平成電電の「CHOKKA」やKDDIの「メタルプラス」、日本テレコムの「おとくライン」など、いわゆる直収サービスの固定電話はどういうサービスで、どんなメリットがあるのでしょうか。
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料金だけを比較すれば、直収サービスは基本料、通話料ともにNTT東西の固定電話サービスよりも割安です。通話料を下げるという意味ではIP電話も注目されていますが、直収サービスではアナログ回線のままでも既存の「0AB~J」番号がそのまま利用できる上、キャッチホンやナンバーディスプレイなど豊富な付加サービスが用意されていることを考えると、電話としての使い勝手はIP電話より高いと言えるでしょう。
ただし、直収サービスにも「0570」「0088」「0077」など、現状は通話できない番号がいくつかある点には注意が必要です。ダイヤルアップでアクセスポイントに接続する、CS/BSチューナーの回線として利用する、チケットなどの購入で電話をかけるなど、特定の用途に使えなくなる場合もありますので、慎重な検討が必要でしょう。
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■ 直収サービスとは
平成電電の「CHOKKA」、KDDIの「メタルプラス」、日本テレコムの「おとくライン」などのように、NTTの回線を経由せず、直接、ユーザー宅と事業者との間を結ぶ電話サービスが、いわゆる「直収電話サービス」です。
これまでの固定電話でも、「マイライン」や「マイラインプラス」によってNTT以外の事業者を使って電話をかけることができましたが、これらはNTTの回線を経由してから、ほかの事業者に転送されるという仕組みでした。このため、電話回線の基本料金はNTTに、通話料は契約している事業者に支払うといったように、あくまで両方のサービスを併用する必要がありました。
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マイライン、マイラインプラスでは一部分のみ他事業者を利用する形態であったが、直収サービスではすべてにおいて契約事業者の回線を利用する
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これに対して、直収サービスでは契約した事業者の電話回線を利用します。これにより、基本料も通話料もNTTに対してではなく契約した事業者に支払うというように、完全に電話会社を別事業者に移行します。
回線がNTTではなく別の事業者になるということから、大規模な工事が必要になると思われるかもしれませんが、実際にはユーザー側が意識するような工事はほとんどありません。これは、「ドライカッパー」という仕組みを利用しているからです。ドライカッパーとは、他の通信会社の回線を借り受けてサービスに利用できる仕組みで、日本国内ではNTT東西の電話回線を利用して他の事業者がサービスを提供することができます。このため、回線の工事は必要なく、NTT局内の設備工事だけで他の直収電話サービスを利用できるのです。
■ 基本料、通話料が安くなる
では、直収サービスのメリットは、どこにあるのでしょうか? 最も大きいのは基本料金や通話料が、NTTの固定電話サービスよりも安くなるという点です。基本料に関しては、数十円~数百円程度、通話料に関しても0.5円~1.7円程度(3分あたり)安くなります。実際の料金は、事業者によって異なりますが、以下の表のように、ほぼ安くなると考えて差し支えありません。
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通常サービス |
マイライン系 |
直収サービス系 |
NTT東日本 |
NTTcom |
KDDI |
平成電電 |
日本テレコム |
通常 |
割引サービス利用 |
プラチナライン |
メタルプラス |
CHOKKA (基本プラン) |
おとくライン (Aプラン) |
おとくライン (Bプラン) |
加入権(施設設置負担金) |
37,800円 |
不要 |
不要 |
不要 |
不要 |
基本料(3級局) |
1,785円 |
1,680円 |
1,680円 |
1,470円 |
1,470円 |
1,575円 |
1,575円 |
備考 |
- |
(@ビリング) |
(@ビリング) |
(別途工事費105円/月×60ヶ月必要) |
(回線保守料63円) |
(別途標準工事費105円/月) |
(別途工事費105円/月×60ヶ月) |
付加サービス |
プッシュ回線 |
無料 |
無料 |
無料 |
無料 |
無料 |
409円 |
無料 |
キャッチホン |
315円 |
315円 |
