953円 |
5,418円 |
ワイヤレス方式 |
11,340円 |
3,675円 |
1,365円 |
- |
1,953円 |
6,993円 |
ニューファミリー(参考) |
15,068円 |
4,725円 |
945円 |
210円 |
1,953円 |
7,833円 |
TEPCOひかり |
VDSLタイプ(100Mbps) |
21,525円 |
3,759円 |
630円 |
- |
- |
4,389円 |
無線タイプ |
15,225円 |
3,759円 |
630円 |
- |
- |
4,389円 |
ホームタイプ(参考) |
33,075円 |
5,859円 |
945円 |
- |
- |
6,804円 |
※プロバイダーにBIGLOBEを利用した場合。
※BフレッツではIP電話セット割を適用、パック料金は適用せず計算 |
|
BフレッツとTEPCOひかりの料金比較
|
さらに、事業者側は、無線方式をVDSLが使えない場合の特別な手段として位置づけていることもあり、VDSLが利用可能な場合は、VDSLを勧められることも多いようです。ユーザーの希望により選択するサービスではなく、さまざまな条件によって選択されることがある救済策的なサービスだと考えた方がいいでしょう。
■ 関連記事
・ NTT東西、26GHz帯の無線を用いた光ファイバサービスを開始
・ TEPCOひかり、上下最大30Mbpsの「5GHz無線タイプ」を12月1日より開始
2005/01/21 10:59
|