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第70回:「HD」コンテンツって何のこと?
[2005/12/16]
第69回:どんなサービスでIPv6は使われているの?
[2005/12/09]
第68回:IPv6で何が変わるの?
[2005/12/02]
第67回:スカイプって何が便利なの?
[2005/11/25]
第66回:無料で映画やドラマが見られる「GyaO」ってどんなサービス?
[2005/11/18]
第65回:無線LANを簡単に設定できる機能って?
[2005/11/11]
第64回:新しいIEEE 802.11aはアップデートしたほうが良い?
[2005/10/28]
第63回:「ダイナミックDNS」ってどういうことができるの?
[2005/10/21]
第62回:NASってどこが便利なの?
[2005/10/14]
第61回:コンセントでインターネットにつながるって本当?
[2005/10/07]
第60回:家電とパソコンがつながるDLNAってどういう意味?
[2005/09/30]
第59回:パソコンで録画した番組をテレビで見たい!
[2005/09/16]
第58回:外出先から自宅の様子を確認したい!
[2005/09/09]
第57回:無線LANはまだまだ速くなる?
[2005/09/02]
第56回:外出先から自宅のPCにアクセスするには?
[2005/08/26]
第55回:外出先でもブロードバンドを楽しみたい!
[2005/08/19]
第54回:Windows XPで自宅のPC同士を共有して便利に使おう
[2005/08/05]
第53回:電子マネーや非接触ICカードってどうやって使うの?
[2005/07/29]
第52回:ギガビットイーサネットってどれくらい速いの?
[2005/07/22]
第51回:テレビで見られるブロードバンド放送ってどういうサービス?
[2005/07/15]
第50回:インターネットの音楽配信ってどうやって使うの?
[2005/07/08]
第49回:インターネットラジオってどうやって聴くの?
[2005/07/01]
第48回:動画などの大きなファイルを相手に渡すには?
[2005/06/24]
第47回:デジタルカメラで撮った写真を友達に見せたい!
[2005/06/10]
第46回:メッセンジャーってどこが便利なの?
[2005/06/03]
第45回:ソーシャルネットワークサービス(SNS)ってどういうサービス?
[2005/05/27]
第44回:ニュースサイトやブログで見かける「RSS」ってなに?
[2005/05/20]
第43回:最近話題の「ブログ」って何ができるの?
[2005/05/13]
第42回:P2Pってどういう仕組みなの?
[2005/04/22]
第41回:アフィリエイトってどういうメリットがあるの?
[2005/04/15]
第40回:フィッシングって何が危険なの?
[2005/04/08]
第39回:Windows XP SP2って何が違うの?
[2005/04/01]
第38回:危険なホームページを子供に見せたくない!!
[2005/03/25]
第37回:電話加入権がいらない「直収電話」ってどういうサービス?
[2005/03/11]
第36回:「03」や「06」から始まる普通の電話番号のIP電話を使いたい!
[2005/03/04]
第35回:IP電話があれば、固定電話は解約しても大丈夫?
[2005/02/25]
第34回:ブロードバンドのテレビ電話ってどういうサービス?
[2005/02/04]
第33回:1GbpsのFTTHって何が違うの?
[2005/01/28]
第32回:無線で使えるFTTHってどういうサービス?
[2005/01/21]
第31回:「VDSL」ってADSLと違うの?
[2005/01/14]
第30回:FTTHの「占有型」と「共有型」って何が違うの?
[2004/12/17]
第29回:FTTHは本当に100Mbpsなの?
[2004/12/10]
第28回:FTTHってどうやって導入するの?
[2004/12/03]
第27回:インターネット電話ってIP電話と違うの?
[2004/11/26]
第26回:IP電話を使うには何が必要なの?
[2004/11/19]
第25回:IP電話サービスを選ぶ基準は?
[2004/11/12]
第24回:IP電話ってお得なの?
[2004/11/05]
第23回:プロバイダーの無線LANレンタルってお得?
[2004/10/29]
第22回:知らないアクセスポイントが表示されたんだけど……
[2004/10/22]
第21回:無線LANのセキュリティ対策はどうすればいいの?
[2004/10/08]
第20回:無線LANの「11a」「11b」「11g」って何が違うの?
[2004/09/17]
第19回:無線LANを始めるには何が必要なの?
[2004/09/10]
第18回:無線LANってどこが便利なの?
[2004/09/03]
第17回:オンラインショッピングってセキュリティが心配!?
[2004/08/27]
第16回:プロバイダーのウイルスチェックサービスって便利なの?
[2004/08/20]
第15回:Windows Updateって必要なの?
[2004/08/06]
第14回:セキュリティ対策って何をすればいいの?
[2004/07/30]
第13回:ブロードバンドルータって必要なの? その2
[2004/07/23]
第12回:ブロードバンドルータって必要なの?
[2004/07/09]
第11回:回線の速度ってどうやって測るの?
[2004/07/02]
第10回:スループットってどういう意味?
[2004/06/25]
第9回:フレッツ・スクウェアってどうやって使うの?
[2004/06/11]
第8回:パソコンにLANポートがないんだけど?
[2004/06/04]
第7回:1M ADSLってお得なの?
[2004/05/28]
第6回:ADSLの「タイプ1・2」「ライトプラン」って何が違うの?
[2004/05/21]
第5回:ADSLってどういう仕組みなの?
[2004/05/14]
第4回:ブロードバンドをはじめたいんだけど……その4
どのコースを選べばいいの?
[2004/05/07]
第3回:ブロードバンドをはじめたいんだけど……その3
どのプロバイダーを選べばいいの?
[2004/04/23]
第2回:ブロードバンドをはじめたいんだけど……その2
どの事業者を選べばいいの?
[2004/04/16]
第1回:ブロードバンドをはじめたいんだけど……その1
[2004/04/09]

第61回:コンセントでインターネットにつながるって本当?