315円 |
315円 |
294円 |
315円 |
315円 |
ナンバーディスプレイ |
420円 |
420円 |
420円 |
420円 |
399円 |
420円 |
420円 |
電話費用合計 |
2,520円 |
2,415円 |
2,415円 |
2,205円 |
2,163円 |
2,719円 |
2,310円 |
ADSLサービス |
3,507円 |
3,507円 |
3,507円 |
3,843円 |
1,995円 |
3,198円 |
3,198円 |
プロバイダー費用 |
1,312.5円 |
1,312.5円 |
1,312.5円 |
月額料金合計 |
7,339.5円 |
7,234.5円 |
7,234.5円 |
6,048円 |
4,158円 |
5,917円 |
5,508円 |
通話料
(3分) |
固定電話 |
ユーザー同士 |
通常料金 |
通常料金 |
通常料金 |
通常料金 |
4.72円 |
通常料金 |
通常料金 |
市内 |
8.925円 |
8.925円 |
8.4円 |
8.4円 |
7.14円 |
8.925円 |
8.295円 |
県内市外 |
~20km |
21円 |
21円 |
20km~60km |
31.5円 |
31.5円 |
60km以上 |
42円 |
42円 |
備考 |
- |
(イチリッツ) |
- |
- |
- |
- |
県外 |
~20km |
21円 |
21円 |
15.75円 |
15.75円 |
21円 |
15.645円 |
20~30km |
31.5円 |
31.5円 |
31.5円 |
30~60km |
42円 |
42円 |
42円 |
60~100km |
63円 |
63円 |
63円 |
100km以上 |
84円 |
84円 |
84円 |
国際電話 |
米国 |
160円 |
160円 |
96円 |
27円 |
45円 |
18円 |
26円 |
備考 |
(NTTcom通常料金) |
(NTTcom通常料金) |
(国際電話は一律40%OFF) |
- |
- |
- |
- |
IP電話 |
料金 |
10.92~11.025円 |
10.92~11.025円 |
10.92~11.025円 |
10.5円 |
7.14円 |
10.5円 |
10.5円 |
備考 |
(事業者側に依存) |
(事業者側に依存) |
(事業者側に依存) |
(一律) |
(固定電話と同額) |
(一律) |
(一律) |
携帯電話 |
料金 |
55.125~66.15円 |
55.125~66.15円 |
55.125円 |
53.55~55.125円 |
51.96円 |
78.75円 |
56.7円 |
備考 |
(0036利用時) |
(0036利用) |
(0033利用) |
(au/au以外) |
(一律) |
(一律) |
(一律) |
備考 |
・ADSL料金はプロバイダーにOCNを利用した場合 |
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・途中解約の場合でも工事費105円/月×60ヶ月の残り請求なし |
・基本料+300円でユーザー同士かけ放題の定額プランあり
・最低利用期間は1年間(加入権買取の場合は3年)
・途中解約(ユーザー事由)の場合は残り基本料(1774.5)×残り月数の一括支払いが必要 |
・市外通話のうちよくかけた番号を割引
1番目…50%割引
2番目…40%割引
3番目…30%割引
・途中解約の場合でも工事費105円/月×60ヶ月の残り請求なし
・ADSLはYahoo! BBおとくラインタイプ(8M/900K) |
・途中解約の場合でも工事費105円/月×60ヶ月の残り請求なし
・ADSLはYahoo!BBおとくラインタイプ(8M/900K) |
なお、NTT東西も基本料金の改定、「イチリッツ」のような一律の料金体系の採用によって、料金の値下げを図っています。また、既存のマイライン、マイラインプラスに関しても、NTTコミュニケーションズの「プラチナライン」のように、直収サービスとほぼ同等の料金体系が利用できる場合もあります。
しかし、これらのサービスでも直収サービスほど安くなるわけではなく、電話を新規に敷設するときの施設設置負担金(電話加入権)も依然として必要です(2005年3月1日からは37,800円に値下げ)。新規に回線を敷設するのであれば、電話加入権が不要な直収サービスの方がお得と言えるでしょう(NTTの回線の場合でもADSLと同時加入で施設設置負担金が無料、もしくは格安になるケースもある)。なお、すでに電話回線を敷設している場合は、NTTの回線から直収サービスに切り替えるための工事費などが必要になる場合もあるため、この点も十分に考慮しましょう。
