現在、無線LANの最大速度は54Mbpsですが、この速度を上回る新しい規格として策定が進められているのが「IEEE 802.11n(仮称)」です。一体、どれくらいの速度が実現できるのでしょうか?
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100Mbps以上の速度を実現するための次世代無線LAN規格が「IEEE 802.11n(仮称)」です。現状のIEEE 802.11gやIEEE 802.11aの最大速度は54Mbpsですが、実際の速度(実効速度)は25~30Mbpsというのが一般的です。この実効速度を一気に100Mbps以上にまで引き上げるため、現在も策定が進められています。
IEEE 802.11nでは、複数本のアンテナを利用して同時に異なるデータを送信し、それを複数のアンテナで受信して合成することで高速化を図る「MIMO」という技術が採用されています。MIMOに対応した製品はすでに発売されていますが、正式な製品の登場は2007年以降になると言われています。
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■ 実効で100Mbpsを実現するIEEE 802.11n
面倒な配線をすることなく、家中のどこからでもインターネットに接続できる。このようなメリットから、無線LANを利用するユーザーが増えてきました。しかし、現状の無線LANは、有線LANに比べて速度が遅いという課題があります。
現在、一般的に使われている無線LANの最高速度は、IEEE 802.11gやIEEE 802.11aの理論値である54Mbpsです。しかも、この速度は規格上の値であり、実際にファイルを転送したときなどの実効速度は、25~30Mbps程度というのが実情です。
ホームページの閲覧やメールの送受信といった用途であれば、この速度でも問題ないでしょう。しかし、FTTHなどの高速な回線を利用しているユーザーにとってみれば、せっかくの回線速度が、無線LANのボトルネックによって活かしきれていないことになります。また、家庭内での映像配信などといった用途を考えた場合、より高品質な映像をネットワーク経由で配信する際に、無線LANの速度がボトルネックになってしまう可能性も考えられます。
そこで注目を集めているのが、次世代の無線LAN規格であるIEEE 802.11nです。まだ標準化が進められている規格のために、実際の製品が登場するのはまだ先ですが、実効速度で100Mbps超と、現在の無線LANから大幅な速度向上が図られる予定です。
■ 複数アンテナでデータを送受信
IEEE 802.11nでは、「MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)」と呼ばれる技術を採用します。これは、複数のデータを同時に送受信することで、速度を向上させる技術です。具体的には、無線LANのアクセスポイントやクライアントに複数のアンテナを搭載し、各アンテナで別々のデータを同時に送信、このデータを同じく複数のアンテナを利用して受信して合成するという仕組みです。
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複数本のアンテナを利用し、同時にデータを送受信することで高いスループットを実現するMIMO
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MIMO技術を採用した製品は、すでにプラネックスやバッファローなどから発売されていますが、これらの製品では送信に2本、受信に3本のアンテナを利用し、最大108Mbps(54Mbps×2)での通信を実現しています。もちろん、実際に108Mbpsで通信できるわけではありませんが、実効速度でも40Mbps前後と、既存のIEEE 802.11a/gよりも高い速度での通信が可能です。
また、MIMOは遮蔽物などがある環境でも高速な通信ができるという特徴があります。前述したようにMIMOでは受信に複数本のアンテナを利用しますが、これにより受信性能が高くなり、長距離でも安定して高い速度で通信できるという特徴があるためです。さらには、IEEE 802.11a/b/gといった既存の無線LANとの互換性も備えているのも見逃せない特徴です。
■ 正式なIEEE 802.11n対応製品の登場は2007年以降
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MIMOに対応したバッファローの無線LANルータとカード
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このように、IEEE 802.11nではMIMO技術をベースとして利用する規格となっていますが、ここで注意しなければならないのは「現状のMIMO製品=IEEE 802.11n」ではない点です。
前述の通り、IEEE 802.11nは標準化が進められている最中の規格です。これまでIEEE 802.11nの標準化は、「WWiSE」「TGn Sync」という2つのグループで規格作りが進められていましたが、これがようやく2005の11月を目処に共通の提案としてまとめられる見込みになりました。
この共通提案を受けて、標準規格のドラフト版が最初に作成されるのが2006年1月頃
、そこから改訂を重ねて規格がある程度固まるのが2006年末、最終的に正式に標準化されるのが2007年中という予定です。
このため、現状のMIMO製品は、あくまでもMIMO技術を利用した製品であり、標準化がまだまだ先となるIEEE 802.11nとは切り離して考える必要があります。IEEE 802.11g製品が正式な標準化の前に登場した経緯を考えると、IEEE 802.11n製品も標準化前に製品が登場する可能性がありますが、早くても2006年の初めから中頃になりそうです。
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2005/09/02 10:57
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