 家庭にある電源コンセントを使ってインターネットに接続する「PLC」という技術が注目を集めています。実際にはどのように通信を行なうのでしょうか?

 PLCとは「Power Line Communication」の略で、日本語では電力線通信、または電力線搬送通信と訳されます。通常、家庭には電気の供給のために電力線が引き込まれていますが、これを利用してデータ通信を行なう技術です。

 ただし、電力線に流れる電力は関西で60Hz、関東で50Hzと低い周波数のため、そのままでは高速なデータ通信には実現できません。このため、既存の電力の信号に数十MHz(現在実験が許可されているのは2~30MHz)の信号を重畳(電力信号の波にデータ信号の波を重ね合わせる)することで、数十~数百Mbps(200Mbps程度)の高速な通信を実現しています。

 国内では2004年1月に実験制度が許可されたばかりということもあり、高速PLCのサービスは開始されていませんが、海外ではすでに商用サービスが開始されているところもあります。現状は、電力線に高周波の信号を流すことから漏洩電波の発生が問題視されていますが、将来的には集合住宅の棟内配線などとしての利用が見込まれています。


電力線にデータ信号を重ね合わせる

 現状、インターネット接続に利用されている主な回線には、FTTHの光ファイバ、ADSLの電話回線、CATVインターネットの同軸ケーブルの3種類がありますが、電力線という言わば第4の回線を利用するのが「PLC(Power Line Commnunication)」と呼ばれる技術です。

 通常、家庭には家電製品やパソコンなどで使う電力を供給するための電力線が配線されており、電力線につながるコンセントも各部屋に備え付けられています。この電力線を使って通信を行なうのがPLCです。つまり、PLCによってコンセントを使ってインターネットに接続したり、家庭内LANを構築できるということになります。

 電力線を使って通信をすると言っても、いまひとつイメージがつかめないかもしれませんので、その仕組みを簡単に紹介しましょう。

 電力線で供給されている電力は、関西では60Hz、関東では50Hzという低い周波数(1秒間に60個または50個の波)のため、少しのデータしか送ることができません。このため、これまでのPLCでは数100kbps程度の速度を実現するのがやっとでした。

 現在は、あくまで実験目的でのみ、電力の周波数にデータ通信で利用する高い周波数の信号(2~30MHz)を重畳(重ね合わせる)することが認められています。これにより、電力線で200Mbps程度の高速な通信ができるのです。



 この考え方は、ADSLとほぼ同じです。利用する回線や方式に違いはありますが、ADSLではもともとも音声通話のために利用されていた電話回線に高い周波数のデータ信号を流すことで高速な通信を実現しています。これと同様に、もともと電力を供給するための電力線へ周波数の信号を流すのがPLCであり、より高い周波数を利用することで高速なPLCを実現するための取り組みが進められています。





光ファイバと組み合わせた利用が現実的

東京電力の実証実験の様子
 ただし、もともと低い周波数帯の信号を流すための電力線に高い周波数帯の信号をそのまま流すことには問題もあります。電力線に高周波の信号を流すと、そこから電磁波が放射され、他の電波などに干渉を与える可能性があります。また、ADSLなどと同様に経路上でノイズの影響を受けたり、長い距離での通信で信号が減衰するという特性もあります。

 このため、電力線のみで利用するのではなく、光ファイバと組み合わせて利用されることが検討されています。具体的には、上記の図版のように、家庭近くの電柱もしくは集合住宅の共有設備部分まで光ファイバを敷設し、そこで親PLCモデムによって電力とデータ信号を重畳。家庭や各住戸へは電力用引き込み線を利用し、重畳した信号を送ります。搬送された信号は、家庭のコンセントに接続した家庭用PLCモデムによって分離され、データ信号のみを取り出して通信することになります。

 このように、電力線に高周波を流す距離を短くすることで、干渉の問題や減衰の問題をクリアしようというわけです。





家庭内LANとしての利用も可能

 このようなPLCは、いわゆるラストワンマイル問題を解決するための技術でもありますが、同時に家庭内の配線問題を解決する技術としても期待されています。電力線は基本的に家庭内の各部屋に配線されているため、これを利用した家庭内LANも実現することも可能です。実際には、PCや家電製品ごとにPLCモデムを接続する必要があるため、その手間やコストという課題もありますが、電力線を使って家庭内の機器を相互接続できれば、ホームネットワークもより現実に近づくことになるでしょう。

 ただし、PLC自体が今後、どこまで普及するかには疑問の声もあります。前述した電波の漏洩問題などもそうですが、すでに国内ではADSLやFTTHが普及しており、家庭内LANも無線LAN機器によって普及しつつあります。このような環境で、後発のPLCがどこまでユーザーに受け入れられるかは、実際のサービスが開始されたときの内容次第と言えるでしょう。


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2005/10/07 13:25

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。
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