細かく料金を比較した場合でも、キャッチホンなどの付加サービスも含めた基本料ではKDDIの「メタルプラス」や平成電電の「CHOKKA」が、通話料では「CHOKKA」が、特定の相手によく電話をかける場合は日本テレコムの「おとくライン(Aプラン)」の料金が安いことがわかります。平成電電の「CHOKKA」の電話加入権買い取りや日本テレコムの3番号1年間通話料無料など、キャンペーンをうまく活用することで、さらに料金的なメリットを受けられるでしょう。
■ デメリットの考慮も必要
このように料金だけを比較すれば、圧倒的に直収サービスが有利と言えます。しかし、その反面、デメリットもあることは十分に理解しておくべきでしょう。
たとえば、直収サービスの場合、利用できるADSLサービスが限られます。電話をNTT以外に変更することで、ADSLサービスやプロバイダーなども変更しなければならない可能性もある点は十分に考慮すべきでしょう。
また、NTTの固定電話と同じサービスが利用できるとも限りません。中でも重要なのは、通話できない電話番号がある点です。110や119などの緊急通報など、重要な番号への通話は、ほとんどの事業者がサポートしていますが、「0120」や「0800」などのフリーダイヤルは、一部利用できない番号があるうえ(NTTのフリーアクセスなど)、「0570」や「0077」(メタルプラスは可)、「0088」(お得ラインは可)といった番号も利用できない場合がほとんどです。
サービス名称 |
メタルプラス |
CHOKKA |
おとくライン |
3桁番号 |
100 |
通話料金通知 |
× |
× |
× |
106 |
コレクトコール |
× |
× |
× |
108 |
自動コレクトコール |
× |
× |
× |
110 |
警察 |
○ |
○ |
○ |
114 |
お話中調べ |
× |
× |
× |
119 |
消防・救急 |
○ |
△(順次対応中) |
○ |
118 |
海難事故 |
○ |
○ |
○ |
115 |
電報 |
○ |
○ |
○ |
117 |
時報 |
○ |
○ |
○ |
177 |
天気予報 |
○ |
○ |
○ |
104 |
番号案内 |
○ |
○ |
○ |
171 |
災害伝言ダイヤル |
○ |
○ |
×(2005年予定) |
4桁番号 |
0120 |
フリーダイヤル |
△(一部不可) |
△(一部不可) |
△(一部不可) |
0800 |
フリーダイヤル |
△(一部不可) |
△(一部不可) |
○ |
0077 |
KDDI |
△(一部不可) |
× |
× |
0088 |
日本テレコム |
× |
× |
○ |
0570 |
ナビダイヤル |
△(一部不可) |
× |
×(2005年予定) |
0990 |
ダイヤルQ2 |
× |
× |
× |
0170 |
伝言ダイヤル |
× |
× |
× |
0180 |
テレゴング |
△(一部不可) |
× |
× |
※0120に関してはNTT東西のフリーアクセスが不可 |
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特殊番号対応表
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現状、「0570」に関しては、ダイヤルアップ接続のアクセスポイント、BS/CSチューナーなど向けのアクセス先、チケット予約などで利用されているため、これらの番号をよく利用する場合は、事前に事業者に問い合わせ、利用したい番号への通知が可能かを確認しておく必要があるでしょう。また、現状、IP電話との相互接続ができていないサービスもあり、IP電話サービス(0AB~J、および050)との発着信ができない場合もあるので注意が必要です。
このほか、事業者によっては、最低利用期間が定められている場合もあります。具体的には平成電電の「CHOKKA」です。「CHOKKA」の場合、標準で1年間、電話加入権の買い取りを申請した場合は3年間継続して利用する必要があり、期間前の解約の場合、残りの月数×基本料金を一括で支払う必要があります。そのため、加入後、前述したようにかけられない番号があることに気づいて、解約したいと思った場合などに費用負担が発生します。
単に料金が安いという理由だけで加入するのではなく、現状の電話の使い方をよく検討し、移行しても問題ないかを確認してから加入するようといいでしょう。
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2005/03/11 11:21
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